第3話 つかめ!初勝利 その1
堺丘高校戦車部の初試合。果たして試合結果は?
フィールドは平原。
見渡す限り障害物はほぼ無く、お互いの要塞のような補給基地があるだけだ。
開幕早々、いきなりAS-90が2人とも砲撃してくる。
なんとかかわすも俺たち5人はバラけてしまった。
そのすきにチャレンジャー2が3人仲良く礼介に向かってくる。
3対1でもきついのに申し訳ばかりの装甲しかないMLRSと重量級のチャレンジャー2の接近戦では勝負にならないだろう。
「礼介、距離を取るんだ!」
牽制のロケット砲攻撃を浴びせながら後退する。
とはいえ焦ったせいか、ロケット砲の弾もあさっての方向に向かっていく。
なんとか援護しようと晴が砲撃でチャレンジャー2を迎撃する。
しかし、礼介のロケットとぶつかって爆発してしまい、敵に命中するどころではない。
「まずいぞ、これは」
「お、おい、俊也、どこへ行くんだ?」
いつのまにか、AS-90の後ろに回り込もうと俊也だけが離れて疾走する。
そこへチャレンジャー2のうち1人が接近して主砲を打ち込む。
俊也大破!
コンタクトレンズのディスプレイの表示。
守がかばおうと俊也の方へ向かっていく。
「守、やめろ!」
晴の制止を無視して走っていったところへAS90が砲撃。
俺が守の盾になる。
俺が中破する!
と、そのすきに俊也はあっさり撃破された。
俺と守もチャレンジャー2の2人に挟まれる。
AS-90×2、チャレンジャー2×2で一斉砲撃を浴びせる。
爆風で俺も守もふっとぶ。
2人とも撃破されてしまった。
AS-90へ逆襲しようと礼介と晴が長距離攻撃するが、難なくかわされる。
「まずい、チャレンジャー2が3人とも近くに!」
「なんとか2人とも距離取って立て直せ!」
俺の言葉と入れ違いにチャレンジャー2の砲撃で礼介が吹き飛ばされる。
「晴、お前のIQ300の頭でなんとか」
守が最後まで言う途中にAS-90とチャレンジャー2の挟撃が晴にとどめを刺した。
初戦は俺たちの完敗だ。
補給することすらなかった。
「ありがとう、相手になってくれて」
屈託のない感謝の辞。向こうからすれば普通に戦った、ということらしい。
部室・キャンプサカイガオカでは練習試合の反省会が開かれていた。
「いやあ、初戦から大惨敗だな」
「しかし、強えな」
「堺堀、近畿準決勝行ったことあるってよ」
「いきなりえらい相手だった」
「あれくらいに戸惑ってるようでは全国大会どころじゃねえな」
「どこが悪かったか考えてみよう」
試合データが各自のスマホに表示される。
「まず、連携が取れてない」
「ああ、各個撃破されてる」
「これならIQ300でも解けないな」
晴が肩をすくめた。
「なので今後は晴に情報を集約して作戦を立てる」
「そう、そうやって参謀が作戦を練る」
「通常ルールならメンバーは撃破されても通信して助言を出すことができる」
「仮に晴が吹っ飛んでも、まずは作戦練ってもらうぜ」
「次に相手をしっかり見る」
「チャレンジャー2、重量級だけあって普通は動きが鈍い」
「連携して距離を置くのがいいだろう」
「AS-90もあまり足が出ない」
「つまり俊也の16式のような足の早いのでヒット・アンド・アウェイさせるのが手だ」
「もし俊也がリタイアしていてもチャレンジャー2と90.10の重量差を考えるとスピード差を出せるはず」
「俺たちの装備にもついているが、主砲の同軸機銃と重機関銃の使い分けもな」
「利き手の反対についているこれか」
「こいつならトラックや軽装甲な連中はけちらせる。」
「同軸機銃で弾幕を張る」
「平原・海外なら煙幕弾で障害物を作り出す」
作戦会議に花咲く。
と、松風先生歴史部の方の部室から入ってきて
「流石にこれ以上話してるとヤバイんであとは家でビデオチャットとかにしてくれ、たのむ」
いつの間にか時計は夜9時だ。
「それと、コーヒー豆切れたから明日持ってくるよ」
「そんなに飲みました?」
「ああ、豆がらでゴミ箱満杯だよ」
みちるからメッセージが届いていた。
「流石に夜遅いから家戻ったよ。作戦頑張ってね」
そう言われると次は何が何でも勝ちたくなる。
続く
敗北を糧に次なる試合へと準備する一撃たち。勝利への道のりは見えるのか?




