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エルフは言霊に希う  作者: 望月うさぎ
壱ノ章 「いってきます。」
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其ノ捌 壱ノ業間 理解者

最近忙しくて全然書けませんね...ちょくちょく書いていかないと...

わたしは授業の後、クインさんと一緒に中央の建物の一階にある食堂に連れられた。食堂には丁度お昼を食べに来ている他の組の生徒もたくさんいた。

食堂の利用方法は給食制だ。その日その日で担当の人が献立を考え、欲しい人が食べに来るらしい。

この学校では寮があるので、比較的食べに来る生徒は多いそうだ。

わたし達はお盆、スプーンフォーク、そして食べ物を順番に貰って席に着いた。

因みに今日の献立はコッペパン、コーンスープ、

塩、胡椒で味付けされたお肉、野菜炒め、といったものだった。この世界にも塩胡椒はあるのか。

飲み物はセルフで水だ。


(...いただきます)


「...いただきます」


わたしは口だけを動かして 心の中で、クインさんは口に出して食事前の挨拶をする。

...というかこの世界の人達もいただきますというのか。

そんなことを考えていると、クインさんがため息を付いた。


「何よ、その訝しげな目は。」


『い、いえ。挨拶ってするんだなぁって...』


「私が挨拶しなさそうに見えるの?」


『そういうことでは...』


「...じゃあ何、あなたと違う世界(・・・・・・・・)の人間でも挨拶するんだなぁ、ってこと?」


「ーーーッ!?」


何でそのことを。思わず少し立ち上がりかける。


「...ちょっと素直過ぎない?まぁいいわ。そこら辺話してもらいましょうか。」


カマをかけられたらしい。クインさんは凄いな...

これで何も話さないという選択肢が消えた。

誤魔化すべきだ。


『誰にも言わないでくださいね?』


「ええ。」


『わたしは確かにこの人間界の者ではありません。気づいたらこの人間界にいて。なのでわたしの元の居場所との違いを見て、驚いていたのです。ただ、バレると助けてくださった「お父さん」に悪いと思い、さらに余計な騒ぎを起こすと不味いので頑張って隠していたのですが。』


「なるほどねぇ。遠くの方から気づいたらここに飛ばされてた、か。確かに高ランクの魔術師の転移魔法ならそんなことを可能かもしれないわね...。」


何とかわたしの元の世界のことは隠せた、と思う。嘘は本当の事と交えて、というテレビの知識も捨てたものでは無いな。さらにこの情報を重くするためにもう一手。


『どこか人気のない場所ってありませんか?この後少し見せたい物が...』


「他の人に見られるのは不味いの?」


『ええ...』


「じゃあわたしの寮の部屋にいらっしゃい。今は相部屋の人がいないから実質一人部屋なのよ。」


そう言ってクインさんは食べる速度を上げる。そんなに気になるのかな。





二人共食べ終わると、クインさんの案内で左側の建物に入る。玄関に女子寮、と書いてあった。

そして三階の突き当たりの部屋に入る。


「ここが私の部屋よ。誰もいないから安心しなさい。」


『...じゃあ。』


そう言うとわたしはクインに密着する。誰にも見られたくは無いのだ。そしてそのまま長い髪を掻き分けて、いつも意識的に隠しているその耳を晒す。


息を呑む音が聞こえる。


「あなたは...一体...いや...これどこかで...

...!あなた...本当に人間じゃ無いのね。」


『はい。わたしはエルフ。いつもはそうなるから隠しているのです。このことはクインさんとわたし2人だけの秘密ですよ?』


「...神に誓うわ。だから教えて。まだあるでしょ?隠してること。それだけじゃ魔法の才能の理由にはならないわ。」


そうか。わたしの元の世界ではエルフ=魔法のイメージがあるのだが、この世界ではそうと決まってはいないらしい。


『...分かりました。...といっても何故才能があるのかは分からないですし、何をした訳ではないですが、わたしは入学の時の試験で校長先生にSランクだと言われました。そして、わたしは言霊遣いです。』


「はぁ!?」


「ー!?」


密着したせいで大きな声が耳に来る。...身体が小さくて見た目はクインさんに座ったまま抱かれている感じなのだが。


「あ...ごめんなさい。Sランクってことは、決まり的には敬語の方がいいのかしら。」


『いえ...わたしもそのせいでみんなとの関係が変わってしまうのが嫌だったので隠してたんです。』


「なるほど。あと言霊遣いって?」


『えっと...魔法の技能そのものには関係ないんですが、魔法の詠唱をする時の言葉に自分の気持ちことが出来るんです。』


「普通の詠唱とは違うの?」


『普通の詠唱はただ命令することしか出来ません。細かい指定はできますが、それを含めて命令することが必要です。言霊を使って微精霊達に伝えると、自分の気持ちをそのまま伝えることができます。』


「なるほど...ただ、このことを知ってるのは私だけじゃないんでしょう?誰が知ってるの?」


『えっと...「お父さん」と校長先生です。校長先生は多分わたしの種族は知らないと思います。』


「あれ?私もしかして結構凄い秘密知っちゃった?」


『絶対に内緒ですよ!』


「ええ。」



「さてと。それじゃあ学校の紹介に行きましょうか。約束ですしね。」


『え?午後の授業はないんですか?』


「あなたの元いた場所はどうか分からないけど、ここでは家で手伝いをしてる子も多いから午前中いっぱい授業して、午後からは家事に参加できるようにしてるのよ。」


昔の学校みたいだな。と思った。


『じゃあ...よろしくお願いします。』



>>>>>>>>>>>>>>>



クインさんと一緒に学校を回った。

この学校は四つの大きな建物からなっていた。

まず中央棟。三階建てで一階には職員室、医療室、そして食堂などの全校の人が使う様な施設を集めているらしい。

ここが左右の棟、グラウンド、体育館、

闘技場ーーこれは訓練場と言うらしい。に繋がっているので割と人通りが多い。

二階に上がると剣士組のA〜J組の教室が並んでいる。やはり剣士組は多いらしく、一階分をまるまる使っているらしい。

そのまま三階に上がると内政組の教室A〜G組、そして私達の魔法組のA〜C組がある。こうして見ると魔法組の少なさがよく分かる。

正直前の世界よりも立派な建物だな。教室も十分な大きさがある。

一階に戻り左右棟へと進む。右の棟は中でも左右に分けられていて、女子寮と男子寮に別れている様だ。

左には、生徒達が自分達で集まり好きなことを研究する部活棟のような場所となっている。

見て回ったが、まぁまぁの数があるようだ。



一通り見て回って中央棟の玄関まで戻ってくると外はもう夕方になっていた。


『色々な所に行きましたね』


「結構色んな所があるものでしょう?」


『はい。本当にありがとうごさいました。』


「こちらこそ教えてくれてありがとうね。それじゃあ私は帰るわ。また明日。」


『はい。また。』


クインさんは寮棟に帰っていく。クインさんは寮暮らしなのか。


...そういえばわたしはどう帰えればいいのだろう。着いてきただけなのであまり道を覚えていない。


「...おい。帰るぞ。」


振り返るとそこにはコニオさんが居た。迎えに来てくれたらしい。


『あ...ありがとうございます!』


「いや。連れてきたのは俺だ。また道を覚えよう。帰るぞ。」


『そんな...はい。』


歩き出すコニオさんに着いていく。今日は色々なことがあった。入学して早々やらかして...秘密を話せる人が出来て...。帰ったらたくさん話そう。そう思った。

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