忘れ去られた課題
提出物物語 1, 旅立ち
俺は冒険家だ。故に宝を探す。
久しぶりに立ち寄った冒険家ギルドの本部で、大変な仕事を任せられてしまった。
それは提出物を見つけ出す仕事だ。
今ではもう学校が無くなって、すっかり忘れ去られていたんだが、まさかこんな大役を任せられるとは…。
いやまぁ嬉しいんだけどね!久々に仕事を任せられたから、不安なところがあるだけで…。
だけどここでずっと文句を言っててもあれだし、明日からでも出発しよう。
取り敢えず今日はたびに必要なものを一式集めておこう。まず食料、地図、ある程度調理するためのものも持っていこう。
備えあれば憂いなしだ。リュックに荷物をつめて…こんなもんか。
結構多くなったな。あ、財布忘れてた。きょうはこんなかんじでだいじょうぶだろう…多分。思えばもう夜も深い。そろそろ寝るか。
***
なんか、いざ出発となるとなんだか不安になってきた。でも行くっきゃないしな、へばってちゃダメだ。
ギルドの皆に挨拶を済ませ、道へ向き直る。
道はかなり先まで続いている。しばらく人にも会わないだろう。ここで買い物は済ませたし、食べ物には困らないと思う。準備が万端であることをもう一度確認する。
よし、出発しよう。
提出物探しへ!
2, 相棒
どのくらいあるいただろうか…そろそろ人がいてもおかしくないはずなのに、商人のひとりともすれ違わない。心細い。
出発してから一週間、今は最初の街まであと半分という距離まで歩いたが、未だ誰とも出会わない。見たのは野良犬とゴブリンくらいだろう。
流石に寂しくなってきた、その時だった。
「おいお前!」
「ん?」
「今すぐ金目のも…を…おいて…いけ…」
何だ、子供か。なんでこんな小さな子供が盗賊まがいのことしてんだ?て、言うか倒れたんだけど。
「おーい、大丈夫かー?」
抱き抱えると、その女の子は消え入りそうな声でこういった。
「ハラ…ヘッタ…」
うん、だいたい分かってた。
そうだ、即席だけどなんか作ってやろう。えっと。いまあるものは…。
カバンの中を探っていると、ゼンマイと魚の切り身があったので、それを焼いて軽く味付けした。それを持って子供のところへ行くと。匂いを嗅ぎつけてこちらへ這ってきていた。
「うお…!」
流石にびっくりする。
「ほ、ほら、これ食べて元気だせ。」
料理を手渡すと、とてつもない勢いで食べはじめた。
「あんまりかき込むとつまらずぞ。もっとゆっくり食え」
案の定、その子は詰まらせてしまった。慌てて水を渡す。
「ほら、言わんこっちゃないな。水飲め、ほら」
***
「ありがとな、兄ちゃん!」
「いいってことよ。それよりお前、なんで盗賊まがいのことしてんだ?」
「そうしないと食っていけないから」
「成功した試しは?」
「ない」
無いのかよ。ん、もしかしてこの服装は、
「お前、もしかして奴隷か?」
「ううん、今は違うよ。商人から逃げてきた」
「じゃあ元は奴隷だったんだな?」
「うん」
奴隷も大変だ。そのまま逃げてきたらしい。服が汚いままだ。
それもそうか。こんな小さい子が一人であれこれ画策できるわけがない。そうだな…。
「…服、買ってやるよ」
「え!?いいのか!?」
「あぁ。そのくらい大丈夫だ。それに、そのままじゃあまた捕まっちまうかもしれないだろ?」
「ありがと!兄ちゃん、優しんだね!」
なんか、素直に褒められると照れるな。その言葉に照れていると女の子が、
「ゴブリン来てるよ」
そんな嬉しいことを…って、「え?」
思わず変な声を出してしまった。慌てて振り返ると、後ろからとてつもない早さでゴブリンが走ってきていた。
「…マジか」
俺はその子を抱き抱え、全力で走った!