其ノ玖 弐時間目 魔法授業・入門編2
初めての感想を貰いました。その日の午前中はずっと喜んでました。...あれ...私ちょっとチョロすぎ...?
翌日、わたしとコニオさんは日の出直前に起きた。旅でよく起きていた時間だったのだが、とても眠い。昨日あったことをあれこれ話していたら夜遅くなってしまったので寝る時間が少なかったからだ。しかしコニオさんはいつも通りなのだが。
わたしも前の世界では勉強やゲームで夜遅くなることがあり、そこまで弱い訳では無かったが、これも転生の変化だろうか。
今日は学校までの道を覚えようと思う。そのために今日は早く起きたのだ。
眠たい身体を起こし準備をする。朝食を食べ、家を出る。昨日はコニオさんに付いていっだけだったが、今日は横に並びその道のりと周りの景色に気を配る。コニオさんの家はメインストリートからは離れているが人が少ないことはないようだ。
八百屋さんや道具屋さんらしいお店、
「おっ!コニオさん。おはよう!」
「ああ。」
「やぁ嬢ちゃん。今日も学校かい?頑張っておいで!」
『はい。おはようございます。』お辞儀をしながら応える。
さらに進むと川を渡る橋がある。渡るとそこには赤熱した炉のある鍛冶屋があり、丈夫そうなショーケースには一般的な包丁からファンタジーでよく見るショートソードまで色々なものが並べてある。暗い店内を見ると、いかにもな西洋風鎧が立たせてあり、職人の腕を思わせる。
そこも通り過ぎ、川沿いに暫く進むと、学校が見えた。そこでコニオさんが立ち止まり振り返った。
「道順は、八百屋、道具屋、橋を渡って鍛冶屋だ。橋を渡ってからはほぼ一本道だが、橋を渡るまでは少し曲がったりする。そこで迷わないようにきをつけろ。」
『分かりました。』
このくらいならば流石に覚えられる。
「本当に大丈夫...そうだな。ミツキは頭がいいな。では、俺はこのまま出かける。今日も頑張れ。」
『はい。いってらしゃい。』
手を振ってコニオさんを送る。...本来このくらいの子は覚えられないものなのだろうか。そんなことを考えながら自分も学校に入る。教室に行くと、既にまばらに人がいた。クインさんの姿もある。
『おはようございます、クインさん。』
「おはようミツキさん。今日は早いのね。」
『学校までの道をよく見ておこうと思って早く出たんですよ』
「ミツキさんは最近ここに来たばかりだったものね。授業が始まるのはもう一人少し後だから、ゆっくりしてていいと思うわ。」
時間を潰す...か。そういえば授業で使う本をまだ貰っていない。マナ先生に聞いて見るか。
一階に降りて校長室歯向かう。扉の前に立ち、控えめに三回ノック。すると扉の向こうから
「?どちら様でしょう?入ってきては?」
と声がかかったので少し開け、
『失礼します、ミツキです』
という文字を滑り込ませる。
「ミツキさん!良くいらっしゃいました。どうぞお入りくださいませ。どうされました?」
『いえ、大した用では無いのです。ただ、授業で使う本が無くて。ジャス先生は直ぐに届くと言っていらしたのですが、まだ届かないので来ました。いつ届くのでしょうか?』
「あら?もうミツキさんのクラスの子に渡したはず何ですけれど...?」
『そうなんですか?ちなみに何ていう名前の子です?』
「オルト君だったと思います。」
『ありがとうございます。聞いてみますね。』
校長室を出て教室に戻るとほどんどの人が既に来ていた。クインさんに聞いた所朝早くに部活棟にいって活動している人も多いそうだ。そんな人が切り上げて一気に戻ってくるらしい。
そして自分の席の隣。オルト君も来ていた。席に座り尋ねる。
『おはよう、オルト君。』
「あ、ああ。おはようミツキさん。」
『はい。それで、いきなり何ですがわたしの授業で使う本を先生から預かっていませんか?』
「本...?ああ!ごめん!確かに貰ったけれど今日は寮の部屋に忘れてきたよ...授業が終わったらもって来るから、今日は俺の見てよ。」
見つけることが出来た。忘れたとはいえ持ってきてくれるのに今日も見ていたらオルト君に悪いな。
『いえ、今日はクインさんに見せてもらえるか聞きますね。』
「あっ...うん。分かったよ。」
これでオルト君も集中して授業が受けられるだろう。で代わりにクインさんに迷惑がかかるが。
