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提出物物語  作者: 夕凪無風
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忘れ去られた課題

7, 深刻

大変なことになった。

どうすればいいのか、未だに私はそれを決めかねていた。

さっき私の家を襲ったのは、《カルマ》という元人間の化け物。

元人間と言われるのは何故か、

それは古い文献に載っていた。

『人間は常に何かを憎しみ、何かを恐れて生きている。それは勿論ほかの生き物でも例外はない。しかし、人間ほどに感情豊かな生き物はほかにいないと言えるだろう。《業》は、その人間の負の感情の制御が行かなくなり、精神の壊れてしまったもののことを言う。《業》には大きくわけて二つの種類がある。恐怖を司る《タケ》、憎悪を司る《エン》。《嶽》は人の恐怖を増幅させ、自分や他人を殺めてしまう化け物。《怨》は、人に憎しみを抱かせ、キャリアを異形へと変えてしまう化け物である…………』

さっきのあれは多分《嶽》だろう。村中の人達が刃物を持ち出し暴れ狂ったのがその証拠だ。


「ナダ、ナダ!大丈夫?」


「……ぁ……ぅぅ……」


ナダは辛そうに呻いた。

早く傷を処置しなければ、命が危ない。


「コル!もう少しだから我慢して!」


「ゔぁぁ……あ……づい……」


コルは《業》の瘴気に当てられた上に、呪詛を書き込まれてしまっている。

早く解かなければいけないが、

この村にはそれをできるものがいない。

呪詛を解くことができるのは世界に五人しか居ない。

つまり此れが意味する先は死である。

これは全て私のせいだ。

私が此処へ連れて来なかったら。


「あまり自分を責めるな」


突然聞こえてきた声に私は顔を上げる。

そこには、一人の男がたっていた。


「……あんたは?」


「俺は神野龍。冒険者を統べる元帥だ。この村の救済に来たのだが、ひどい荒れ様だな……。確か《業》が出たと言っていたな」


「……はい……そうです」


「その子、呪詛を書き込まれているな。少し待っていてくれ」


そう言うとその男はコルの腹に書き込まれた呪詛に手をかざし、何かを呟き始めた。


「…………。よし、これでもう大丈夫だ。そっちの彼のほうが重症のようだな」


呪詛をたやすく解いたその男は、次はナダの傷を直し始めた。


「終わったぞ」


「……凄いですね」


驚きすぎてテンションがありえないほど下がっている私を見て、


「その時のことを教えてくれ」


それだけ言って、男は歩いていった。


8, 再始動

また、暗い空間の中だ。

確か……化け物に襲われて……。

その時、目の前で何かが光った。

顔をあげると、そこに映っていたのは、小さい頃の俺だった。

幼い頃の思い出だ。

そこに写ってはすぐに消えていく走馬灯の様なそれに、やがてコルが映し出された。

コルは真っ直ぐに俺を見て、


「バイバイ」


と言った。

待て、行くな!コル、コル!


「行くな!」


とっさに起き上がり、俺はそう叫んでいた。

直後に、激しいだるさに襲われ、俺はベッドにまた寝転がった。

今思えば喉も痛い。

どうやら、風邪をひいたようだ。


「んぅ……」


誰かの声だ。

やけに幼い声。

ベッドの脇を見れば、コルがベッドに突っ伏して寝ていた。

起こしてはまずいな。

そのまま大人しくしておこう。

……というか、ここはどこだ?

まだ村なのだろうか。

それに、あの夢は……。

俺が色々なことを考えていると、ドアがノックされた。


「コルー、ご飯だ……よ……」


ナディアだ。

ナディアは、目を覚ました俺を見て固まり、


「ナダ、良かった!」


大声で叫んだ。


「あんまり大声を出すと、コルが起きてしまう」


いやでも、起こしに来たのか。


「体調は?」


少し声量を下げ聞くナディアに、


「ただの風邪だよ」


それを聞いて、ナディアは安堵したように息をつく。


「ごめんなさい。私がここに連れてきたばっかりに……」


「大丈夫。それより家はどうなったんだ?」


俺の返答にナディアは噴き出した。


「普通……それ聞く……?」


暫くして話を聞いた。


「私の家は、無くなったよ」


「……そうか」


申し訳ないことをしてしまった。

俺の気持ちを察したのか、ナディアは、


「でも、もう修理は終わったから……」


それでも罪悪感は消えない。


「ごめんな」


無意識に、その言葉を放っていた。

ナディアはそれを聞き、


「許して欲しかったら、一階私の言うことを聞くこと!」


「……出来ることなら」


俺はそう返事する。

するとナディアは不敵な笑みを浮かべ、


「私もその旅に連れて行って!」


そう、言った。

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