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クズスキルで作家に憑依したら、文体コピーで無双した件  作者: 原崎 令一


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7/14

第7話:「世紀末の拳法家」に憑依して、ビジネスものを書いて再び立ち上がった件

 心の底まで冷え切った翌日、ユウキは戦場に旅立つことにした。

 熱い気持ちと、愛を取り戻すために、


 スキルを発動。


 光が明滅し、砂埃が舞った。


=====


 吹雪く荒野。

 文明の残骸が、骨のように突き出た地平線。


 一週間の行軍を経て、ナカハラはついに"地の果て"に辿り着いた。

 人はそれを、かつて「ドイツ」と呼んだという。


 そこにあったのは、技術交流会議――とは名ばかりの戦場だった。

 男たちは言葉で殴り合う。

 拳よりも鋭い理屈で、魂を削り合う。

 ナカハラは三年かけた技術を携えて臨んだ。

 だが。


 「その程度か。我々には不要だ」


 冷笑。

 侮蔑。

 一瞬で切り捨てられた。

 ナカハラは何も言えなかった。

 拳を握りしめることしか、できなかった。


 「クソ……ッ!」


 血が滲んだ。

 握りしめた拳から、爪が食い込み、赤い雫が雪に落ちた。

 俺は、何もできなかった――。


 夜。

 朽ちた宿。

 焔の消えた暖炉。

 その横に、古びた書物が落ちていた。

 日本語の文字。

 表紙には、血痕のような染み。

 誰かの、戦いの痕。

 震える手で、ページを開く。

 巻末には、刻まれた筆跡。


 『世界で戦う戦士へ。

 今日は敗れた日だろう。

 だが、明日は拳を上げる日だ。

 倒れたまま終わる者に、漢の誇りはない』


 ナカハラの眼が、光った。


 「……誰かも、この地で戦ったのか」


 血が沸く。

 魂が燃える。

 拳に、力が戻る。

 違う。

 俺は、まだ倒れていない。

 敗北は、拳を下ろした時だ。

 戦いは、これからだッ!

 ナカハラは立ち上がった。

 そして、天に向かって拳を突き上げた。


 「俺は、まだ倒れていないッ!!!」


 咆哮が雪原を割る。

 吹雪が、まるで応えるように渦を巻いた。

 その拳は、誰に見せるでもなく、ただ天を突く。

 漢は、倒れるまで戦う。

 倒れても、また立ち上がる。

 それが、生きるということだ。


 風が唸り、遠雷が空を裂いた。

 ナカハラの影が、雪原に長く伸びた。

 戦いは、終わっていない。


=====


 スキル終了。3分経過。


 ユウキは忘れていた闘志を思い出した。


 「俺も、まだ倒れていないッ!!!」


 そして、再び立ち上がった。


※次回:「忘れっぽい探偵」に憑依して、動物ものを書いたら涙が止まらなかった件


※この作品は、転生×文体模写をテーマにした実験的ファンタジーです。

来週からは毎週金曜19:50頃に更新します。

感想・レビュー・いいねで応援してもらえると、ユウキのMPが回復します!


超硬派な「外資系ビジネス小説」も連載中です。 作者マイページ(↑作者名をクリック!)から、 もう一つの本命『ガイシ ー 夜の展示会からはじまる外資サバイバル』もぜひ!

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