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エルフは言霊に希う  作者: 望月うさぎ
壱ノ章 「いってきます。」
19/28

其ノ拾肆 肆ノ業間 綺麗な青色に見える。

一週間なんてものはなかった。いいね?

.....奇跡的にリアルの用事が重なりまくりまして.....。

「えぇ!?魔法で攻撃が出来ないですって!?」


ここは例によってクインさんの部屋だ。これまた例によって試験後にクインさんに連れてこられてどうして一回も魔法の玉での攻撃をしなかったのかを問われたのだ。


『......はい。発動する前にお腹の当たりにまるで何かに刺されたような痛みが走って、発動することが出来ないんです。』


本当は原因の目星も付いているのだが、それを言うと、わたしが異世界から来たことを話さなければならない。きっと理解してもらえないと思い、敢えて話さなかった。


いや、単に怖かっただけかもしれない。仲良くなれたクインさんが、わたしを《おかしな人》として離れてしまうことが。


「なんなのかしらね.....」


『わかりません.....』


「校長先生にでも聞いてみましょうか。」


『校長先生ですか?』


「ええ。流石に魔法以外でそんなことはできないでしょう。それなら専門の校長先生に話を聞いてみた方がいいと思うわ。」


『魔法...ですか。それはそうかも知れません。』


正直原因は分かっても理由は分からない。クインさんの言う通り情報を集める事が必要だろう。



そしてわたし達は校長室にやってきた。ノックをすると中から


「お入りくださいませ。」


と声がかかってきた。クインさんを先頭に中に入る。


「あら。クインさんとミツキさんでは無いですか。今日はどうしていらっしゃったの?」


そう見せているだけかもしれないが見た所忙しそうでは無かったので試験でのこと、そしてその症状、とも言えることについて説明した。話を聴き終わるとマナ先生は、何かに気づいた様な仕草を見せ、考え込む。よく聞いてみると、


「流石にありえないわよねぇ.....」


と呟いている。しかし話すことに決めたのか、小さく頷くとこちらに向き直った。


「恐らく違うと思いますし、言ってもわからないかも知れませんが、今の現状とよく似ているのは、《戦争の呪い》と言われる病気ですわ。」


『《戦争の呪い》、ですか?』


「えぇ。元は戦争に赴き実際に殺人を体験していた人が戦争が終わったあと、剣を握るだけでも発作が起こることから、何か強いショックを受けたことにより本来出来ていたはずの事さえ自身の身体が勝手に拒否反応をおしてしまうことをそう読んでおりますわ。簡単に言えばトラウマ、と言えば少しはわかり易いかしら。」


それを聴いてもわたしはそこまで驚くことは無かった。

あの日。実の親から包丁で刺された夜。その時に包丁が刺さっていた所と記憶の限りではほぼ同じ気がする。その記憶が脳裏にこびり付いているので、トラウマと言われて合点がいくほどだった。


「でも、確かあなたは試験中、剣では戦えていたんでしたわね。普通魔法が撃てないレベルなら剣を持った時点で何かしら弊害が起こりそうなものなのですが.....」


「そういえばそうですね、確かにミツキちゃんは木剣で実際オルト君に勝ってる訳ですし。」


「しかも普通《呪い》はパニック障害などに陥るのが主なんです。でもミツキさんは痛みはあるものの、その他に症状は出ていないように見えますわ。なのでこの《呪い》とは違うのか、と思いまして。」


「やっぱりまだ情報が足りないですね、もう少し色々な人に話を聞いてみようと思います。」


「そうね.....。あ、そういえばミツキさん、コニオはなんて言ってたのかしら。彼の意見も参考にしたいのだけれど。」


「《コニオ》.....?《コニオ》ってあの冒険家のコニオ様の事ですか?あの人は伝説ですよ?そんな簡単には会えないですし、そもそもミツキちゃんは知らないのでは.....?」


「あら?ミツキさんは言ってないのね。それともミツキさんも知らないのかしら。ミツキさんの保護者はコニオよ。その伝説の冒険家と言われる、ね。」


私はそうなのか、と思っただけだったのだが、それを聞いた瞬間、クインさんの時間が止まっている。


そして。


「えええええ!?そ、そうなんですか!?あのコニオ様って妻子持ちだったんですか!?」


「正確には私もよく知らないのだけれど、少なくとも妻は居なかったはずですわ。詳しいことはそこに当事者がいるではないですか。」


「そ、そうですね、私たちの知らない情報、ありがとうございました。《呪い》、ですか。そちらの方向でも考えてみます。そして、ミツキちゃん、次はコニオ様に話を聞きに行くって事で良いかな?」


