アオイ-1
夏の理科室は暑すぎる。授業開始まであと8分。
『うるさいんだけど、あいつら』
隣で貧乏揺すりしながらシンゴは言った。あいつらとは、シュンスケやユウのことだろう。二人は昨日のお笑い番組でやってたギャグの真似をし、女子たちの反応を伺っている。きっと、シンゴは女子に囲まれているあいつらに、嫉妬しているんだと思う。でも、僕は純粋にうるさいと思った。だから、シンゴを更に挑発する。
『シュンスケってレイカに告られたらしいよ』
そうすれば、
『は?レイカが?なんで...。』
そろそろだろう。
ゴンッ!!!!!!!!!
シンゴが二人に向かって筆箱を投げた。そして、
『おい!うっせーんだよ!!』
教室は一瞬にしてシーンとなる。さすがシンゴ様。
『あとシュンスケ。そのギャグ全然面白くねーから』
そう言い放つと、シンゴ様は理科室をお出になされた。最高だね。これで静かになった。
『アオイ。またシンゴに変なこと吹き込んだだろ』
シンゴが投げた筆箱の音で目を覚ましたイツキ。
『そんな、僕はただ本当のことを言ったまでだけど?』
『お前性格悪いな』
『イツキほどじゃないよ』
そう言うと、笑いながらワックスでセットした僕の髪をクシャクシャにしてきた。だから僕もイツキの、赤くてフワフワした髪をクシャクシャにした。
『髪染めないのか?』
『高校入ったら、染める』
『何色?』
『決めてよイツキ』
『赤!』
『ダサいから嫌だ』
『そかそか...っておい!』
なんてやり取りしてたら、チャイムが鳴った。
授業が始まる。