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二人の出会い 1

「師匠起きて下さい! 師匠ー!」


 女の子がベットに寝ている男性を起こしている。

 彼女の名前はアニカ、茶色の髪が肩まであるクルクルお目々の可愛らしい十三歳の女の子である。

 アニカは両手でベットに寝ている男を起こそうと左右に揺するが起きる気配がない、いや、正確に言うなら気づいているのだが起きたくないのだ。

 

「もうしょうがないなー」


 そう言うとアニカは椅子をわざわざベットの横まで持ってきて椅子の上に立った。


「トウッ!」


 掛け声とともに椅子からダイブ、綺麗に伸びた体が寝ていた男の腹部に突き刺さる。


「グァッ」


 あまりの衝撃に男は飛び起きるもまだ眠たそうな顔をしている。

 男の名前はレオ、黒髪のボサボサ頭の二十三歳、寝癖のせいもあるが普段からボサボサ頭だ。


「もういつまで寝てるんすかー、朝ごはんの用意するから顔でも洗ってきてください」


 レオは無理やり起こされた事と、どう見ても寝起きのクチャクチャのアニカの頭を見てムカッとしたが面倒くさいので何も言わずに顔を洗いに行った。

 しばらくするとテーブルにアニカが作った料理が次々と運ばれてきた、正直寝起きにはきつい量だ。


「冷めないうちに食べてくださいっす」


 レオはスープを飲んでみた。するとアニカが満面の笑みで聞いてくる。


「どうすか? どうすか?」

 

 レオは面倒臭そうな顔をしながら答えた。


「まずい」


 アニカは悲しそうな顔をしている。


「ひどいっすよ師匠、そこは嘘でもおいしいって言わないと女の子にもてないっすよ」


 そう言うとアニカも自分で作った料理を食べてみた。


「……まずいっすね」


 一つ屋根の下で寝起きしたこの二人、なぜ一緒に暮らすことになったかと言うと、それはつい先日の事だった……






 アニカは生まれ育ったルル村を出て王都ミスドラにやって来た。

 とんがり帽子に黒のワンピース、魔法使いを目指す女性の一般的な格好だ。

 背中には大きなリュックを背負っていて手には木の杖を持っている。

 なぜ王都ミスドラに来たかと言うとそれは魔法使いになるためである。

 魔法使いになるには試験を受けて資格を取らなければならない、その為アニカは王都ミスドラまでやって来たのだ。


 アニカがミスドラの街を歩いていると筋肉ムキムキの八百屋の主人が声を掛けてきた。


「お譲ちゃん魔法使いの卵かい?」

「うん。魔法使いの試験受けに来たんだ」

「そうか、若いのに偉いなー」


 アニカは少し嬉しそうだ。


「おじさん、魔法使いの試験って何処で受けるの?」

「お、おじさん? まーおじさんか。えーと、街の中央にでっかい城が見えるだろ、ここから城に向かって歩いて行くとその手前にお譲ちゃんが被ってるとんがり帽子の看板の建物が在るからそこに行ってみな」

「はーい、ありがとう」


 アニカは八百屋の主人に言われたとおり城に向かって歩きだす城の手前まで行くと、とんがり帽子の看板の建物を見つけた。 


 アニカは大きく深呼吸してから建物の中に入った。

 想像では試験官や魔法使いを目指す人でごった返していると思ったのだが中に居たのは丸眼鏡をかけた女性が一人、しかも暇そうに机に頬杖を突いて座っていた。


「あのー、魔法使いの試験を受けにきたんですけど」


 アニカに気付いた丸眼鏡の女性は慌てて肘を下ろして対応した。


「は、はい。魔法使いの試験ですね。魔法使いの方の許可は貰ってますか?」

「許可ってなんですか?」

「魔法使いになるにはまず魔法使いの人に弟子入りして許可を貰わないと試験受けれないんですよ」

「そ、そんなー、弟子入りって……魔法使いの知り合いなんて居ないし……」


 その時二人の会話をさえぎるように建物に人が入ってきた。

 アニカが振り返るとそこには鎧を着た美しい女性が立っていた。

 切れ長の目に胸まであるストレートの金髪、同姓が見ても心を奪われるほどの美しさだ。


「エレーナ様!」


 座ってた女性が急に立ち上がる、なにやら緊張した面持ちだ。

 金髪の美しい女性はエレーナと言う名前らしい。


「暇そうだなマリー」


 丸眼鏡の女性はマリーと言う名前らしい。


「最近は魔法使いを目指す人も少ないですから」

「この子は?」


 エレーナはアニカの肩にそっと手を置いた。

 

「魔法使いの方に弟子入りしたいみたいなんですけど」

「魔法使い……! なら私が紹介してやろう」

 

 思いがけない展開に先ほどまで暗い顔をしていたアニカが笑顔になる。


「本当ですか? やったー!」

「ここで少し待っていろ」


 そう言うとエレーナは建物を出てどこかに行ってしまった。


「だ、大丈夫かな?」


 マリーは何故か心配そうな顔をしているが、アニカはそのことに気がつかなかった。   

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