其ノ拾壱 参時間目 魔法授業・中級編
全文字数を話数で割る単純計算で1話文の文字数が少ない気がしたので、今回は増やそうとしました。更新が不定期だからこれくらい多くした方がいいのかな...
わたしの検査が終わり元の席に帰ろうと振り向くと、クラスがざわついていた。クインさんが急にA+になったことが騒がれているのだろうか。
そんなことを考えながら自分の席まで戻る。すると、後ろの席の女の子が慌てたように立ち上がり私の椅子を引いて座れるようにする。見るとにこやかに座るように勧めてくる。
戸惑いながら席に付くと、ジャス先生が次の人を呼び検査中だ、と静かにさせた。
次はオルト君だ。検査機に手をかざす。
【あなたの魔力量はB-です。】
うん。あんなクインさんみたいな人の方が少ないだろう。他の人もほとんどがB程を取っている。きっと基準はそのくらいなのだ。
そんなことを考えていたので、わたしは次々と検査していく中オルト君以上の結果を出した人がいる度に注がれるオルト君の視線に気づかなかった。
そして検査が終わる。無自覚なわたしはまだ気付けない。
自分が...自分だけが取った「S+」という結果の、その意味を。
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あの後、みんなに微妙な距離を置かれ、扉の開け閉め、靴をだす、と言ったことを誰かがやってくれてしまう、というまるでお嬢様を扱うかのような扱いを受け、外に出る。
みんなが座ったことを確認し、ジャス先生の説明が始まる。
「今日からは防御式を練習する。剣士と戦いになり接近された時に攻撃された時にも必要だが、かわせることもある。だが、魔術師同士の戦いでは魔法が外れることの方が少ない。ほとんどが狙いを追いかけるように動き、まっすぐ飛ぶだけのものも大体はそのスピードが凄まじい。」
「そこで必要になるのがこの防御式と言われる魔法だ。この魔法は攻撃に対して物理的、魔法によってはその魔法に対抗する魔法を瞬時に発動させ、その攻撃に対する障壁にする魔法だ。」
「まずは見せよう。そこ、前に出て先生に魔法かそこにある木剣で攻撃してみてくれ。」
選ばれたのはオルト君だ。前に出る。
「行きます!」
オルト君の周りに熱が集まる。
「《ファイアーボール》!」
バレーボール大の火の玉が先生に迫る。
バキンッ!と言う固い音と共に、火の玉が弾けちった。先生の前には円型の青色の壁が出来ていて、先生には傷がない。
「ありがとう。戻ってくれ。このように、相手の攻撃から身を守るのに必ず必要になる。魔力量が必要なのは、この障壁が攻撃を受けた時に壊れないようにするのに体内の魔力を使うからだ。」
少し悔しそうな顔のオルト君が帰ってくる。...まさか先生を傷つけようとはして...無いよね。きっと。
「最終的に君たちにはほぼ反射でこれができるようになってもらう。最初は相手の攻撃を...木剣だけにして発動スピードを高めて貰う。それから魔法にして様々な魔法の属性に対応出来るようにする。2人組を作ってくれ。」
2人組と言われ反射でクインさんを探す。見つけると既に2人組を作っていた。と、オルト君がいる。
『一人なら一緒にやりませんか?』
「お、俺?あぁ。いいよ。」そう言ってオルト君は笑って頷いてくれた。
「2人組になったな。それでは交互に木剣を相手に降る方とそれを防ぐ方を順番にしてまずは防御式を出現させることに慣れてくれ。」
『どちらからしますか?』
「じゃぁ俺が守るから木剣を俺にふってくれ。」
木剣を持つ。...重た過ぎて持ち上がらない。少しだけ腕に魔法を掛け持てるようにする。
『行きますね!』
ゆっくりとオルト君に向けて木剣を振る。
目の前に円型の障壁ができる。
ガッ!固い音。木剣が弾かれて衝撃が私に帰って来る。
木剣をオルト君に渡し、オルト君の動きに集中する。攻撃から守り衝撃を逃がす盾。それを手の先から出すイメージで手をかざすと目の前にこちらも円型の障壁が精製される。
木剣を弾くことが出来た。
何回か繰り返すうちに、手をかざさ無くても精製出来るようになり、楽しくなる。
...調子にのってしまった。
持つので精一杯だったはずの木剣を振るスピードが少し早くなってしまう。
オルト君は対応して防御式を精製する。
バキンッ!固い音がして。
オルト君の障壁が割れてその衝撃でオルト君が後ろに倒れた。
『大丈夫ですか!?すみません!わたしのせいで!』
「い...いや。こっちが集中出来てなかっただけだよ。ごめんねおどかせて。大丈夫だよ。」
『でも頭から倒れて...』
「このくらい平気さ。続きをしよう。」
そう言って立ち上がるオルト君は少しふらついていた。心配なので先生の元に連れて行こうとした時
「そこまで!今日の授業はここまでとする。今日持ったイメージを大切にして、スピードをな高めてくれ、以上!」
授業が終わってくれた。
『心配だから先生の所に行こう?』
「大丈夫だって。そこまでしてもらう必要は無いよ。用事もあるし。行くね。」
そう言ってオルト君は言ってしまった。本当に大丈夫だろうか。
そう思って目線で見送っていると、クインさんがこちらにきた。
「今回も大変そうな魔法を教わったわね。また練習しないと...。どうしたの?呆けた顔して。」
わたしミスでクインさんまで巻き込むわけには行かない。
『いえ、大丈夫です。それよりもご飯食べに行きますか?』
「そう?それならいいけど、あなたはそうは言ってられないわよ?」
『え?』
「はぁ...やっぱり自覚無いのね。あなた今日の授業で、S級魔術師だってバレたのよ?早くしないとクラスの中で孤立するわ。」
えっ...あっ...
