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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
傍にいる者達の王
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 一進一退の攻防だった。岩の魔法と組み合わせた杖術は高速で展開されて、メイスで追うにはやや厳しい。ナイフなら動きは早く、難なく速度に着いて行けるが石の守りに防がれる。

 突く度に踏み込む石槍を外に逸らせてメイスを振る。老婆は杖で受けると、頭上から巨大な岩を落下させた。雨のように降り注ぐ砂の中を転がり込んで、やむを得ず一度距離を置く。杖から石の穂先を外し、両手で回して構え直した。

 二人の遥か上空では剣のミツキが立て直す。速度を失った彼女は反転、そして徐々に落下を始める。刺し貫かれた穴を塞いで、半月を受けてなお赤く輝く剣を手に、頭から地表に向かって行く。太陽が沈んだ空はまだ赤い。区切り無い色彩の黒の領域では月が沈む太陽を見下ろしていた。

 老婆はメイスとナイフを相手しながら、巨岩を持ち上げ剣のミツキを迎え撃つ。砂の筋を引きながら空へと上がる巨岩群を見て、メイスのミツキは剣のミツキにメイスを投げてよこした。

 自由落下の最中に、激しく暴れる外套を外す。すぐ目前に巨岩が迫る。メイスを受け取る反動により一回転し叩きつけた。岩全体に力が伝わり砕け散る。同時に強い衝撃がメイスの柄から手に伝い、思わず手から離れた。

 反動で逆回転しながら、剣を持つ手に力を籠める。更なる巨岩に狙い澄ますと、全力をもって剣をぶつけた。岩は綺麗に二つに割れて、ミツキの為に左右に分かれる。狭い隙間を突破した後、剣を両手に握りなおした。

 剣に矛、斧や鎚を石で創り上げ、宙に浮かせて振り回す。ナイフしか持たぬメイスのミツキの動きは早いが、間合いも手数も老婆の方が上だった。小刻みにフェイントを交えつつ石の攻撃を捌き受け流す。互いに決定打に欠ける中、頭上から剣のミツキの影が迫った。

 老婆は刺青の蛇の目を細める。黒い蛇がまるで笑みを浮かべた時、砂中から岩の大蛇が現れた。老婆の周囲を一周し砂の嵐を作り出す。メイスのミツキと老婆の間に割って入って、頭をもたげる。大口を開け岩の牙を見せつけた後、剣のミツキに襲い掛かった。

 剣を逆手に持ち替えて、顔の横で投擲の構えを取る。剣先を岩の蛇に狙いを定め、振りかぶる。迫る岩の牙が輝き、深くて黒い闇の口を大きく開けた。

 全身全霊の力をもってして赤い剣を撃ち放つ。月と星が見守る中で剣は赤い一筋の光となって、岩の大蛇を貫き通り、老婆に宿る黒い蛇をも断ち切った。

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