第33話《5日目》最終話
「何処へ連れてってくれるのかと期待していたら、ふふっ、本当に莉人くんは体育館裏が好きなんですね」
何故ここに連れて来たのか、おそらくもう未来乃は分かっているだろう。俺はいつものベンチに未来乃を座らせると、未来乃は期待に満ちた目で立ったままの俺を見つめていた。
「未来乃、俺……
「あっ、ちょっと待ってください莉人くん、これからって時に大変言いづらいんですが、
……ここでの告白は縁起が悪いんじゃないですか? だって莉人くん、二戦二敗ですよ、あっ、ついでに私もここで一敗してますけど、それでもいーんですか?」
そうだった! なんで俺はわざわざここを選んでしまったんだ? 最初から公園で告白すれば良かったのに!
「ふふっ、でも私達は体育館裏から始まったんだし、縁起が良くなくても相手がまぁ私なので負けのない勝負ですから、私としては体育館裏を選んでくれて嬉しいです! あっ、だったら言うなって感じですよね? すみません、話の腰を折ってしまいました。
はい、それじゃ続けて下さい、お願いします♪」
そう言って未来乃は姿勢を正し、まるでおやつを貰うために良い子にしてる子犬の様な顔で俺を見ている。
「ちょっと待ってくれ、……なんかもっとこう、いい雰囲気とかお互い気持ちが高ぶってとか、そーゆーのじゃないと照れ臭くてやっぱ無理だ!
それにもう、俺が何を言いたいのか分かってるからそれでいいだろ?」
「なっ、何を言ってるんですか! この暑い中わざわざここまで連れてこられて、私の期待感は既に極限マックス状態ですよ?
それなのにこの仕打ち! 生憎私はドMじゃないのでこんなの全然嬉しくありませんっ! もういーです、今日は帰りますっ、また今度出直して下さいっ!!」
未来乃は立ち上がり、足をドタドタ鳴らしながら校門に向かって歩き出した。あーっ、俺は何をやってんだ!
「まっ、待ってくれ! 流石に今のは俺が悪かった! 最低な事を言ってしまった、本当にゴメン、許してくれ!」
俺は未来乃の手を掴み、必死で引き留めた。未来乃は振り返り、ぷうっと頬っぺたを膨らませて、
「莉人くんがこんな人だとは思いませんでした。
私、気が変わりました。今日はもうちょっとやそっとの事じゃ首を縦に振りません!」
自業自得とは言え、めちゃくちゃハードルを上げてしまったぞ? 一体どーすればいーんだ? ちょっとやそっとって、何をすればいつもの笑顔に戻るんだ?
…………あっ、そうだ! アレかっ!
「未来乃っ、今、俺の好き好きポイントはマックスの五ポイントだ! お前のを合わせて十ポイントだから俺達、自動的に恋人になれるんだよな、なっ?」
「…………」
未来乃はすっと無表情になり、お辞儀をして機械的な口調で……、
「嶺井様、大変申し訳ございませんが、麻倉未来乃の好き好きポイントは現在二ポイントです。残念ですがポイント不足でこれでは恋人にはなれません、他の方法をお探し下さい」
あーーっっ!! くそっ、正解はこれじゃないのかっ?
「莉人くん、まだ好き好きポイントとか言ってるんですか? そんなの私の中ではとっくに終了してますよ。さぁ、どーしてくれるんですか? 策がないのならもう私、帰りますよ!」
もうどーしたらいーのか全っ然分からないぞ?
俺は頭が真っ白になり、気が付いたら掴んだ手を引き寄せ、未来乃を強く抱きしめて……、
「未来乃、好きだ! 正直、自分でも驚く位未来乃の事が気になって仕方ないんだ!
夏休みも、それ以降も、ずっと一緒に居たいと思ってる」
「莉人くん、……………………嬉しい! やっと言ってくれましたね! 私も大好きです!」
未来乃の目から涙が溢れている。えっ、……これが正解だったの?
俺は頬をつたう涙を指で拭いながら、
「未来乃の真っ直ぐな気持ちに俺は惹かれたんだ。最初会った時は変な奴だなと思ったけど、ずっと好きだったって言われて素直に嬉しかった。それに、一緒に居て楽しいし、何よりずっと好きだった白河の事を未来乃の笑顔が忘れさせてくれたんだ!
