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せんしゃぶ!  作者: ヨシウス
20/24

せんしゃぶ! 第20話 世界、友情、愛 その1

正と遥、昇と香澄、人生をかけてつかんだ愛


昇「まずは準決勝進出だぜ」

正「ようやくだな」

超「それが俺たちのデスティニーだ!」

晶「正くんと昇くん、殴り合った仲とは思えないよね」

超や晶の脳裏に浮かぶのは、つい1年足らず前の春。


中部芸術高校戦車部の部室「アトリエ・ド・シャール」。

1年のキャプテンを決めるとき、正と昇は一歩も引かなかった。

正「俺がやる」

昇「何言ってんだ、俺がやるんだ、俺」

正「有名人だからって調子乗るなよ」

昇「あんたもだろ」

芸術家の卵が拳を飛ばす。

取っ組み合いになりマウント取っては殴り、の繰り返し。

香澄「やめてよ、昇くん」

遥「おい、正、やめるんだ」

香澄や遥が止めても聞こうとしない。

周りが言っても止まらないのは香澄や遥も同じだった。


正と遙、小学生から知り合いだった2人がいつ愛し合ったのか、そんなことは2人とも覚えてはいない。

はっきりしているのは小6のある日、遥が正の手のひらに「スキ」と書いて正も遥の手のひらに「スキ」と書いたこと。それが交際の始まりだった。

仲良くなってしばらくしたころ、正が1人の少女と歩いていた。

画材店に入ろうとした。

遥が前に立ちはだかった。

遥「あんた、正の何?」

晶「あなたこそ、なんなの?」

拳の返事が飛んだ。

その少女、晶と遥が殴り合いになった。

正「やめろよ、お前ら」

遥「正、この子あんたのなによ?」

晶「詰野くん、この人だれ?」

絵画教室の新入りだった晶に正が画材店を案内した、それだけだった。

遥&晶「本当?」

正「本当だよ!遥、俺好きなんだろ!水野さんも友達って言ったよな!」

遥「あ、ああ」

晶「たしかに」

正「だったら、俺を信じろよ」

そう言って正は2人の手を握らせた。

ほどなくして正と遥の学級で昼休みにペン入れが無くなった。

生徒「先生、最後に教室出たの詰野くんです」

正が疑われた。

正「俺じゃない」

先生「正直に言えば済むぞ」

正「先生まで疑うのかよ!」

遥1人が正をかばった。

遥「証拠もないのに決めつけないで!」


遥「正、私、世界でたった一人でもいい、あなたを信じるから」

正「ありがと」

絵画スクールの帰り。

晶「私、信じるよ」

晶はそう言った。

隣の小学校に通う晶がそう言い切るのには2人も驚いたが、仲間は1人でも多いほうがいい。

正「しかし、どうすりゃいいんだ」

遥「さっきもカラスがなんかくわえてただろ?きっと学校の屋上に住み着いてるやつだよ」

正「なら明日屋上空けてもらうか」

晶「目は口ほどに物を言う。」

メイク道具をさっと取り出した。

晶「こうするとうまくいくよ」

翌日、正と遥は学校に乗り込んだ。

2人の気迫に先生も屋上を開けた。

カラスが巣にしているところにペン入れがあった。

先生「詰野くん、ごめん」

生徒「疑って、済まなかった」

正「いんだよ、間違いなんて誰でもあるんだから」


それは3人にとって世界を敵に回しての勝利だった。


中1。香澄が両親の研究でフランスに暮らした。

故郷を遠く離れた彼女にとってちょっとした遊びだった。

香澄「はーい、戦車弁当でーす」

戦車の形をしたサンドイッチ、ソーセージ。

香澄「」

それが人気になり、再生回数が1万、5万、10万と増えるにつれて次々とレパートリーを増やす。

いつしかシェフかすみは戦車弁当の代名詞になった。


昇はサンフランシスコの日本人学校にいた。

サンフランシスコで両親がITベンチャーを立ち上げている間、趣味のバスケットボールで飛ぶうち、鳥瞰する眼を養う。

街づくりゲームで作った街を動画サイトに投稿するようになった。

近未来でも石器時代でも街を作る才能に秀でた昇。

昇市長の名は動画サイトでは知らないものがいないほどの有名人となった。


ある日昇が見た動画。再生回数が自分のと同じ。

香澄の弁当作りのビデオ。

コメントを付けた。香澄も返してきた。

2人は競うように動画を投稿重ねていった。

ある日、昇は香澄の弁当を再現した。次の日、香澄は昇の街を再現した。

再生回数は過去最高に。


昇「俺のこと、どう思ってる?」

香澄「画面にキスして」

2人の唇が画面に触れる。

それがファーストキスだった。


日本に戻ったら同じ高校に通おう。


両親を説得した。

学びたい。


試験は帰国子女枠だったので日程がずれて会えなかったけど、お互いチャットで励ました。


合格発表の日。

ようやく、リアルに会えたのだ。


どちらにとっても人生をかけて貫いた愛。


超「おめえら、デスティニーってのは拳じゃねえ、このコインで決まるのさ」

正&昇「は?」

超「表、裏、どっちにする?」

正「じゃあ俺は表」

昇「俺は裏」

超「出たほうがキャプテン、反対は部長さ」

コインは表。

40期の戦車部は正と遥がキャプテン、昇と香澄が部長で決着した。


その2人がお互いの健闘を励まし合っている。

麻衣「でも、よくここまで来たわね」

沙友理「みんなで来たんですよ、先生」


アトリエ・ド・シャール40期の快進撃はタンキングバトルだけじゃない。

芸術コンテスト、ファッションコンテスト。

立て続けの入賞・特選。

39期の生徒も発奮してタンキング文化祭大賞を取れた。

2人の実力は中芸の歴史に華を添えた。


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