せんしゃぶ! 外伝第12話 完成予想図
英雄が見た彩高20期・戦車部1年タンキング団体戦全国大会出発前日
夏休み3日目、所沢駅に降り立つ。
快晴の空、朝9時というのに真夏の日差しは陽炎をつくり、視界を揺らがせている。
駅前の工事は佳境でドン、ドンと大地を打つ音がする。
杭があっという間に地面に打ち込まれていく。
見れば完成予定は来春完成と書かれた看板がある。
近づくたびにドン!ドン!とマシンが地面を打つ。
未来を生み出す鼓動。
完成予想図のビル。
ビル前を歩いているカップル。
きっとそれは、俺と……
数子「英雄、後ろ!」
俺「おまたせ!」
数子「その顔、また予想図のこと考えてたな」
俺「俺たちこういうカップルだろ」
数子「なら、飲む?」
ペットボトルを受け取って仲良く開ける。
あっという間に半分飲む。
数子「どしたの、電車1本遅らせてさ」
俺「夏休みの宿題、やり残したところ思い出しちゃって」
数子「まさか全部仕上げたの?」
俺「うん」
数子「すごい!私も8割仕上げたんだけどさ」
俺「明日の出発までになんとかなる?」
数子「ま、そのつもり。にしてもあんた昔からだよね」
俺「そうだったっけ?」
数子「小学校のころは7月中に仕上げてたでしょ。それが中学で1週間になって今度は3日か」
俺「来年は本当に2日で仕上げるよ」
数子「ところで残したのって?」
俺「英語の作文でさ、ラストがどう考えても納得いかなくって」
数子「英雄らしいな」
俺「まあ、こだわり派だし」
数子「こだわりつーと、今日は大丈夫かな?」
俺「何が?」
数子「学校の自販機。昨日は全滅だったじゃん」
俺「ああ、あれはきつかった」
数子「今日は売り切れてないといいよね」
俺「そう思ってスポーツドリンク凍らせたの持ってきた」
数子「さっすが!」
俺「でさ、聞いた?今度の新曲」
数子「聞いたよ」
俺「なんか君っぽい」
数子「でしょ!瑞希にもさあ、私っぽいって」
俺と数子のスポーツバッグについてるせんしゃくんのアクセサリー。昨日買ったばかりのだ。
校門をくぐると、Tシャツに短パンの日焼け男が声をかけてくる。
?「おお、夫婦で登校?」
俺「冗談きついぜ、シゲ」
長沢重人、通称チョウザメのシゲ。男子水泳部のキャプテン。
水泳界期待のホープで小学生から県大会やら関東大会で優勝した強者。
オツムの方も俺と張り合うように定期テスト連続2位だ。
俺「ラブラブなのは認めるけどな」
数子「あんたも彼女いるでしょ」
重人「まあね」
朝練と言いつつ、プールで涼めるのはちょっとうらやましい。
夏休みというのに取り巻きの女が集まってきてる。
数子「アフター目当てだな、あれ」
そうこう言ってるうちに部室に着く。
数子「あっくん、小鳥、おはよう!」
明郎「よう!」
小鳥「そっちもラブラブ登校?」
俺「まあな。」
数子「そっちは?」
明郎「昨日のライブの反省会だよ」
数子「新曲全国大会で、ってとこ、コメ付きまくりじゃない」
小鳥「私ならではの集め方よね。」
俺「練習どうする?」
明郎「午後からは出発の段取りと1回戦の作戦会議あるしさ」
数子「それまでフィールド空いてる?」
紅葉と瑞希が入ってくる。
紅葉「お、もう会議始まったの?」
俺「まだだよ」
数子「ちょっと練習時間あるし」
瑞希「じゃ、第1セットしよっか」
紅葉「第3空いたら第3も使いたいな」
俺「撃ちっぱなしの練習?」
紅葉「もっと命中させたいから」
明郎「第3なら2年が使ってるよ」
小鳥「松也さんとひのきさんいるから聞いてみたら?」
俺「あ、ひのきさん?」
ひのき「第3さあ、2年先に会議やることになったから使う?」
紅葉「使いまーす」
松也「じゃ、戻ってきたら連絡するよ」
俺たちは第1フィールドで練習ロボット相手に砲撃練習。
??「お、やってるやってる」
昆が取り巻きの女を連れて歩いてくる。
数子「小池くん、今日は?」
昆「ちょうどいい、英雄、対人戦だ」
俺「勝ったらスコーン奢るよ」
昆「今度はちゃんと本場のスコーンで頼むぜ」
練習戦。
開幕早々、崑の砲撃がビッシビッシ打ち込まれていく。
ジグザグにかわしながらスライディングして牽制の機銃攻撃を食らわせる。
機銃の威力はしれてる。狙いは隙を生み出すこと。
一瞬のタイミングに主砲を発射!
