2話
三時間後、戦艦は再び目的地に向かって動き出した。
この後の航海では攻撃を受けることなく目的地である北海道、通称管理地に到着した。久しぶりに陸へ足をつけたため、船から降りた者の何人かは揺れていないことに身体が慣れないのかフラついていたり、怪我をしている者は担架で優先的に運ばれていた。その為、少し時間がかかり1時間程の時間をかけて全員が下船した。
そして、体格が良く坊主頭の30代くらいの男達が子供達の人数を確認し始めた。
数え終わると愚痴を言うかのように男達は話し始めた。
「だいたい5隻で合計1万5000人乗っていた蛹が8000人まで減ったか…」
「かなり減ってしまいましたね…」
「クソが!罰当たりな異国人共め…!俺達の大切な蛹を半数近くも…」
この大人達は狂ってる。子供達のことを人としてなんて見ていない。子供達のことを蛹だなんて別称で呼ぶし、「殺された」と言うのではなく「減った」と物のような扱いをする。「蛹」と子供達を呼ぶのは戦いの道具になる神になるかもしれない13~18歳の子供が成虫になる前の虫の状態である蛹のようであるからそう呼ぶのだ。そして、大人達は死んだ子供に対して悲しいと思うのではなく戦力を失い悔しくて愚痴を言っているのだ。
「残った蛹達、お前らには今から予定通り育成機関の施設で成神または成人するまで過ごして貰う。取り敢えず全員その場に腰を下ろせ」
子供達は疲れもありゆっくりと腰を下ろす。
「ノロノロするな!早くしろ!」
子供達は怒鳴られ、急いで座った。
「今から番号を呼ばれた蛹はこの場に立て!」
「8番、97番、108番…」
次々と番号が呼ばれ、30人数えると呼ぶ声が止まった。
「今呼んだ蛹には第一施設へ行ってもらう。お前達はそこで手を挙げている管理人のもとへ移動しろ。そしたら管理人の指示に従い行動しろ。次に10番、87番、456番、666番、3004番、8704番…」
早くも番号を呼ばれ456番は立ち上がった。
「今呼んだ蛹達はあっちで手を挙げている管理人のもとへ行け!次は…」
456番達は手を挙げている管理人の男のもとへ集まった。管理人とはこれから子供達が成神または成人するまで子供達に教育を行う者のことだ。
「皆さんどうも初めまして、私があなた達の管理人になります。管理人と呼ばれるのは私はあまり好きではないので私のことは先生と呼んでください」
「「「はい」」」
「良い返事ですね。それでは私の後ろについてきてください。施設まで案内します。」
456番達は先生について行った。管理地の全ての施設の外見は白の四角い箱のような建物であった。この無機質で面白味のない空間に456番は少し恐怖を感じ、冷たい汗をかいた。
5分ほど歩くと先生は1つの施設の前で止まった。
「ここがあなた達がこれから過ごす施設です。」
そこは他の建物と何も変わったところの無い白く四角い建物だった。しかし、おかしな点がひとつあった。入口らしきものが見当たらない。先生は建物の壁に近ずいた後ガサゴソと服のポケットを漁り、ポケットからドアノブを取り出した。ドアノブを壁につけて捻るとガチャッと音を立て壁の一部が開き、中に入れるようになった。ドアノブは何かで止められたようには見えなかったが、壁にしっかりとくっついていた。
「皆さん、今のが不思議に見えたかも知れませんが気にしないでください。もし、どうなってるのか知りたいのなら将来私のように管理人になってください。そしたらきっとどうなっているか分かりますよ。まあ、管理人になるのは私はオススメしませんけど」
先生はまるで自分のようにはなって欲しくないという顔をしていた。そんな先生に言われて入った建物の中は中まで真っ白ということはなく、床にはカーペットが敷かれていて壁は木で出来ているように見えた。建物の外観からは想像できない空間に子供達は口を開けて呆然としていた。
「施設に見とれているところ申し訳ないけど、施設内の案内を行うのでまた私についてきて下さい」
先生について行き施設の中を見て回ると色々な部屋があった。男女別の浴場や書庫、先生が授業を行い勉学を教えてくれるという教室。そして、子供達一人ずつに6畳程の部屋が用意されていた。戦艦での扱いが嘘かのように見える対応に皆、驚きが止まらなかった。
「案内はこの辺りで終わりにします。皆さん長い船旅で疲弊しているでしょうし今日は各自自分の部屋でゆっくり休んで下さい。気になる事がありましたらここの最上階にある私の部屋に来て下さい。それでは解散!」
子供達は指示通り部屋に戻った。
456番は部屋に戻ると緊張が解れ溜まっていた疲れがどっと押し寄せた。そして、そのままベットに倒れるように入りすぐにスヤスヤと眠った。
次の日、456番は起きて部屋に備え付けの時計を見ると時刻は7時半になっていた。456番は何となく部屋の椅子に座り、壁にくっついている机の上を見ると張り紙のような物が貼ってあった。そこには「目の前にあるボタンを押すとそのボタンの下に横に長い長方形の穴が開き、そこからトレーに乗った食事が出てきます」と書いてあった。ちょうど腹が減っていた456番は試しにボタンを押してみることにした。すると本当に穴が開き、中からサンドウィッチが出てきた。食べてみるととても美味しいという訳ではないが、そこそこの味であった。しかし、456番にとって戦艦の時の食事と比べるととても上等なものであるため一瞬でそれを平らげた。久しぶりのまともな食事をした456番は昨日、すぐに寝てしまったため浴場へ行くのを忘れていたことに気づいた。456番は汚れを落とすため少し遅れてだが浴場へ向かうことにした。




