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逃亡。
それは、かの大国のお話です。
リーグロイド国。
広大で豊かな国土、穏やかな気候が人々を育む、大国だ。
人々は皆争いごとを好まず、穏やかに暮らしていた。
王は賢王と有名で、国民を思いやる政治を行い、民から愛されている。
そしてその息子である王子も優秀であり、今後も大国は安泰だと言われている。
「シンデレラ!!」
甲高い声が屋敷に響く。
私の姉、ケイティだ。
眉間に皺をしっかりと刻み、あらん限りの声で私を捜している。
「シンデレラ!どこにいるの!!」
苛立ちと呆れを隠すこともなく、きぃきぃと鼓膜を震わす。
私はふかふかで音を立てることもない絨毯を、それでも慎重にそろりそろりと歩く。
見つかりませんように…!
ふと視界がうぐいす色に染まった。
「……シンデレラ。どこへ行くつもり?」
おっとりとした声と微笑みの淑女、私のもう一人の姉がそこに立っていた。
「お、お姉様…」
「マリアお姉様!シンデレラ!」
「あらあら、とりあえずふたりとも、お茶にしましょうか」
有無を言わさぬその微笑みに、私は屋敷からの逃亡を諦めたのだった。