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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
傍にいる者達の王
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「お前達。いや、お前と言うべきか。なんと冒涜的な魔法の持ち主よ。不老不死に飽き足らず、己の魂を分裂させるとは。生命の倫理に反すると思わんのか」

 歯噛みしながら絞り出すような声に、ミツキは鼻で笑い飛ばす。

 人格攻撃は今に始まった事ではない。追い込まれた敵が取る、常とう手段の一つであった。

「武器は何を持ってる?」

 剣先から垂れ落ちる血をそのままに、メイスのミツキに尋ねる。彼女は剣のミツキを一瞥すると、老婆を見たまま口を開いた。

「メイス一本と、ナイフが一本。アンタは?」

「短剣と片手剣をひとつずつ」

 太陽は間もなく砂の海に沈もうとしている。剣のミツキが血を払うと、砂地に老婆との間に赤い線を描き上げた。

「想わんのだろうな。勇者とはそういう者達の集団だ。命を奪い、カネを得る。その為であればなんだってする。全員が全員戦いを望んでおる訳では無いと言うのに!」

 メイスのミツキがため息をつく。一人喚き散らす老婆の声があまりに虚しく、滑稽に、耳を傾ける者のいない砂漠に響いていた。

「作戦は?」

「ない」

 欠けた短剣を鞘に納め、剣を片手で構え直す。砂丘の上に一人立ち、長く伸びきった影を落とす老婆に目を向ける。顔半分を照らす光が老婆の顔の蛇を映し出す。エルフの顔の歪みに合わせ、蛇は蠢き身もだえていた。

「真正面からぶちのめす」

 もう一人のミツキがメイスを握りなおす。深紅の空に藍色の空が入り混じる中、太陽が最後の輝きを放ち地平に沈む。二人と一人の間を砂漠の風が八の字状に駆け抜けた。

 二人のミツキは老婆に向かって走り出す。

 予備動作も無く飛来する巨岩を手を付き飛び越え、滑り潜り抜けて打ち砕く。上空から落下する岩を最小限の動作で躱し、降り注ぐ砂を抜け、二人は老婆に襲い掛かった。

 メイスを杖で受け止めて、剣を岩の盾を使って防ぎ止める。岩は剣を防いだが素早い追加の剣戟に耐え切れず、ヒビが広がり砕け散る。老婆はメイスを押し退けると、杖の先に石槍を着け薙ぎ払った。

 剣のミツキは後方に跳び、間をあける。間髪入れずに迫るメイスを捌きつつ、老婆は砂中から岩を動かし突き上げた。剣のミツキを刺し貫いて、彼女と共に遥か高くまで登っていく。

 老婆は剣のミツキに目もくれず、杖の反対に石の斧を装着させる。ガードするメイスの上から斧と槍を交互に振るい、追い込んでいく。

 メイスのミツキはナイフを抜くと石の槍を受け止め流し、メイスで石斧を破壊した。

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