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クズスキルで作家に憑依したら、文体コピーで無双した件  作者: 原崎 令一


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10/14

第10話:「冷たい校舎の人」に憑依したら、回想が止まらなくなった件(前編)

 前日、ひかげが生きていることで安心したユウキは、その続きがどうしても書きたくなった。


 「スキル発動」


 冷たい光の中で、時が止まる。


=====


1

 最初に気づいたのは、母だった。


 「ひまわり、ひかげまた窓際にいるの」


 そう言いながら、母は少し困ったような顔をした。


 私は制服のブレザーを脱ぎながら、窓辺のひかげを見た。

 高校二年の冬。私は毎日、部活を終えて五時半に帰宅する。

 その時間、ひかげはいつも、窓の外を見つめていた。


 窓の外には雪が積もっていて、世界がいつもより静かだった。

 ひかげはもう、ほとんど動かなくなっていた。

 けれど、その目だけは、まだ何かを探しているみたいに、どこか遠くを見つめていた。


 ……あの子は、今、どこにいるんだろう。


2

 私が小学六年生の頃、ひなたとひかげが家に来た。

 段ボールの中で、二匹は身を寄せ合っていた。


 「こっちが、ひなた。こっちが、ひかげね」


 父がそう言って笑った。

 

 ひなたは好奇心旺盛で、すぐに部屋中を探検し始めた。

 ひかげは段ボールから出ようとしなかった。

 でも、ひなたが戻ってくると、安心したように身体を丸めた。

 あの時から、ひかげはいつもひなたを追いかけていた。


3

 ひなたがいなくなったのは、去年の秋だった。


 最初の一週間、ひかげは家中を探し回った。

 クローゼットの奥も、ベッドの下も、窓の向こうも。

 そして、ある夜。

 廊下で、ひかげが鳴いた。


 「にゃおーーーーん」


 それは、今まで聞いたことのない声だった。

 母が「ひかげが、呼んでる」と言った。

 私は何も言えなかった。

 なぜなら、その声は——呼んでいるというより、答えを求めているように聞こえたから。

 「ひなたは、どこ?」

 そう問いかけているように。


(——つづく)

※この作品は、転生×文体模写をテーマにした実験的ファンタジーです。


毎週金曜19:50頃から2から4話を順次更新します。


感想・レビュー・いいねで応援してもらえると、ユウキのMPが回復します!

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