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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
傍にいる者達の王
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 ありったけの力を込めて剣を振り、防具の上から強引に叩きつける。赤い剣の刃を返し、手首を狙って切り上げた。赤い光が三日月状の軌跡を残す。怯み後ずさるゴブリンに立て直す余裕も与えずに、剣を胸元へ突き立てた。

 絶命したゴブリンにブーツを当てがい剣を抜く。背後から迫るゴブリンに目を向けると剣を抜く動作そのままに、柄頭で殴り首を切り落とした。

 メイスのミツキはすぐそこで、力任せに殴り飛ばしている。彼女はゴブリンの持つ剣を弾きへし折ると、殴り気絶させ飛来する矢の盾にした。

 剣のミツキは短剣を抜き、クロスボウ持ちに投げつける。刃は欠けてもう鈍らだが、武器を弾き落とすには充分だった。立ちはだかるゴブリン共を切り抜いて、赤い剣をクロスボウ持ちに突き立てる。引き抜くと同時に短剣を回収し、二刀持ちに切り替えた。

 次から次へと迫るゴブリンを、片っ端からなぎ倒す。片手剣を防具の上から叩きつけ、短剣を首筋に突き立て引き抜く。立ったまま命を落としたゴブリンを蹴り飛ばし迫る別ゴブリンへとぶつけ下敷きにする。片手剣を逆手に持つと、死体の上から刺し貫いた。

 奴はどこかで見ているのだろうか。老婆の姿は見当たらない。目元に垂れた血を拭う。気づかぬうちに忍び寄っていたゴブリンが、投擲されたメイスによって地に伏せた。

「よそ見しないで」

 ゴブリンのメイスを片手で掴み、ひじ打ちを決めて奪い取る。顔面パンチを叩きこんだ後、メイスのミツキは剣のミツキの横に並んだ。

「むかつくんだけど」

 振りかざされた剣を短剣で受け止め蹴り飛ばす。空いた間合いを素早く詰めると、赤い剣で叩き切った。

 二人を目がけて炎の弾が迫り来る。二人は余裕を持って回避すると、短剣を、メイスを、魔法の操り手に投げつけた。

 短剣はまっすぐ飛翔し防具の隙間に突き刺さる。ゴブリンは歯を食いしばり、二人のミツキを睨みつける。炎の弾が産み出されたが放たれる事は無く、ワンテンポ遅れて到達したメイスによって押し込まれ、短剣はゴブリンの身体を貫通した。

 ゴブリン達の死体の山を乗り越えて、短剣とメイスを回収する。沈みかけた陽の光もさることながら、辺りはまさしく文字通り深紅に染まっていた。

 砂を含んだ風が嫌な臭いを包み込み、砂丘の頂上で渦を巻く。夕陽の光を受けて立つ、杖を持った人影が二人のミツキを見下ろしている。黒い蛇の入れ墨が入った、エルフの老婆は憎たらし気に眉をひそめた。

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