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第4話《1日目》その4 


 「それじゃ手始めにこれから私の事は『未来乃みらの』って呼んで下さい。『さん』でも『ちゃん』でもそこら辺はお任せします」

 「ちょっと待て! 白河でさえ名前で呼んだ事無いのにそれはハードルが高いよ!」


 「それなら尚更です! 私、器のちっちゃい女なんです。白河さんに少しだけでもいいんでマウント取りたいんです。私もこれから嶺井くんの事『莉人りひとくん』って呼ばせて貰いますね、だって私達『友達』になったんですから!」

 「イヤイヤイヤ、俺、相沢の事だって名字で呼んでるし、殆どのヤツも名前で呼んで無いぞ? それに俺の事もみんな『嶺井』だし」


 「んー、でも名前で呼んだ方が親近感も湧くし特別な感じがして良いですよね、『友達』なんだから!」



 クソッ、やけに『友達』を強調して来るな。



 「さぁ、莉人くん! 私を呼んで下さい!」

 「……っ!!  ……未来乃……さん」


 「えっ、……聞こえないです莉人くん!!」

 「あーもぅっ!! 『未来乃』っ!!」



 「……っ!! ……呼び捨てって、親にもされた事ないからなんだかキュンとしました! ありがとうございます!」

 「ちょっと待て! 他の友達は君の事なんて呼んでるんだ?」



 彼女は人差し指を顎に当て考えこんだ後、ニヤリと笑って、



 「そーいえば男子はみんな私の事『麻倉』呼びしてましたね! でも莉人くんはこれからも私の事呼び捨てして下さいね!」

 「……っ! なんかハメられたた気分だ!」


 「ふふっ、私、生まれて来て今日が一番幸せかもしれないです。夢って、願っていれば叶うんですね!」


 未来乃は目を閉じ両手を胸に当てて喜びを噛み締めている様だった。



 「大袈裟だなぁ、まだ俺達友達になったばかりなんだぞ?」

 「()()って事は! これからの発展も期待して良いって事ですよね? はぁ〜幸せ過ぎて今夜眠れそうもありません!」

 「イヤイヤ違うって! そういうつもりで言った訳じゃないからっ! あと、……願ってても叶わない事だってあるから……」


 「あっ……っっ!!」



 あっ、ヤベッ! 言わなくてもいい事言っちゃったよ! みるみる未来乃の顔が曇っていった。



 「莉人くん、……ゴメンなさい。私、あまりにも嬉しくて……、莉人くんの気持ち考えたらこんな浮かれた事言うの不謹慎でしたね、友達として失格です」



 ボロボロと涙をこぼし始めた。ちょっと待ってくれって!!



 「泣くなって!! ゴメンっ! 俺が悪かった!! 未来乃があまりにも嬉しそうだったからつい揶揄いたくなっただけだから! 意地悪な事言ってすまなかった!!」

 「でもでも、気付いてしまったんです! 莉人くんが辛い思いしてる所に私っ、チャンスとばかりにズカズカと土足で入り込んでしまってたんですね、最低です」


 「未来乃は悪くないよ! 白河の事はフラれるの分かってたし、自分の気持ちに区切りをつけたくてやった事だから気にする事ないって!」

 「だけどあんなに泣いてたじゃないですか! それなのに私と来たら……自己嫌悪でどうにかなりそうです」



 遂には膝を抱えてうずくまってしまった。

 俺は咄嗟に後ろから未来乃の肩を抱き、



 「そりゃ泣くよ! ずっと好きだったんだから!  だけど未来乃のおかげで思ったより凹んで無いし、今、俺凄い前向きな気持ちなんだ! だから未来乃が傷つく事ないって!」

 「……ホントですか? でも、これだけは言わせて下さい。

 私、ずっと莉人くんが白河さんの事諦めて欲しいって願ってました。自分の欲の為に好きな人の幸せを願う事が出来ませんでした。本当にごめんなさい。

 これからは私、莉人くんが幸せになれる様願って生きていきます」



 未来乃は振り返ってそのまま土下座の様な形で深々と頭を下げた。



 「そんなの誰だってそうだよ! それを認めて正直に頭を下げれる未来乃は凄いよ! とてもじゃ無いけど真似出来ない。だからこれ以上自分の事責めるのはやめてくれよ」

 「……はぃ。こんな私に優しい言葉をかけて頂きありがとうございます」



 ようやく頭を上げた未来乃は涙で顔がぐしゃぐしゃだった。



 「もう泣くなって! それに俺の幸せなんか願わなくてもいーから! 幸せってのはさ、自分で掴むもんだろ? 未来乃は自分で道を切り開いたんだし、俺も自分の幸せの為に、新しい一歩を踏み出したいからこそ白河に告白したんだ。それでいーじゃ無いか! 何か問題でもあるのか?」



 未来乃はカバンからまたもやフェイスタオルを取り出して顔を覆った。どんだけ持って来てんだ?



 「なぃ、……です」



 「それならもうこの話は終わりだ! 

 んー、なんかさ、お互いいっぱい泣いたし腹減らないか? 何か食いに行こうぜ、友達なんだからさ、未来乃!」

 「莉人くんそれ『おーいイソノー、野球行こうぜ!』みたいなノリですね? なんか凄い友達っぽいです!」

 「『イソノ』が誰だかわかんないけどまぁそんな感じだ! ほらっ、立てよ!」



 俺はしゃがんだままの未来乃の両手を掴み持ち上げた。良かった、もう泣き止んだみたいだ。すると、



 「えいっ♪」

 「……っ! ちょっ、お前っ!?」



 持ち上げた反動を利用して未来乃が俺の胸に飛び込んで来た! よろけて倒れそうになり思わず未来乃を抱きしめてしまった。



 「幸せ、……自分で掴んじゃいました。ちょっとだけこのままでお願いしますね『友達』なんだから♪」



 「うっっ!!」



 柔らかい感触が俺の体を刺激する。女の子の……ってこんなにも柔らかかったんだ。



 「おい、……そろそろ」

 「もうちょっとだけ、……『友達』だから」


 

 そう言って更に体を押し付けて来た! 

 コイツ『友達』って言えばなんでもオッケーだと思ってるだろ? てか、……そろそろ俺の下半身がヤバいんだが!



 「もう終わりだっ、これ以上は『友達』じゃないから!」



 俺は自分の理性が弾け飛ぶ前になんとか未来乃を引き離す事に成功した。あー危なかった。



 「ありがとうございます。友達成分充電させて頂きました。これで明日からも頑張れそうです!」



 「もーいーから、行くぞっ!」

 「はいっ、莉人くんっ!」




 ……ん? なんで未来乃は手を出してんだ?



 「はいっ、『友達』なら手をつな……」

 「つながないからっ! お前『友達』って言えば何でも許されるって思ってるだろ?」


 「へへっ、……『放課後帰り道手つなぎ作戦』失敗です。流石に騙されませんでしたね、莉人くん♪」



 ……すっかり未来乃のペースに巻き込まれてるけど、これから俺、大丈夫なのか?


 


 

 

 


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