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 人よりたくさん考えろって言われも何を考えればいいのか分からない。

 それすらも自分で考えろって言われた。考えても考えてもバカはバカ。考え付く先は1分かけても1時間かけても1日かけても変わらない気がする。

「よお、ずいぶん時間かかったな」

 親友が校門で待っていてくれた。

 ふたりで歩いて帰宅する。グラウンドの方からは運動部の掛け声が校舎からは吹奏楽部の楽器の音が鳴り響いて放課後って感じのする学校を僕らは後にする。

 その間に僕は考える。

「あのさ、僕って何を考えればいいのかな?」

「・・・・・お前は何がしたいわけ?」

「考えたい?」

「何を?」

「さぁ~」

 親友の目線がいかにもバカにしている。

「先生がバカはバカなりに考えろって言ったんだ。だから、僕は考える」

「何を?」

「さぁ~」

「バカか」

 う~ん、ダメだな~。

 確かに先生が言うように考えている姿を見ると頭が良さそうに見える。きっと、先生はこういうことを言いたかったんだろう。普段の言動からはもうバカさが出過ぎてるから少しでも形からでもいいから頭良さそうなことをしろってことだな。きっとそうだ!

「さすが!先生だ!」

 突然、納得した声を出しても親友は微動だにしない。

「お前って本当にバカだよな」

「これからそれはどんどん治っていくよ。今に見てろ!将来は東大合格だ!」

「お前が東大合格したら日本終わるわ」

 でも、可能性はゼロじゃない!

「お前が東大に行くんだったらマジで頭取り換えるしか方法ないぞ」

「だから、なんでそうなるの!もっと、僕のバカを治す方法を真剣に考えてよ。バカを治す薬があればいいとか適当なことばっかり言って!」

「あるよ。バカを治す薬」

「え?」

 突然声をかけてきたのは帰る道に立っていた僕でも分かる変な人。少しくすんだ白い白衣にぼさぼさの長い髪をしたいかにも怪しげな女の人が僕らに声をかけてくる。焼きそばみたいなぼさぼさの髪の毛のせいで顔が見えない。

「バカを治す薬ってなんですか?」

「そのままさ、バカを治すために特別に作られた薬さ」

 女の人は白衣のポケットから栄養ドリンクがよく入っている茶色の分を取り出した。

「これを飲めば、あらびっくり!バカが治るのよ」

「本当に!」

「本当だとも。おかげでバカだった私は大学院を出て研究職を得ることが出来たのよ」

「すごい!」

「でしょ。このバカを治す薬。英名でBAKA・Heal・Drug。略してBHD!」

「おお!」

 感動する僕。

「確かバカって英語でfoolで怪我を治すっていうのがhealだよな。なんか英語おかしくないか?つーか、drugも確かに薬って意味だけど、麻薬っていう意味の方が強い気がするのは俺だけか?」

「バカか?薬を英語でDrug以外に何というのよ!」

「medicine」

「・・・・・こいつはもうこのBHDでは治すことのできないくらいバカだ」

「いや、バカの方がお前だろ」

 何を訳の分からないことを言っているだろう?

「とにかく、この薬を飲んだおかげでこんなに英語が出来ているのよ」

「すごいね!」

「どこがだよ」

「いちいち、文句が多いな」

「いや、ツッコミどころ満載だろ」

 そんな冷たい眼で見つめないでよ。

「君のようなバカに悩む若者に飲んでほしいこそ、この薬を飲んでほしい。御代はいらないよ」

「ただでくれるの!ありがとう!」

 僕は茶色の瓶を受け取る。ラベルにはBHDと大きく書かれている。これを飲めばバカが治るのか!なんて素晴らしい薬なんだ!

「では、私はこの辺で失礼するよ。ちなみにその薬を飲んでどんなことが起きても私は一切責任をとらない自己責任で頼むよ、じゃあ」

 女の人は親友の睨むと逃げるようにどこかに行ってしまった。

「さて、飲むか」

「おいおいおいおいおい!」

 親友が僕の手から薬を取り上げる。

「何するんだよ!それを飲めばバカが治るんだよ!」

「治るわけないだろ!お前だってバカは頭変えるか、人間やめるか、金づちで頭叩くか、死ぬ以外に治す方法何てありはしないんだよ!」

「全部無理じゃん!」

「だから、バカを治す方法なんてないんだよ!」

 でも、それが親友の手の中にはある。バカを治す薬、BHD。あれを飲めば、きっと僕もバカが治ってあの女の人と同じように大学院まで行って白衣とか着て研究とかできるかもしれない。

「考えろって言われたんだろ。だったら、よく考えてみろ。見ず知らずのいかにも怪しげなマッドサイエンティストみたいな女からもらった薬が普通の薬だと思うか?」

「思わない!」

「即答とか絶対何も考えてないだろ!」

 考えてるよ!マッドサイエンティストってなんだろなって!

「その薬は普通じゃないよ!だって、治すことのできないバカを治すんだよ!普通であってたまるもんかー!」

 僕は親友から薬を奪う。

「俺はお前のために言ってんだ!そんなどんなものが入っているか分からない薬を飲んでお前がどうなるか心配なんだよ!親友として!」

「ありがとう!でも、僕はバカを治したい!」

 瓶のふたを開ける。

「バカ止めろ!」

「脱!バカ!」

 僕は親友の止める手を振り切って瓶の中身を一気飲みした。

「・・・・・苦い。不味い。だ、だけど、これで僕はバカじゃなくなった。フフフ。ハハハ!見ていろ!明日、バカじゃない僕の姿を見せてぎゃふんと言わせてやる!」

 若干、心配そうな目で見る親友を尻目に僕は明日に現れるであろう薬の効果を確かめるのが楽しみで仕方ない。

「そうだな。明日が楽しみだな」

 親友は半ばあきれながらそう言った。

「バカは風邪をひかないから大丈夫かもな」

 そんなこともボソッと言った。

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