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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
黒耀石
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60

 暗闇の中で起床する。朝か、昼か、それとも夜か、細かい時間までは不明だが休息を取った後二人は先へと向かう。休憩を挟みつつ洞窟を行く。松明を何度か取り換えて何時間も歩き続けた暗闇の先に、求め続けた光の欠片が見えて来た。

 出口を包む木の葉を除けて、膝に届く草を掻き分ける。山間の中腹部分に出たようで、眼下には見慣れた針葉樹林が広がっていた。

 湿気を含んだ風が木の葉を揺らし、山の斜面を登っていく。小鳥が羽ばたき囀り合って、リスが枝の中を駆け抜ける。傾きかけた日差しは穏やかで、空には白い雲が浮かぶ。木々は揺れて音を立て、心地のよい木漏れ日を注いでいた。

 獣道すらない道をナイフと短剣で切り開きながら進んでいく。道中に現れる毒蛇や、しつこく追い回してくる蚊でさえも、戻ってきたと実感させる材料だった。

 山脈さえ抜けてしまえば街道はすぐだった。道なき道を進むこと半日ほどして二人はやっと街道に出る。石畳により整備された、帝国管理のその道は各都市間の交易路として利用されている。メイスのミツキに頭に付いた木の葉を取ってもらうと、街道を南へと針路を向けた。

 針葉樹林の街道に出てから、幾人もの旅人たちを見かけた。荷車いっぱいに荷物を積んだ行商人を追い抜いて、別の勇者一行とすれ違う。キノコを採っていた田舎者の視線を浴びながら、二人は無言で街道を進む。さらに一日ほど歩き続け、野宿し日を跨ぎ朝になった頃、南下する旅人の数が増えてきた。

 道の両側に広がる林は薄れ、代わりに傾いたボロ小屋が姿を見せる。板で葺いた屋根は腐敗し穴が開き、草が生えて蔦が壁を覆っていた。小屋の表では、小屋同様に古びた衣服を身にまとう初老の男が火を焚いている。長年切っていないらしい、小汚い髭と髪の間から曇った目でブリキの鍋を見下ろしていた。

 似たような小屋は数を増し、貧民街に入った事を知らしめる。ボロを纏った女や子供が労働にでも向かうらしい男を見送る。街に仕事を求める事で自然と生まれるこの光景は、いつ見てもみすぼらしく醜いものだった。

 彼らは旅人たちに物を乞い、その日暮らしで生きている。例に漏れず近づいてきた獣人の少女を無視すると、二人は関所へ足を速めた。

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