忘れ去られた課題
11, 感覚
目を覚まし最初に目に入ったのは、窓から差し込む光だった。
だがそれは眩しい陽の光ではなく、冷たく無機質な光だった。
光が部屋の闇を突き破り、床へと差し込む。
ひかりが乱反射し、ほんのりと明るくなった部屋の中は、とても心地が良いものだった。
見とれているといると徐々に身体の痛みが追いついてくる。
これで三回目だ。
とにかく、ツイていない。
村へ来た時から、いや、来る前からだったか。
そう言えば、すべてコルが絡んできている。
なにか関係があるのだろうか。
寝返りを打つと、ドアの方から光が漏れているのに気が付く。
蝋燭の光が長く尾を引き、部屋の中へ入り込むそれは、小さいながらも力のある光は、揺らめき、影を映し出し、幻想的な雰囲気だ。
まだ誰かが起きているのだろうか。
ふと、扉が開く。
ナディアが入ってきたかと思ったが、入ってきたのは見知らぬ少女。
その髪は澄んだ空のように青く、その目は真紅に輝いていた。
「あなたが、ナダ・クラウスですか?」
「あぁ、そうだが」
状況の整理ができていない俺に、女の子は静かに言った。
「私はキンバーライト。貴方の御身を預かりに来ました」
「……どういうことだ?」
「だから、貴方の御身を預かりに来たと」
全くもってわからん!
どういうことだ?
混乱する俺に、いつの間にか入ってきていたナディアが、
「起きて早々悪いんだけど、ちょっと来てくれる?」
何を話されるんだろう。
いきなり過ぎないか。
また何かに巻き込まれるのだろうか。
頭を抱えながら、言われるがままに部屋を出るのだった。
12, 覚醒
残り物でスープを作ってもらいひと息ついたところで、早速キンバーライトから話を聞いた。
「それで、まずは何から?」
「まずは主様の能力から話しましょうか」
主様というのは俺のことだ。
かしこまらなくても良いと言ったのだが、「これは私の義務です」と言われてかわされた。
恥ずかしいからやめてほしいんだが…。
「ではまず、魔法の基礎から話していきましょう」
「あぁ、頼む」
「魔法とはまず、自分がどのような魔力を持っているかを知る必要があります」
「魔法は、覚えるものじゃないのか?」
「確かに習得できるものもありますが、魔力が生まれた時から備わっている事例がいくつかありまして」
「それはどうやったら分かるんだ?」
魔法の才能がないと僻んでばかりいたが、もしかするとそれが覆されるかもしれない。
俺は心を弾ませながら、期待に満ちた声でキンバーライトに聞いた。
「知るためには探知系の魔法を持った人に見てもらいます」
「探知系の魔法って、かなり高位の魔法じゃなかった?!」
ナディアが素頓狂な声を上げる。
確か魔法には13階級あって、探知系魔法は上級魔法の11階級に位置している。
これを習得しているのは辺境の地に住む大魔導師くらいだ。
「じゃあ大魔導師を探すしかないのか…」
俺が落胆の声を出すと、
「大丈夫です。私が見ますので」
「…え?」
今、なんて言った?
「見るって、何を?」
「何って、それは魔力ですが」
どういうことだ?
「どうやって?」
「探知系魔法ですが」
「え、えぇぇぇぇ?!」
目の前の少女が大魔導師であることが判明した瞬間だった。