これからはもっと未来乃の事を知りたいし、俺の事も知ってもらいたい。だから、改めて言うけど、……俺と付き合ってくれないか?」
「はい。……えへへ、こちらこそ宜しくお願いします!」
照れ笑いをしながら俺の胸に飛び込んで来たので、今度は優しく包み込む様に抱きしめた。
「これから二人で、花火を見たり、祭りに行ったり、プールに水族館……、沢山思い出を作って最高の夏休みにしような!」
「はいっ、二人でいっぱい、いっぱい楽しみましょう!」
「もう夏休みだけで俺の五年間、未来乃の四年間なんて吹き飛ばすくらい楽しもうぜ!」
「あぁーっっ、私っ、もう我慢出来ません! 莉人くんっ、好き! 大好きっ!!」
えっ…………っっ!!
そう言って俺の唇に何度も、何度も……!
「俺だって我慢出来ないよっ! 未来乃っ、好きだっ、大好きだっ!!」
暫くの間抱き合ったまま、顔を見合わせては何度も唇を重ね合った。
※
どれくらい時が経ったのかまるで分からない。
俺達はベンチに座り、顔を見合わせて照れながら笑いあった。
「莉人くん、私が怒った後、良く正解に辿り着きましたね!」
「ヤバい、どーすればいいんだ? って思ってたら頭が真っ白になって、気が付いたら抱きしめてたんだ!」
「そーです! それが正解です!」
「まぁ保健室の時で分かってはいたけど、まさかここまでチョロいなんて思わなかったよ!」
「あーっ、そーゆー事言っちゃうんですね? でもそんなチョロ女にたった五日で陥落した莉人くんはどんだけチョロいんだって話ですよ、全く! ふふっ♪」
うぅ〜っ、くそっ! 悔しいけど何も言い返せないっ!!
「この前の保健室でもそうでしたけど、私はチョロいので強く抱きしめて正直に思った事を言ってくれれば良いのです。あっ、でも莉人くん限定ですよ、これが有効なのは♡」
「じゃあ、これから何かあったら抱きしめたら許してくれるんだな、ヨシッ、覚えとこ!」
「それだけじゃ駄目です! これからはキスもしてくれないと許しません!」
「それじゃ、……練習してみようかな?」
肩を抱き寄せると、目を閉じて顎を上げた未来乃の唇にそっと唇を押し当てた。
「…………もう、好きが溢れて大洪水です。どーしてくれるんですか?」
「あははっ、俺も溢れてるからどーにもなんないよ!」
※
「えっ!? ……もうこんな時間っ? 私、そろそろ帰らなきゃ!」
時計の針は既に八時を回っていた。……て事は、俺達二時間近くベンチでイチャイチャしてたのか?
「でも、……帰りたくないな。ずっと一緒に居たいです」
「そんな事言ったら俺だってそうだよ!
でも帰りが遅くなって未来乃の両親に心配かけたら良くないだろ? 変な男と付き合ってるって思われたくないしさ、それじゃ今日は駅じゃなくて家まで送るよ」
「えっ、家までって? いきなり両親に挨拶とかするんですか?」
「イヤイヤ、何言ってんだ! 家の前までだって! まぁ、いずれはちゃんと挨拶に行くけど付き合ってまだ数時間で行ける訳無いだろ?」
「ふふふっ、冗談ですよ! 駅までで充分です。そこから先は今日の余韻に浸って帰りたいので♡」
俺達はゆっくりと立ち上がり手を繋ぎ、指を絡ませ駅まで歩いた。
「あぁ、……もう着いちゃいます。いつも遅刻寸前で遠いなって思いながら走ってたのに、今日ほど学校から駅が短く感じた事はありません」
「あはは、二学期からは駅で待ち合わせして一緒に登校すれば近く感じるかもな!」
未来乃は絡ませた指を離し俺の腕に体を預けて、満面の笑みを浮かべながら、
「私、こんな幸せな日はこの先やって来ないんじゃないかって位、今幸せです。改めて莉人くん、これから宜しくお願いします!」
「何言ってんだ! 今日なんてただの記念日だよ。明日から二人で毎日幸せを更新していくんだ。未来乃っ、こちらこそ宜しくな!」
「あぁ〜っ、もぅ! 莉人くんが私にこんなにも愛のある言葉をかけてくれる日が来るなんて! 明日が待ち遠しくなりました♪」
「あぁ、これから二人で目一杯楽しもうぜ! なんたって夏休みは始まったばかりだからな!」
「あっ、……これってもしや、少年誌のラストによく出て来る例のアレですね! 『俺達の戦いはこれからだ!』ってヤツです! ふふっ、まさに青春です♪」
そう、夏休みはまだ始まったばかりだ! 俺達二人の夏はこれからだ!
〜終わり〜
この作品を見つけてくれて、そして最後まで読んで頂きありがとうございました!
今後のモチベーションにもなりますので感想や評価などして頂けると嬉しいです!
次回作は年末年始の休みにちょこちょこ書いて一月末には載せたいと思ってます。




