第11話:「冷たい校舎の人」に憑依したら、回想が止まらなくなった件(後編)
──ユウキの意識はまだ“冷たい校舎の人”の中にあった……
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その後、ひかげは少しずつ静かになっていった。
探すのをやめたわけじゃない。
ただ、待つことにしたんだと思う。
私もまた、待っていた。
何を待っているのか、自分でもわからなかった。
でも、何かが終わっていないような気がしていた。
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そして今朝。
私が目を覚ましたとき、窓辺のクッションに、不思議なものを見た。
二つの丸い跡が、寄り添っていた。
ひかげは、もういなかった。
でも、その跡は確かに二つあった。
一つは、ひかげのもの。
もう一つは——。
母は「きっと、ひなたが迎えに来たのよ」と言った。
私は頷いた。
本当にそうなのかはわからない。
でも、あの朝の光の差し方は、確かにいつもと違っていた。
まるで、誰かがそこにいたみたいに、温かかった。
春になったら、あのクッションを洗おうと思う。
でも今は、まだそのままにしておきたい。
…… 二匹がいた証拠を、もう少しだけ。
窓の外では、雪が静かに溶け始めていた。
=====
スキル終了。3分経過。
ユウキは回想していた。
不思議だけど、たしかにそこにいた。
ふと、時計を見る。
――え、5分経ってる?
いや、秒針を見間違えたのかもしれない。
スキルは3分のはずだ。
頭の中で、ミカエルの声が微かに響いた気がした。
『ユウキよ……』
でも、それ以上は聞こえなかった。
ユウキも窓の外を見た。
季節が春であることに、初めて気づいたような気がした。
※この作品は、転生×文体模写をテーマにした実験的ファンタジーです。
毎週金曜19:50頃から2から4話を順次更新します。
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