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英雄の定義  作者: ramisu
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1話

 太平洋上、五隻の戦艦からはボイラーで排出された黒煙がゴォっと音を立てて煙突から顔を出していた。天候はあまり良くなく、波は風で少し荒れていた。戦艦の中では常に様々な物がガランゴロンと転がっていた。戦艦内には薄暗く、牢屋のように鉄格子の付いた「部屋」と呼べるかも怪しい高さ2M程の空間が幾つもあった。その空間の中には蛇口と排水溝が付いおり、辺りを僅かに照らす光源であるランタンとバケツが1つ置いてあった。そして、各空間の中には番号が書かれた腕輪を付けた数十人の子供達が一部屋ごとにいた。皆、表情は暗く元気はない。隅で縮こまっている者や座り込んで俯いている者、船酔いをしたのか吐瀉物を出すのを堪えようと口を抑えている者もいた。

 そして、腕輪に456番と書かれいる少し伸びた黒髪の少年が小声で愚痴を漏らした。


「何なんだよここは…!暗くて狭くて臭い。おまけに飯まで不味い。ちょっと前までは俺達のことを天使だなんて呼んでもてはやしていた癖に、なんだよこの扱い…」

 



「ドゴォン!」


 轟音と共に部屋が大きく揺れた。

 大人が大声を上げながら子供達の居る空間の前を走って行った。


「隣の308号艦が大破した!損傷具合から、乗っていた者の生存率は極めて低い!」


 これの言葉は子供達に向けられたものではなく、他の大人に伝える為のものであるが、子供達はザワついた。「自分達は大丈夫なのか?」「そこには友達が乗っていた」などと口にしていた。そして、これには456番も少しビックリしていた。なぜなら308号艦には456番の双子の弟が乗っていた。しかし、456番は特に悲しいなどの感情を抱かなかった。


「ドゴォン!!」


 再び轟音が鳴り響いた。今度は先程よりも音が大きく、轟音の音源が近くであることを察した。そして、音が鳴ったすぐ後に456番達の部屋の鉄格子の向かい側の壁に強い衝撃が走った。壁にもたれかかっていた子供達は勢い良く吹き飛び、床や鉄格子に強く打ち付けられた。そして壁はガラガラと崩れ、風穴が空いていた。恐らく先程の轟音が鳴ったときに隣の戦艦が攻撃を受け、その際の破片の一つが丁度この壁の位置に飛んできたのであろう。456番は鉄格子側に居たため無事だが、吹き飛んだ子供達は血を流していた。痛いと叫ぶ子や身体が痙攣している子、中にはもう息のない子供もいた。しかし、助けは来ない。大人は今、攻撃からの対応でいっぱいいっぱいだからだ。

 風穴からは外の風景が見えた。隣の戦艦は案の定、攻撃により煙を上げていた。そして、次の瞬間煙の中から一つの光が飛び出して行った。それは炎の塊であった。いや、正確には炎を纏った()であった。

 神とは異能を持った人の進化の一つである。勿論、人間誰もが神になる訳ではない。だいたい100万人に1人の日本人が神になる。そして、神は最初から神な訳ではない。17歳までは他の人間となんの変わりのないただの人間である。しかし、18歳になり成神すると突然背中に痣のような紋様が現れる。それが神となった証だ。そうすると異能を扱うことができるようになる。さらにそれと同時に身体能力や治癒能力などが一般人の約10倍になる。つまり、神とは大きな力を持った人のことである。

 その炎を纏った神は上空で止まり右手を広げて上に挙げた。すると、その手からは炎の渦が吹き上げた。その渦は戦艦を目掛けて撃たれた幾つもの飛行物体を灰も残さず燃やし尽くした。飛行物体が飛んで来なくなると、渦は火の粉を散らして消えた。そして、炎を纏った神は戦艦に空いた風穴目掛けて飛んできて中へ入ってきた。


「負傷者は何人いる?死者は?」


 神の第一声は負傷者の確認だった。神は中に入ってくる際に纏っていた炎を解いていた。炎で見えなかったその見た目は身長150センチ台後半の黒髪で、大人というよりは少年に近いような見た目であった。彼はキョロキョロと中の様子を確認していた。そして、456番を見るなり驚いたような顔をした。


「お前、なんでここに居るんだ?」


 恐らく彼は自分の弟と隣の戦艦で会ったのであろうと思い456番は言葉を返した。


「初めまして、僕は第72世代管理番号456番です。驚いているようですが、あなたが想像した人物は僕の双子の弟である管理番号123番でしょう。」

「そうか、あいつではないのか。それもそうか、あいつはさっきの爆撃で俺の目の前で死んだからな」

「そうですか」

「そうですかって…。お前、悲しくないのか?血の繋がった弟なんだろ?」

「実の弟ではありますが、家庭の事情で数回しかあった事がないんですよ。しかも、その時間もたかが数分程度ですし、言葉も交わしたことはありません。そして、それだけで悲しいと思える程他人に感情移入できるような感性は持ち合わせていないので」


 気まずかったのか、456番の回答に神は何も反応しなかった。そして、何も無かったかのように再び負傷者を数え始めた。神は数を数え終わると再度炎を纏って穴から飛んで行った。

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