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クズスキルで作家に憑依したら、文体コピーで無双した件  作者: 原崎 令一


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2/14

第2話:「2倍返す男」に憑依して、父娘の誕生日シーンを書いたら大反響になった件

この作品のコンセプトは「文体模倣」です。


同じシーンを、異なる文体で描くと

まるで別の物語になる——


それを体験していただくため、

第2-3話は「父娘の誕生日」を

2つの文体で描きます。


まずはビジネス小説の巨匠「2倍返す男」の文体で。

 瞬間、彼は見知らぬ父親の体にいた。

 ――どうやら、この男、国分寺駅前で誰かを待っているらしい。


 国分寺駅の階段を、小柄な娘が大きな荷物を抱えて降りてくる。

 体が半分隠れるほどの大きさだ。


 休日の人混みの中、その姿だけがやけにまっすぐ見えた。

 一日遅れの父の誕生日に、それを渡そうと決めていたらしい。


 父の胸に、何か温かいものがこみ上げる。

 ―― “2倍返す男”の筆致が、自然と指先に流れ込む。


 荷物の存在感で、遅れた分を取り戻そうという気合が伝わってくる。


 後席に苦労して押し込みながら、娘が言った。


 「今日使いたいでしょ?ねえ、もう使いたいよね」


 得意げな笑顔だった。


 目頭が熱くなった。


 「ありがとう」


 それしか、言葉が出なかった。

 遅れて届いた誕生日プレゼント。

 大きすぎて、どうしようもなく愛しかった。


 「いやあ、いい誕生日だったな」


 父は笑った。

 よし。明日から、また頑張ろう。

 娘のためにも、負けるわけにはいかない。


 車を走らせながら、父は拳を握りしめた。

 ハンドルの奥で、静かに誓うように。


=====


 スキル終了。3分経過。


 ユウキは自分の部屋で目を覚ました。

 手にはメモ帳。そこに残っていたのは、震える字で書かれた数行の文章だけだった。


 うーん、さすがだ。

 短文の連打のリズムを生かしながら、しっかり温もりを感じさせる。


 ユウキはしばらく、その言葉を見つめていた。

 静かだが、前向きな強い意志を感じた。

 畳の上の夕陽だけが、まるで物語の余韻みたいに伸びていった。


 投稿ボタンを押して、30分後。

 通知音が鳴った。


 『あなたの作品にブックマークがつきました(+5)』


 ユウキは息を呑んだ。

 異世界で、俺の書いた文章が――届いてる。


 コメント欄を開く。

 『泣いた』『父を思い出した』『次も期待』


 その中に、一つだけ短いコメント。


 『興味深い。続けてください。――K』


 「K? イニシャルかな」


 ユウキは気にせず画面を閉じた。


 「よし……もっと書こう」


※次回:「お化けの物語」作家に憑依したら、語尾が全部ツッコミになった件

第1-2話、読んでいただきありがとうございます。


今回はビジネス小説の巨匠、池井戸潤先生の文体を意識して書きました。


『下町ロケット』『半沢直樹』などの

熱いビジネス小説への、オマージュとリスペクトを込めています。


この作品は「文体模倣」がテーマです。


このストーリーを「あの人」の文体で書いたらどうなるんだろう?

そんな作者の悪ふざけからはじまった

転生(悪ふざけ)憑依物語です!


次回は「お化けの物語」の作家に憑依。

語尾が全部ツッコミになります。


更新は毎週水木金の12:10です。

感想・レビュー・いいねで応援してもらえると、ユウキのMPが回復します!


次回もお楽しみに。

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