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クズスキルで作家に憑依したら、文体コピーで無双した件  作者: 原崎 令一


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4/14

第4話: 「黒っぽい家の作家」に憑依して、プレゼントがホラーになった件

 「次は、もっと明るいストーリーを書こう」


 探究心の高まったユウキはスキルを発動した。


 ――しかし。


 スキルを発動した瞬間、空気が冷えた。


 時間の進み方が遅い。


 光が、色を失っていく。


 「……え?」


=====


 娘がいた。


 小柄な娘の姿が、異様なまでに巨大な荷物に半ば吞み込まれていた。

 日暮里駅の薄暗い階段を、その不均衡な影が降りてくる。


 一日遅れた父の誕生日プレゼント……

 それは遅延という過失を帳消しにしようとでもいうように、グロテスクなまでの存在感を放っている。


 人の波が割れ、風が止まる。

 空気が娘を拒む。


 「今日使いたいでしょ。ねえ、もう使いたいよね」


 中身を明かさぬまま、執拗に迫ってくる。


 父は微笑んだ。

 唇が震えたのは、寒さのせいか、あるいは……


 「……いい誕生日だったな。」


 声は自分のものではなかった。

 乾いた、誰かの声。

 次の瞬間、娘の影が床に溶けた。


=====


 スキル終了。3分経過。


  世界が音を取り戻す。


  ユウキは畳の上で目を開けた。


  窓の外で、風鈴が鳴っていた。

 メモ帳には震える文字でこう書かれていた。


 『恐怖とは、抑制の効いた静謐で、緻密な描写から生まれる』


 ユウキは笑うでもなく、静かにページを閉じた。


 ユウキは深呼吸をした。

 次は、もっと明るいものを書こう。

 熱くて、前向きで、力がみなぎるような――


 「……次は、誰に憑こうか」


 パソコンの画面が点滅した。

 新しいメッセージが届いている。


 『恐怖の描写、見事でした。

  "感情の侵食"が始まっていますね。

  興味深い実験です。

  ――カイザー』


 ユウキは眉をひそめた。

 「実験……?」


 言葉の選び方が、少し引っかかった。

 だが、それ以上考える気力もなかった。


 ユウキは画面を閉じて、次の準備を始めた。


※次回:「下町でロケットを飛ばす人」に憑依して、ビジネスものを書いたら力がみなぎってきた件

ホラー回は、いかがでしたか?


第2話:温かい誕生日(池井戸潤先生風)

第3話:ツッコミ満載の誕生日(西尾維新先生風)

第4話:恐怖の誕生日(貴志祐介先生風)


是非、お楽しみください。


毎週水・木・金 12:10更新予定。

感想・レビュー・いいねで応援してもらえると、ユウキのMPが回復します!


超硬派な「外資系ビジネス小説」も連載中です。

作者マイページ(↑作者名をクリック!)から、 もう一つの本命『ガイシ ー 夜の展示会からはじまる外資サバイバル』も是非!

(または「『ガイシ』で検索!)

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