表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
傍にいる者達の王
37/112

37

 鐘が鳴り、五つの影が姿を現す。担任と学年主任、教頭に校長、そしてお巡りさんだ。先ほどまでの喧騒はどこへやら、全く無音の部屋だった。

「君とお友達は特別仲が良かった。これは君のクラスメイトからの証言だ。では何故お友達が自殺してしまったのか。何のために死んでしまったのか。何か知っていることは?」

 なぜ、なに、どうして、幾度となく繰り返した疑問を、お巡りさんが繰り返す。ミツキ自身も知らないのに、説明などできるはずが無い。俯き無言を貫く彼女の目を覗きこむ。緑色をした不気味な瞳、何も言わずに横へと視線を逸らす。

「あれから色々調べたよ。君はあの子が死ぬと事前に知っていた。にもかかわらず、周囲の大人に相談もせず一人で勝手な判断を下した。結果、君は友人を一人失った。これは間違いない事実だね? 君がお友達を殺したんじゃないのかな?」

 割れたミツキのスマホを見せる。SNSの履歴には、ヒナタから呼び出しと、今行くと、答えたミツキの返事があった。確かに当日の夜、彼女自身が送った内容だ。おそらくもっと多くのことを、お巡りさんは調べただろう。

 クラスメイトも担任も、両親でさえ、ヒナタの死より自分のことを心配している。だからこそ、何もかもがどうでも良くなった。

「私がヒナタを殺しました」

 ミツキはエメラルドの眼を見上げて言った。四人の教師は口々に耳障りな騒音を響かせる。影は薄ら笑いを浮かべると、ミツキの両手に手錠をかけた。深紅の日差しが一層強く、周囲の景色をかき消していく。教室内の風景も、五体の影も、ミツキ自身の手足さえすべてを光が遮って、赤くて眩い日差しだけが支配していた。

 古びたベッドに横たわり、両手で赤い日差しを遮る。干しレンガでできたどこか倉庫のような場所で、両手をロープで固く縛られ寝かされていた。

 格子の付いた小さな窓から射す日差しを避けて、身体を起こす。身に着けていた剣や防具はどこへやら、外套さえも手元にはない。清潔なブラウス一枚だけ纏い、足元には貴族が好んでよく履く踵の付いたサンダルが一対だけ並ぶ。枕元には普通の衣服一式分、綺麗に畳まれ積まれていた。

 苦労しながらサンダルを履き窓に近づく。外を見ようと覗きこんだとき、慌てて頭を引っ込めた。蛮族語の声がして、武装したゴブリン達が通過する。彼らは緊張感を欠片も持たず、夕飯を懸けポーカーしようと言っていた。

 力の入らぬ足取りで唯一の扉の前に立つ。鋼鉄のドアは厚くて重く、鍵も掛かり微動だにしない。砂埃の積もった部屋はベッドの他に何もない。蛮族どもが気づく前に脱出しなければ、何されるのかわかった物じゃない。ミツキはベッドの端に腰を下ろすと、畳まれていた服を手に取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