顔から血が遠のいて行くような気がする。
頭がクラクラする。立っていられない。
「ちょっ...大丈夫!?」
クインさんが支えてくれた。
『わたし...どうすればいいんですか...?』
「そんなこと言われても...あっ、ちょ、そんな絶望した目で見ないでよ...分かったわ!協力すればいいんでしょ!?分かったわよ!...だからって抱きつかないで!ちょっと!とりあえずご飯食べに行くわよ!」
協力してくれるらしい。無理矢理みたいだけど
断ることもできたはずだ。それを引き受けてくれるクインさんはやっぱり凄いな。
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結局食堂でも順番を先に送られたり席を譲られたりと謎の優遇...いや、『S級魔術師』への特別扱いは止まらなかった。早々と食べ終わり、クインさんの部屋に逃げる。
最近はほぼ毎日ここに来ているように思う。
「さてと...考えましょうか。あなたへの評価を人並みに落とす方法を。」
『はい...お願いします。』
「え...ええ。まずは一つ目、みんなの前で前私にしたみたいにお願いして見るとか。」
『はぁ...やってみます。』
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翌朝。みんなが教室に入ってきたタイミングで、わたしは前に出る。視線が刺さる。
『皆さん!わたしは...その...魔力量を調べたら何故かSの判定が出ましたが、そんなに凄い人ではないんです!皆さんと同じなんです!だから、その...変な扱いはやめてください!お願いします!』
頭を下げる。静まり返った教室から少しづつ話し声が聞こえる。
「ーーーそこまで言うなら...」
「ーーーでもこれってルールだしね...」
「ーーーだよね...」
結局その日は特別扱いが消えたものの、以前のような和やかな雰囲気が戻ってくることは無かった。
そして翌日にはわたしに見えないように、特別扱いが復活した。
『.......ダメですね...』
「ええ...」
『もう...クラス変えて貰った方が皆のためになるんじゃないですかね...』
「だめよ!そしたらあなたと授業受けれなくなっちゃうじゃない!絶対どうにかするわよ!」
『...はい。ありがとうございます。』
「次の作戦は...そうだ。あなたがドジしまくればいいのよ。そうすれば『わたしたちと変わらないんだ』ってなるに違いないわ。」
『なるほど...やってみます。』
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翌日から、わたしは全力で失敗を重ねてみた。
朝早めに来ては一つズレた席に座ってみたり。
授業では防御式を盛大に音を立てて割られてみたり。(クインさんが協力してくれた。
思いつく限りを尽くした。
いくらやっても恥ずかしいもので、1日中顔が熱くてたまらない日もあった。
奇怪な行動にコニオさんから心配もされた。
ーーーでも。無くならない。
授業が終わり、お昼のために立ち上がる。
何故無くならないのだろう。どうすれば分かり合えるのだろう。
...?何故か視界がぼやける。輪郭がさだまらない。
「ーーーー...ッ...」
気づけば、わたしは泣いていた。
気づいても涙は止まらない。 次から次から溢れ出る。
ガタッ。わたしのせいでいつの間ににか静まり返っていた教室に突然音がなる。そちらを見るとわたしの席にの後ろの子が立ち上がり、近ずいて来る。そして。
「ごめんなさい。わたしは今までS級の魔術師何て見たことが無くて。いや、このクラスの人は見たことがある人の方が少ないわ。突然クラスに入ってきてS級だったあなたとどう付き合えばいいのか分からなかったの。あなたも入ってきてすぐこんなことになったら辛いだろうのに...本当にごめんなさい。」
「わたしはもうあんなことはしないわ。だって、あなたはもうこのクラスの仲間だもの。
...みんなはどうなの?うちのクラスの仲間にこんな仕打ちをして、恥ずかしいと少しでも思うなら
もうこんなことは辞めましょう。」
「そうだよな...」「うん...そうよね...」
その子の言葉に反応して、雰囲気が波のように変わっていく。
何故か涙がさっきよりも多く出てくる。でも。
頬が緩むのを停められない。
「いつも無表情なのにそんなかわいい顔も出来るんじゃない。改めてようこそ。魔術師Cクラスへ。」
ちらりとクインさんを見ると、それはそれはいい笑顔だった。わたしもなのだろうか。
やっと、クラスに入れた気がした。