脳筋魔王様の倫理 そのさん
※この小説はあくまで倫理に肩肘張らずに触れる、ということだけを目的にしており、全ての範囲をきっちり話にはしません。飛びます。
笑いながら、呆れながら、それでも単語だけは頭に残るような、そんな話にしていきたいと思っています!(理想主義)
「ソクラテスの弟子がプラトン……プラトンプラトン……クッ、フフフ……アナムネーシス……言いにくいな……アナムネッシーアナムネッシー、アナムネーシス……ククッ……イデア……イドラと似てるな……イデアは理性で捉えることが出来る……そもそも理性ってなんだ……今の意味とはどうせ違うんだろう? 知ってるんだぞ……イデア界はまるでわからん……現実の世界の外にあるのかイデア界……
ソクラテス……そうか、ソクラテスは裁判で死刑判決になったのか……毒杯を仰いでの……ちょっと待てプラトンおいプラトン、ソクラテスの為に刑務官買したのかプラトン……弟子ェ……手段を選ばんとはこのことだな……魔王もここまではやらんぞ……お?哲人政治論?なになに……知恵の徳に優れていて……善のイデアを認識できる者が、統治するべきだと考え…………おい……おい……善のイデア、認識出来ないんだが……駄目なのか?認識出来ないと魔王しちゃいけないのか?そんなに知恵と善のイデアは大切なものなのか?……そうだったのか……イデアイデアイデアイデアイデアイデアイデアイデアイデア」
「怖いッ!!!!控えめに言っても呪い殺されそうです!魔王様ァ!!」
いつも通り倫理の勉強をしていると、突然扉の警備に当たっていた部下が叫びだした。
この部下の名前は……なんてことだ、倫理のし過ぎで名前が思い出せない……幹部の、よく後ろにいる……あれだ。あれあれ。……徳だ! よくアテレーアテレー言われてるアイツだ! 荒れてーな。 おっと誤字。
「ん?そんなに怖かったか?……アッ!」
「今世紀最大の恐怖ですよ魔王様……ど、どうかなされましたか?」
「今!今気がづいたんだが、イデアって沢山言うと「アイデア」になるぞ!! 世紀の大発見だとは思わないか! ハハハハハ!!」
善のアイデア、あ、イデア。で覚えればいいのか! これでもう忘れんぞ!
すっきりした私は机から立ち、伸びをする。
ほか覚えきれてないのは……。
「……パイドン」
毒杯を飲む前のソクラテスが獄中に集まった人々と最後にした会話を纏めた、プラトンの本だ。……プラトン、ソクラテス大好きだな。『ソクラテスの弁明 』という著作もたしか出してたはずだ。
「魔王さーん、何読んでんねん? それおもろい? 」
急に頭上から声が聞こえた。思わず顔を上げると、天井に足を引っ付け、コウモリのようにぶら下がっているアレテーの上司の幹部がいた。
名前は、エロース。所謂サキュバスの男型のインキュバスだ。プラトン的にいうともっとプラトニックな、不完全から完全ななろうとする向上的愛なのだが、まあ、こいつはそのまんまだ。
頭の十二割が下ネタで出来ている。しかも大体しょうもない。
「面白いか面白くないかでいうと悪くは無い」
「そっかー、俺興味無いわー、倫理とか興味無いわあ。どんだけ興味無いかっていったらおっさんのハミパンぐらい興味無いわー」
耳を掻きながら心底どうでも良さそうな顔をしている。おいおい、参考書な耳糞落としたら跡形もなく消し飛ばすぞ。
ほげーとしたやる気のないエロースを見ていると、何となく先程覚えられないと思っていた単語を思い出した。
「……パイドン」
「おっぱいドンッ!!」
言うと思った!!!
言うと思ったぞ、エロース!!!