第7話:「世紀末の拳法家」に憑依して、ビジネスものを書いて再び立ち上がった件
心の底まで冷え切った翌日、ユウキは戦場に旅立つことにした。
熱い気持ちと、愛を取り戻すために、
スキルを発動。
光が明滅し、砂埃が舞った。
=====
吹雪く荒野。
文明の残骸が、骨のように突き出た地平線。
一週間の行軍を経て、ナカハラはついに"地の果て"に辿り着いた。
人はそれを、かつて「ドイツ」と呼んだという。
そこにあったのは、技術交流会議――とは名ばかりの戦場だった。
男たちは言葉で殴り合う。
拳よりも鋭い理屈で、魂を削り合う。
ナカハラは三年かけた技術を携えて臨んだ。
だが。
「その程度か。我々には不要だ」
冷笑。
侮蔑。
一瞬で切り捨てられた。
ナカハラは何も言えなかった。
拳を握りしめることしか、できなかった。
「クソ……ッ!」
血が滲んだ。
握りしめた拳から、爪が食い込み、赤い雫が雪に落ちた。
俺は、何もできなかった――。
夜。
朽ちた宿。
焔の消えた暖炉。
その横に、古びた書物が落ちていた。
日本語の文字。
表紙には、血痕のような染み。
誰かの、戦いの痕。
震える手で、ページを開く。
巻末には、刻まれた筆跡。
『世界で戦う戦士へ。
今日は敗れた日だろう。
だが、明日は拳を上げる日だ。
倒れたまま終わる者に、漢の誇りはない』
ナカハラの眼が、光った。
「……誰かも、この地で戦ったのか」
血が沸く。
魂が燃える。
拳に、力が戻る。
違う。
俺は、まだ倒れていない。
敗北は、拳を下ろした時だ。
戦いは、これからだッ!
ナカハラは立ち上がった。
そして、天に向かって拳を突き上げた。
「俺は、まだ倒れていないッ!!!」
咆哮が雪原を割る。
吹雪が、まるで応えるように渦を巻いた。
その拳は、誰に見せるでもなく、ただ天を突く。
漢は、倒れるまで戦う。
倒れても、また立ち上がる。
それが、生きるということだ。
風が唸り、遠雷が空を裂いた。
ナカハラの影が、雪原に長く伸びた。
戦いは、終わっていない。
=====
スキル終了。3分経過。
ユウキは忘れていた闘志を思い出した。
「俺も、まだ倒れていないッ!!!」
そして、再び立ち上がった。
※次回:「忘れっぽい探偵」に憑依して、動物ものを書いたら涙が止まらなかった件
※この作品は、転生×文体模写をテーマにした実験的ファンタジーです。
来週からは毎週金曜19:50頃に更新します。
感想・レビュー・いいねで応援してもらえると、ユウキのMPが回復します!
超硬派な「外資系ビジネス小説」も連載中です。 作者マイページ(↑作者名をクリック!)から、 もう一つの本命『ガイシ ー 夜の展示会からはじまる外資サバイバル』もぜひ!
(または「『ガイシ』で検索!)




