私の瞳が、人間であることをやめた瞬間
その日の午後、広場は笑い声で満ちていた。
リアナはダリエルとミラの隣に座り、何百回も聞いたことのある会話に耳を傾けていた。
「去年の祭りのパンの方が美味しかったわ」ミラは腕を組んで言った。
「食べ過ぎたからでしょ」ダリエルは笑いながら答えた。
リアナは微笑んだ。
少なくとも、微笑もうとした。
何か異様な雰囲気が漂っていた。
危険ではない。
脅威でもない。
でも、穏やかでもない。
まるで大地が張り詰めているようだった。
その時――
「牛だ!」
叫び声が広場を切り裂いた。
リアナは顔を上げた。
道の向こう側で、大きな雄牛が縄を破っていた。
雄牛は激しく鼻を鳴らしていた。
雄牛の目は充血していた。
人々は後ずさりした。
誰かが転んだ。
「気をつけろ!」
獣は頭を下げた。
そして突進した。
世界は再び動きを止めた。
またか…
リアナは考える間もなく、その圧力を感じた。
「止まれ…」
彼女は逃げなかった。
叫ばなかった。
手を上げなかった。
ただ彼を見つめた。
そして世界が反応した。
光はなかった。
音もなかった。
ただ、獣に降りかかる目に見えない圧力だけがあった。
雄牛はぴたりと立ち止まった。
脚が震えた。
喉からくぐもったうめき声が漏れた。
そして膝をついた。
まるで、無限に偉大な意志が従えと命じたかのようだった。
静寂。
誰も動かなかった。
ダリエルは一歩後ずさりした。
「リアナ…」
リアナは何も言わなかった。
ただ見つめていた。
恐怖に駆られて。
リアナは瞬きをした。
圧迫感が消えた。
雄牛は横に倒れ、激しく息をした。
音が再び飛び出した。
叫び声。
疑問の声。
混乱。
「あれは何だったんだ?」
「ひとりでに止まった!」
「見たの?!」
リアナは一歩後ずさりした。
そしてもう一歩。
胸が焼けるように痛んだ。
手が震えた。
「私…私…」
何も言えなかった。
彼女は振り返った。
そして走った。
振り返らなかった。
家への一歩一歩が重かった。
(事故じゃなかった…)
(運じゃなかった…)
彼女は寝室のドアを閉め、ドアにもたれた。
彼女は息を吸った。
一度。
二度。
「これは…普通じゃない…」
そして…
「あなたは狂ってなんかいないわ。」
声は明瞭だった。
あまりにも明瞭だった。
ただ一人の声ではなかった。
リアナはゆっくりと視線を上げた。
……きっと戻ってくるだろうと分かっていた…
部屋は変わっていなかった。
しかし、彼女は変わっていた。
何かが彼女を取り囲んでいた。
外からではない。
内から。
「もう隠れることはできない。」
「私たちの体は、私たちを映し始めている。」
リアナは胸を押さえた。
「…誰…なの?」
すぐには答えはなかった。
ただ、ある存在。
太古の重み。
否定できない確信。
彼女の足は崩れ、床に倒れ込んだ。
「…私はただ…したかっただけ…」
彼女の声は途切れた。
「…普通の人生…」
静寂は絶対的だった。
そして…
「だから。」
意志が語りかけた。
「だからこそ、あなたは選ばれたのよ。」
リアナは目をぎゅっと閉じた。
そして、彼女は、自分の目が…
もはや自分だけのものではないことに気づいた。
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