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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
夜の空
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1

 眼下に広がる魔族の群れから対空魔法が飛んでくる。レナームと名付けた巨大なハヤブサは、自ら回避し、炎の魔法で迎え撃つ。

 夜空を切って飛んで行く、目指す先には廃墟と化した都があった。遷都してから何百年も放置され、城壁の多くは崩落し、民家や施設は辛うじて、骨組みと基礎を残すだけだった。

 旧帝都にそそり立つ皇帝一族の居城さえ、容赦ない時間の浸食に晒されている。ガラス窓の大半が割れ、重厚な壁は崩れ落ち、わずかな隙間に根を張った草木が城を埋め尽くす。辛うじてシルエットだけが以前の面影を要しており、闇夜の中で遠くから見れば今もなお、かつての威光を感じさせるほどだった。

 羊皮紙の地図に目を落とす。旧都を中心にして描かれており、東西南北四方向にはこの世界の共通語により五人の名前が記されている。

 東には具現の勇者だ。彼女の魔法は、ありとあらゆる兵器を生み出し指先一つで同時に操る。そうして生み出された重爆撃機の大編隊は今も旧都の空を覆い尽くして、激しい爆撃を展開している。

 一方で南の空には竜の形に姿を変えた時空の勇者が戦っていた。一対の翼膜に筋肉質の肉体と竜特有の無尽蔵の体力をも併せ持つ。重量のある両手剣を振り回し、魔法を駆使して魔族を蹴散らす。彼女の操る空間魔法は遠目に見ても分かるほどに黒く、暗い闇の色をして、空に大地に巨大な裂け目を作り上げる。回避する術を持たぬ魔族たちは、無力なままに呑まれていく。

 夜の空の遥か高く。赤々と輝く液体が焦がすほどに吹き上がる。高熱を帯びた溶岩は密集していた魔族達を次々呑み込み、驚くほどのスピードで旧都へ向かって流れ出す。翼の生えた一部の魔族は空に向かって飛び上がる。溶岩は操り手の魔法により高く巨大な波となって、空飛ぶ群れをも包み込んだ。赤く輝く海の上空に、六枚羽の竜が飛ぶ。その背に乗って機械の身体を持つ少女、紫ランクで世界トップクラスの力を持った、水の勇者のレインさんだ。

 地図を畳んでポーチに戻す。自分が今いる西の方角には、ミツキの名前が書かれている。ほんの数分で終わった作戦会議で決まったことで、余った最後の方角だった。

 最も危険で数の多い北の方角は、レインが誰よりも早く選び取った。彼女に負けじと具現が東を、時空が南を選択し、自然とミツキは西となった。

 レナームは魔族を引き連れ高く空へと上がっていく。薄くなる空気に比例して、気温が下がり、風は一層強くなる。レナーム専用のハーネスに捕まると羽を畳み、自由落下に移行した。

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