知らない声
その夜、
リアナはぐっすり眠れるだろうと思った。
迷子の羊を連れて村に戻ってきたのだ。
父親は安堵の表情で礼を言った。
母親は無事なリアナを見て微笑んだ。
全てが普通だった。
あまりにも普通だった。
彼女は早く寝床についた。
その日の疲れが重くのしかかっていた。
木の屋根。
いつもの毛布。
彼女は目を閉じた。
そして――
彼女は夢を見た。
それは普通の夢ではなかった。
鮮明なイメージはなかった。
明確な場所もなかった。
ただ暗闇だけがあった。
そして声が聞こえた。
……
リアナは動こうとした。
彼女には体がなかった。
彼女は話そうとした。
彼女には言葉がなかった。
――……起きて……
どこからともなく、柔らかく低い声が響いた。
――…まだ早すぎる…
別の声が答えた。
それは違っていた。
紛れもなく違っていた。
――…脆い…
――…しかし、適切だった…
声が重なり合った。
彼らは言い争っていたのではない。
彼らは反対していたのではない。
彼らは観察していた。
――…誰…?
リアナは質問をまとめようとした。
彼女はそれを考えているのか、それとも実際に口に出したのか分からなかった。
――怖がらないで…
奇妙な感覚が胸の奥から広がった。
それは恐怖ではなかった。
痛みでもなかった。
まるで誰かが
彼女を内側から見つめているようだった。
――…覚えておいて…
柔らかな温かさが彼女を包み込んだ。
それは燃えるような感じではなかった。
それは重さを感じなかった。
しかし、それはそこにあった。
――…まだ…
――…その時が来たら…
声は次第に遠ざかっていった。
まるで波の音がゆっくりと海から引いていくように。
そして――
リアナはハッとして目を覚ました。
彼女は背筋を伸ばし、息を荒くして座っていた。
部屋は静まり返っていた。
月光が窓から差し込んでいた。
「あれは…夢だった…」
彼女は胸に手を当てた。
心臓が激しく鼓動した。
しかし、恐怖は感じなかった。
悪夢の痕跡は残っていなかった。
ただ、説明の難しい不快感だけが残っていた。
まるで――
彼女はもう一人ではないかのように。
リアナは再び横になった。
彼女はそっと目を閉じた。
「ただの気のせい…」
彼女は小さく呟いた。
「疲れた…」
しかし、彼女はまだそれを知らなかった。
あの声は…夢ではなかった。
それは――
記憶。
そしてまた――
ゆっくりと近づいてくる未来。
もうすぐ、
彼らは彼女の名前を呼び始めるだろう。




