せんしゃぶ! 第21話 2人の勝利
一撃、みちると英雄、数子の激闘!
ダブルス男子女子。
どっちも俺達堺丘の優勝。
博「男子も女子もおめでとう。」
彩「どんなもんでい!」
千春「しかし、男子女子とも初出場初優勝ってレアなの?」
晴「レアだぜ、そりゃ」
みちる「ここは男女混合も優勝してもっとレアにしなきゃね」
日が短い分、だんだん夕日じみた日差しになってくる。
またプロジェクトマッピングが違う。
一撃「ヴェルサイユ宮殿みたいだな」
みちる「そうよね。」
一撃「サカキューの昔の校舎もそんなあだ名だったんだろ?」
みちる「うん、写真で見たことあるよ」
一撃「優勝飾るにはふさわしいかもな」
みちる「撃くん、いよいよだね」
一撃「ああ、お前と一緒に、優勝を掴んで見せる!」
みちる「私だけじゃない、戦車部のみんなで!」
ベンチにはファーストプラトーンの仲間が座ってる。
向こうから英雄と数子が出てきた。
いつもどおりぱりっと髪を決めた英雄に、ウェーブがかったポニーテールの数子。
俺「今度はダブルスだな」
英雄「ああ、こんどこそ優勝するよ」
数子「真下さん、あんたもポニテなんだ。いつもの写真と雰囲気違うなあ」
みちる「どういたしまして」
10式戦車4人という全員が同じ装備の試合。
一見シンプルだが、その分選手の実力が出て変化を出す。
双方補給基地に戻って試合が始まる。
補給基地に2人で向かって突き進む。
英雄と数子も突進してくる。
数子の砲撃を防ぐ。
だがその間に英雄が横から攻めてくる。
それをみちるが反撃する。
一進一退の戦い。
撃つたびに日が落ちてくる。
攻撃も防御も互角。
なら、変化球で行くしかない。
俺「やぶさめ撃ち!」
俺は回り込みながら主砲で数子の顔を狙った。
数子「顔ガードなんて初歩中の初歩でしょ」
砲塔であっさりガードされる。
だが狙いは数子を撃破することではない。
砲塔が顔を守る分、脇が空く。
みちるの主砲が確実に数子の脇を捉えた。
みちる「ダブルスは2人でするもの!」
そこへ、英雄が割って入った。
英雄「俺が守る!」
砲塔でみちるの弾を弾き返す。だが、爆風で吹っ飛ぶ。
数子がクッションのように英雄の下敷きになった。
英雄「カズノコ!」
数子「1番、足が」
どうやら足をくじいたらしい。
装備の方は撃破どころか小破にしかなっていないのはさすがだが。
フラフラと英雄が立ち上がった。
英雄「だったらこうするしか」
数子「あんた、まさか」
みちる「チャンスよ、撃くん」
俺「ここは一気に…む!?」
煙が立ち込めてくる。
2人して発煙弾を放ったようだ。
煙の中からときおり機銃のシャワーが浴びせられる。
俺「逃げろ!間を取るんだ」
煙幕が晴れてくる。
そこには、数子をおぶさった英雄がいた。
俺「あんた、正気か!?」
英雄「ああ、正気さ」
数子「これで左右とも主砲が使える!」
たしかに左利きの英雄に右利きの数子で二人羽織なら両手主砲になる。
しかし、おんぶした状態ではまともに動き回れないだろう。
みちる「こけおどしには乗らない!」
だがみちるの砲撃は左右の砲塔で防がれた。
正面からの砲撃では俺もみちるもガードされてしまう。
俺「みちる、左右からだ!」
俺とみちるの挟み撃ち。
だが、そこで英雄と数子も俺達を狙い撃ってきた。
互いに命中する主砲。
ディスプレイに表示される撃破の文字。
主砲の煙が消え、しばしの静寂。
アナウンサー「判定は……最後まで残っていたのは市場英雄、よって彩の国高校の優勝!」
英雄「勝った、勝ったぜ!」
数子「そう、勝った、彩高みんなの勝利よ!」
僅差での勝利。
その喜びに英雄と数子は抱き合い、勝利を喜んでいる。
数子「今日ほどあなたの笑顔が、涙が嬉しい日はないわ」
英雄「ブッキー、君のおかげで、うう、俺は1番に、1番に」
数子「一緒に1番になったのよ」
彩高のメンバーが駆け寄ってくる。
皐月「ぶっきー、1番、おめでとう、本当におめでとう!」
号泣した皐月が2人の手を握りしめていた。
明郎「よくやったよ、2人とも」
数子「みんな応援してくれたからでしょ」
俺もみちるも駆け寄った。
みちる「石蕗さん、ケガ、大丈夫か?」
数子「大丈夫、気にしないで」
みちる「あなた達の勝ちね、おめでとう」
数子「真下さん、また勝負しましょう」
みちる「負けて悔しいはずなんだけどな」
俺「お前、そうなのか?」
みちる「撃くんだって一緒でしょ」
俺「ああ、ライバルが立ち直るのは嬉しいものさ」
みちる「だよね」
夕日は勝者も敗者も、等しく包み込んでいた。




