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地図に沿って行路を行く。山を越すが、山を超すのではない。山脈を貫く洞窟を通るのだ。
山脈は南北にこそ長く連なってはいるものの、幅は極めて狭い。谷底を行き、入り口を探す。断崖の底で散々迷い、やっとのことで入り口を見つけだした。非公式の行路であるためか入り口は大層分かりにくくされており、地図が無ければ見過ごされていただろう。二人は周囲に気を張りながら暗い洞窟の中に踏み入れた。
火の付いた松明を手に進むこと数時間余り、拍子抜けするほど何事も無かった。蛮族が利用しているルートだが、そもそも砂漠を行き来すること自体が稀なのかもしれない。等と会話しながら洞窟内の勾配を昇り降り、ただの蝙蝠に剣を抜き、土ボタルの輝きに感嘆した。
適度な空間で休息を取る。洞窟に入ってから丸一日近く歩き続けたが案の定と言うべきか、出口の光は見られなかった。事前に地図を見ていた時に予測されていた事で、二日か、長くても三日はかかるだろうと二人のミツキは見積もっていた。
小さめの焚火を起こし、氷結乾燥させたジャガイモを煮る。味付けは塩を少々加えただけの簡素なものだが、二人の記憶に宿るワイバーンの尾の生食よりかは遥かに美味しい。味気は無くとも空腹を満たし、疲れた身体を癒すには充分だった。
見張りをメイスのミツキに任せて横になる。やや湿った地面は冷たく、外套を通じて肌身に染みる。野宿も今では慣れたものだが初めての時は抵抗があった。この世界に来てから一日目、自分が死んで、レインさんと初めて会った時の事だった。