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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
夜の空
2/112

2

 重力さえも味方につけて、魔族の群れへと速度を上げる。時速にして四百前後、熱線により魔族の群れを焼き払いながらくちばしの先より炎を纏う。羽毛は暖色系の光を放ち、夜の空に昼間と同じ日差しをもたらす。

 最も早く、高く昇った魔族に向かって頭の先から向かって行く。二匹の距離が縮まるにつれて、炎の熱波に晒された魔族の体は魔力へ還り、塵さえ残さず消え去った。

 熱線で焼き払い、魔族の群れを突き抜ける。群れは一気に小さくなって、線の細い環となった。波打ち穴を埋め尽くし、小さな群れがレナームを追う。

 レナームは羽を大きく広げ、急制動し水平飛行に移行する。風化しきった建物さえも焼き切り、地上の魔族を薙ぎ払う。翼の先を地面に軽く擦らせると、炎の巨鳥は一気に高度を稼ぎ上げた。

 残りわずかな魔族達を焼き潰しつつ、旧都の中央へと向かう。このペースなら、西の魔族は間もなく掃討し終えるだろう。大量に湧いた魔族の数を減らすことが受けた依頼の第一目標であった。

 東より飛ぶ爆撃機の編隊が二手に分かれて旋回していく。南では暗黒の裂け目が見える限りの広範囲を覆い尽くし、北では大地が割れて赤々としたマグマがさらに吹き上がる。

 ミツキはバックラーの下に仕込んだナイフを抜いてグローブを外す。買ったばかりのナイフはまだ新しく、よく磨かれた刃を手首に押し当てる。夜風を浴びて冷えたナイフは氷のようで、痛みは全く感じない。

 深く、夜深く。手首に浮かんだ静脈へ刃の先を押し込んでいく。赤黒い液体が肌の下から膨れ上がって、光沢のある半球状のドームをつくる。指の先から血の気が引いて、痛みの代わりに痺れだけが脳へと伝わる。彼女はナイフの柄を強く握ると、ひとおもいに引き裂いた。

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