昆の無防備な背中に見事命中した。
と、直後に真上から砲撃が落ちてくる。
砲塔を盾にするも間に合わない。
あと一歩発射が遅ければ俺の負けだった。
昆「さすが英雄」
ギャラリー「小池くん、ドンマイドンマイ!」
今度は走がフィールドに来る。
走「次は俺だぜ」
ギャラリー「頑張って、小池くん」
俺「スコーンの相手、頼んだ」
隣のフィールドでは数子があとから来た小鳥相手に砲撃を命中させる。
数子が一番輝くときだ。
小学生の頃。
俺「好み?石蕗さんだよ」
同級生1「え?」
同級生2「ありゃ通行人だろ?」
俺「よく見ろよ、あの姿」
砲撃を決める姿を見て、同級生たちは
同級生1「すげえ」
同級生2「あんな美人だったのかよ」
俺「気づいてたのさ」
あの時からずっと輝いてる。
そう、今も。
小鳥「今のアングル、数子のベストアングルかな?」
俺「そうさ」
小鳥「今度葵ちゃんに撮ってもらおうよ」
俺「数子、ランチ行こう」
数子「じゃあ、シャワー浴びてくから」
俺「お、シャワー室のボディソープ変わった?」
数子「ほら、夏休みからスーパークールにしますって」
俺「お、アンケート出したかいがあったな。」
数子「夏はスッとこなくっちゃね」
食堂は夏休みなのに宿題やら練習やらで混んでいる。
俺「夏休みなのに多いな」
数子「安くだべれるからじゃない?」
俺「まあ、そうだろうな」
皐月「私たちもでしょ」
数子「またチョリソードッグ?」
皐月「暑い夏には辛さが一番」
俺「真冬と一緒のこと言ってる」
皐月「だっておいしいから」
俺「汗もかかずによく食えるよ」
数子「私も一汗かいた」
皐月「練習?」
俺「ああ、午後1までは第1使える」
皐月「じゃあさっさと練習行こっと」
相変わらずの無表情で出ていく。
葵「お、食堂で会議ですか」
数子「ちょっと昼食べるだけだよ」
葵「ぼくもちょっと一緒していい?」
俺「ああ」
葵「そのメロンパン、うまそう」
数子「なら、半分あげるよ」
葵「お、サンキュー」
俺「コスプレの方はどうだい?」
葵「衣装合わせは終わったし、後は着るだけかな?」
数子「今年、何やるの」
俺「メイドの次はナースかよ」
葵「設定では看護婦のヒットマンなんだけどね」
紅葉「葵ちゃん、来てたんだ」
葵「昼まだ食べてないけどね」
すみれ「お、食堂で会議?」
数子「まだ会議前」
すみれ「練習してきたの?」
俺「午前中はまだ涼しいからな」
すみれ「その顔、今日は仲良し登校かな?」
俺「まあ、駅からだけど」
すみれ「宿題仕上げるために電車がずれたんでしょ?」
数子「なんで分かったの」
すみれ「市場くんと別の電車なんてそれくらいしかなさそうだし」
俺「名探偵だな」
すみれ「私もさっきまで宿題仕上げてたから気持わかるのよ」
数子「お、そろそろ会議だ」
甘平「間に合った、間に合った」
瑞希「甘平、なにしてたのよ」
甘平「差し入れで手間取ってさ」
昆「アイスバーか」
紅葉「私、あずき味にする!」
明郎「俺はオレンジ味!」
あや「先生のぶんはないの?」
甘平「もちろん、ありますよ」
あや「いやあ、鳥井くん様様ねえ」
瑞希「今年のグランドエイト、濃い顔ぶれね。」
明郎「吉備体のキャップは刃に土野、相変わらず手強いな」
葵「キャップだけじゃないよ、吉備体は」
すみれ「陸星にオレンジに北農にここ数年の顔ぶれよね」
瑞希「関西は異変発生」
昆「新顔の堺丘と堺堀か」
皐月「要注意じゃない?」
小鳥「ビギナーズラックかな?」
葵「試合映像見るとそんな運頼みじゃないよ」
すみれ「確かに。ま、でもグランドエイト、どこも凄腕と思うよ。」
俺「中芸も久々出場じゃなかったけ?」
明郎「お、マーキー出てるじゃん」
小鳥「春休みのDJ大会以来だよね」
走「帰りドコ?」
俺「いつものファミレスでいいだろ?」
数子「いよいよ、だね」
俺「うん」
数子「その前にちょっと宿題教えてほしいんだけど」
俺「どこだい?」
数子「ここだよ」
俺「いつまで?」
数子「今晩中には、仕上げたいな」
朝見た駅前の工事現場。
鉄骨がまた少し高くなった気がする。
俺たちのように。