2日間だけだったので許して貰おう。
『クインさん、今日の授業で本を一緒に見せてくれません?』
「まだ届いてなかったのね。いいわよ。」
良かった。見せてもらえるようだ。ほっと一息つくと、ジャス先生が入ってきた。
「それじゃ、今日の授業を始める。」
それぞれが席につく。
「今日は、自身の魔力量を増やすと、どんなことが出来るか、その基本と応用をさらっていこうと思う。では、そこ」
当てられたのは、わたしだ。
「とりあえず今思いつく限りの出来ること、を挙げてみてくれ。」
出来ること...か。
『はい。まず、より大規模、そして複雑な魔法の命令を伝えても魔力切れにならずに行使することが出来るようになります。』
『また、他の魔術師が多数魔法を行使する、または規格外の魔法を行使することにより微精霊が使う空気中の魔力が切れてしまった場合に魔法を行使する際、自身の魔力だけを使って魔法を詠唱することになるため、その点でも自身の魔力量が増えることで行使出来る魔法が増えます。』
こんな所だろうか。
「...よく勉強しているな。ほぼその通りだ。まだ挙げるとするならば、相手の魔力量を測る魔法が使えるようになれば、その相手の大体の強さを魔力量から見ることが出来る、ぐらいか。ありがとう。座ってくれ。」
良かった。正解だったらしい。コニオさんから貰った知識は本当に偉大だ。
「...この本要らないじゃない貴女...」
隣からクインさんの声が聞こえてくる。流石にそれは過剰評価過ぎないだろうか。
『そこだけ知っていただけですよ。』
小さな文字でそう送っておく。
「ただそれは基本的な事だ。誰か、それ以外はあるだろうか。」
手はあがらない。
「では、今日はそこを詳しく教えよう。まず、知っての通り魔法はいくらでも機転を利かせることで変化させることが出来る。すると、ただ【相手を攻撃する魔法】では無く、【相手を弱体化・無力化する魔法】を使う人もいる。」
「そういった時によく使われる魔法が相手に幻覚を見せる、相手を麻痺させる、というような魔法だ。戦闘時では手っ取り早く、なおかつ効果が高いからな。」
「では、逆に使われたとき。その時に、魔力量が多い方がいいんだ。そういう魔法は、相手の魔力の流れを乱れさせることで、幻覚等を引き起こしている。川に大石を投げ込んで一部だけ流れを堰き止めて流れを乱すようなものだ。」
「これはその川の水が増えれば流れは戻り、大石は流されて元に戻る。よって、魔力量を多く出来ると乱されている所さえ見つけることが出来ればそこに魔力を集中させ、かき消す事ができる。これは、魔術師の間では《レジスト》という。覚えておくように。」
「では私が実際にやって見せようと思うが、誰か幻惑でも麻痺でも使えるやつはいるか?」
...使えるかもしれないが、使ったことのない魔法を使って事故が怖い。
わたしの右手の位置から手が挙がる。クインさんだ。
「麻痺の魔法なら使えます。」
「そうか。では頼む。」
はい。と言うとクインさんは詠唱を始めた。
「“我に対するものの魔の礎よ『その力をもって』『その主に反逆せん』。《パラライズ》”」
唱えた途端、ジャス先生の動きが目に見えて悪くなった。すると先生の体を青紫色の帯が取り巻く。だんだんと帯が小さくなり、完全に体内へ消えると、ジャス先生は普通に動けるようになっていた。
「とまぁ...こんな感じになる。帯のような物が見えたと思うが、それが全身の乱れの原因を探す時の魔力の反応だ。」
「幻覚等は対抗する手段がないとやられた瞬間何も出来なくなってしまう。魔力量を上げ、できるようになっておくように。あと、魔力量は次におしえることで必要になるので、意識的に訓練をしておくように。」
「何か質問は無いだろうか。
ーーー無いようなので今日はこれで終わる。以上、解散。」
その声とともにクラスに騒がしさが帰ってくる。
『クインさん、凄いですね!』
「《バラライズ》の事?これはそんなにすごい魔法じゃないわよ。あなたもすぐ出来るわ。」
『そうですかね...?』
「ええ。そんなことよりもお昼を食べに行きましょう。午後からは魔力量を上げる訓練をしなきゃ行けないから。」
『あ、あの、それ私も参加してもいいですかね?』
「逆に頼むつもりだったのに。もちろんよ。」
『ありがとうございます。』
頑張らないと。