第7話《1日目》その7
「ヤマさん、こんちはー!」
入り口の自動ドアが開くと同時に聞こえて来たのは毎日聞いてる親友の声だった。
「おう遥斗いらっしゃい! 座敷に居るぞ!」
「んじゃとりあえずコーラ! ジョッキで!!」
「お待たせ麻倉っ、……って嶺井っ??」
「お疲れ、相沢!」
俺の顔を見て後ずさりする程驚いていた。まぁそーだろう。白河以外の女子と一緒の俺なんて想像出来ないだろうし、しかも相手が俺の個人情報を流出している先の本人だもんな。
「あ、相沢くん! 部活お疲れ様。お腹空いてるでしょ? 丁度良かった、もうすぐ出来るから座って座って!!」
相沢が来るからと言って自分が座っていた場所を移動して俺の隣でせっせとお好みを焼いていた。
「あ、えーと……、まぁとりあえずカンパーイ!」
相沢は戸惑った様子だったがいつもの爽やかな笑顔でジョッキを掲げた。
「お疲れ様ー♪」
「お疲れー」
俺達は二杯目のウーロン茶をちょこんと相沢のジョッキに当てた。
「あはははっ、もうツッコミ所満載で何から話して良いのかわかんねーよ!
まずは麻倉っ!! やったなオイッ、念願叶ったじゃねーか! まさか先週一緒に来た店に本命と来てるなんて思わなかったぞ!」
「えへへっ、やってやりましたよ相沢くん! これも日頃の情報提供のお陰です。感謝を込めて今日は奢りです。熱々を召し上がって下さい♪」
「お前ウッキウキだなー! それじゃ遠慮なくいただきまーす!」
相沢は出来たばかりのお好み焼きを腹を減らしたライオンの様な勢いで食べ出した。
「あっ、あっ、熱っっ!! ウマッ!!」
「あははっ、そんなに慌てて食べたら火傷するからっ! おかわりしていーからゆっくり食べなよ!」
……なんか俺と接してる時の未来乃とは違う空気感だな。やけに親しいと言うか……、まぁ入学してからずっと仲良くしてるヤツと今日知り合ったばかりのヤツとの差があるのは当たり前だよな。
すると未来乃が、
「あっ、相沢くん、私の事はとりあえずおいといて、莉人くんが私達にちょっと妬いてそうなので早速本題に入りましょう!」
「妬いてねーって! 誤解されるだろっ!?」
相沢は向かい側に座っている俺達二人を興味津々な顔をして交互に見て、
「お前ら、付き合っ……
「ってないからっ!!」
「はいっっ!!」
「未来乃っ、お前っ!!」
「もうこの並びで相沢くんの前に座ってるって事は、交際を親に認めてもらうあの感じそのまんまです♪」
……お前だからわざと隣にっっ!!
「どさくさに紛れて手を握るなっ!」
「ちょっとだけ、先っぽだけ……」
「だけら下ネタやめろっっ!!」
「あはははっ、おいおいっ、いきなり見せつけてくれるじゃねーか? しかもお互い名前呼びだし! 何だもうこんなに打ち解けてんのか?」
「はいっ、もうこんなに仲良しです! それもこれも相沢くんのお陰です♪ それじゃ莉人くん、本題お願いします!」
「ん、何? コレが本題じゃないのか?」
唐突に振られてしまった。俺は崩していた足を正座に切り替え背筋を伸ばした。雰囲気が変わったのを察して相沢も箸を置いた。
「相沢、……先ずはお礼を言わせてくれ。今まで色々愚痴を聞いてくれたり相談に乗ってくれてありがとう」
「なっ、何をかしこまって? 気持ち悪ぃな?」
相沢はいきなりの頭下げに戸惑っていたが、お構いなしに続けた。
「俺、ずっと前からこのまま白河に固執し続けるのは駄目だって分かってた。分かってたけどやっぱり好きだし失いたく無いし、でも白河を困らせたくない。
このままじゃ誰も幸せになれないし傷つけるのは嫌だから自分の気持ちにケリをつけようと思ったんだ」
相沢は黙って頷き、真剣な顔で俺を見ていた。
「それで今日の放課後、白河を呼び出して最後の告白をしたんだ。まぁ結果は最初から分かってたからそれについてはショックは無いし、むしろちゃんと自分の手で幕を閉じる事が出来たからスッキリしたんだ。
だから俺、コレで綺麗さっぱり白河の事は諦めたよ! その事は今まで話を聞き続けてくれた相沢にはちゃんと伝えたいと思って今日呼んだんだ。
改めて今までありがとう!!」
そう言ってもう一度深々と頭を下げた。
……暫く沈黙が続いたが、相沢が口を開いた。
「……そっか、頑張ったな嶺井。辛かっただろ?」
「あぁ、白河が見えなくなったら全身の力が抜けて泣きわめいたからな」
「それで、……本当に吹っ切れたのか?」
「あぁ、自分でも信じられない位吹っ切れたんだ。それもこれもここに居る未来乃のおかげなんだけどな」
そう言って俺は隣に座ってニヤニヤしている未来乃の肩をポンと叩いた。
「ん、……どーゆー事?」
「えへへ、……実はね」
すると俺に代わって未来乃が喋り出した。喋りたくてウズウズしてたもんな。
未来乃は俺の後をつけて最後の告白をしてる所を一部始終見ていた事、その後、泣きわめく俺の前でいきなり告白した事、断られたけど友達なら良いと言われた事で、次の目標は友達以上恋人未満を目指してる事などを、まるで遠足から帰った子供が親に話す様な勢いで、身振り手振りを交えて話していた。
「そっかそっか! あははは! やっぱ麻倉って『おもしれー女』だよな! それで今じゃ下ネタも言える程仲良くなったんだ。念願叶って本当良かったな!」
相沢は話を聞きながら腹を抱えて笑っていた。
「相沢くん、『おもしれー女』は恋愛フラグですからね。私に惚れても駄目ですよ。だってもう私には……」
「そんな事言ってどさくさに紛れて腕を組むなっ! 離れろオイッ!!」
腕を組んだまま必死に食い下がる未来乃の柔らかい胸が俺の腕に当たり形を変えている。ちょっとだけ嬉しいが絶対顔には出せない! そんな所を見られたらこの先どーなるか分かったモンじゃない。
「お前らホント仲いーな? さっき知り合ったばかりとは思えない距離の詰め方してるぞ?」
「えへへ、それもこれも全部相沢くんのおかげです。私も改めてお礼を言わせて下さい、相沢くん、今までありがとうございました。これからも色々と相談に乗ってくれると嬉しいです!」
深々と頭を下げる未来乃を見てまたもや爆笑する相沢。
「ウケる! お前ら似たモン同士じゃん! もう付き合っちゃえよ!」
「何言っ……
「はいっ! 付き合っちゃいます!」
ニヤニヤしながら二人で俺を見ている。もう何を言っても駄目そうだ。