クインさんがいつに無くそわそわしている。そんなに有名な人なのだろうか。コニオさんは。


『は、はい。いつ行きましょうか。』


「それはもちろん今からよ。」


『え?』


「早く聞いて情報校長先生に届けなきゃ。ですよね?校長先生。」


「え、ええ。まぁ。何かわかったら教えてください。出来るだけ協力致しますわ。」


「はい!わかりました!」


そう言うとクインさんはわたしの手を引っ張って行った。見るとマナ先生が苦笑しつつ手を振っていた。



校門まで来るとクインさんは荷物を持ってくるので待っていてほしいと告げて一旦寮に戻った。わたしは、すぐに戻ると思うので此処で待っていることにした。

することも無いのでぼんやりと校門前の道を眺めていると、誰かがこちらへ駆けてくるのが目に入った。

近づくにつれ、誰かが分かる。それは。


『オルト君!?どうしたの?』


現在絶賛不登校中の筈のオルト君その人だった。

わたしに駆け寄ってきたオルト君は慌てた様子で


「この前に友達を家に連れてきたことを話したら毎回執事を呼ぶのも面倒だろうって」


そう言って紐で出来たネックレスを様な物を取り出した。


『それは?』


「俺の家で作った招待した客だ、っていうのを示すネックレスだよ。これを渡すのを口実に祖父母達を説得したんだけど、前にすぐに来れなくなったから若干気まずくてね。...あ、誰か来る。それじゃ、実際に来てくれれば祖父母達にアピール出来るからいつでも来てね。」


そう言ってオルト君は小路地に消えていった。

わざわざ届けてくれたのだから次に行く機会があれば忘れずに持っていこう。


「お待たせ!あれ?今誰か居なかった?」


来たのは準備を終えたクインさんだった。オルト君は気まずいと言っていたし、別に知らせる程ではないだろう。


『前を人が通り過ぎただけですよ。それよりも行くんじゃないんですか?』


そう言って歩き出す。クインさんは一瞬訝しげな表情を見せたが、すぐに並んで歩き始めた。


「そ、そうね!遂に本物に会えるのね...!」


『そんなに凄い人ですかね?』


「ええ。冒険家を目指している人でコニオさんに憧れない人は居ないくらいに。」


そんなになのか。全く話を聞いたことが無かったので知らなかった。あの知識や強さはそこから来ているのだろう。


「だから驚いたわよ。ミツキちゃんがそのコニオ様と親子だなんて。どういうことよ?」


『正確には親子ではないんです。私が死にかけてた時に保護されて、文字通り保護者になってくれただけなんですよ。』


「死にかけてっ...てええ!?大丈夫だったの!?」


『助けて貰ったので平気でした。というか大丈夫じゃなかったらここにいませんよ』


「そ、それもそうね」


『えぇ、早く自立して迷惑のかからないようにしなきゃ、とは思ってるんですけどね.....あ、もう着きましたよ。』


クインさんと話しているといつの間にか到着していた。コニオさんは居るだろうか。ドアをノックする。反応が無い。ドアの鍵も閉まっているので、まだ帰っていない様だ。


『今は居ないらしいですね.....すみません、どうしましょうか?』


そう伝えると、クインさんはあからさまにがっかりした顔をしたが、ため息をつくと


「確かに居るとは決まってないわよね.....。冒険者として働いているわけだし。流石に待っているのは悪いから、今日は帰るわ。」


本当に残念そうだ。こんなに会いたそうにしているなら何とか会わしてあげたい。


『今日帰ってきたら訪問出来る日を聞いておきますから!少しくらい私にもクインさんの役に立ちたいですしね。』


「え、いいの?」


『はい!』


「やったぁ!ありがとう!本当に嬉しいわ!」


『それなら良かったです。それでは聞いておきますね!』


「よろしくね!」


少し元気が出た様子でクインさんは帰って行った。授業が終わった後すぐに帰ることになりいつもより大分早く家に着いてしまった。


.....そうだ。オルト君も知識がありそうだった。また来てくれと言われているし、こちらもいきなりで悪いとは思うが話だけ聞かせて貰いに行こうか。


そう思いまた同じ道を引き返す。オルト君の家の通りは近いが、さっきよりも遠く感じた。

通りを少し歩いて、門が見えたところで、貰ったネックレスを身につける。


その瞬間、わたしは横から押し倒された。

顔を見ようとするも、黒子のような格好をしていて分からない。


「ーーーーーーーーー!?」


誰ですか。その言葉は魔法の言葉にはならなかった。


魔法で腕の力を上げようとしても全く魔法が感じられない。基本的に非力なわたしは抵抗と言える抵抗も出来ず、顔に魔法を当てられた。


「ーーーッ.....」


急に、眠たく.....。

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