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第30話《4日目》その8



 散々俺をネタにして冷やかし捲った挙げ句、ヤマさんはいびきをかいて寝てしまった。本当に酒弱いんだな。そんなヤマさんの頭を撫でながらも真由さんのおちょくりは止まらない。


 「あはははっ、ごめんねぇ〜、多分小ちゃい頃から見てきた莉人くんに彼女が出来て嬉しかったのよ!」

 「だから彼女じゃないですって!」


 「じゃあ今、彼女居ないんだ。それなら、旦那も寝たし、……お姉さんと……する?」

 「な、な、な、何言ってんですかっ? もしそんな事になったら俺っ、ヤマさんに殺されますよ!」



 すると真由さんはお腹を抱えて笑い出した。



 「あはははっ、冗談に決まってんでしょっ! 莉人くんって本当可愛いわー! 私はヤマちゃんだけなんだからっ! 私と恋バナする? って言いたかったのよ♡」



 ……っ!! 冗談だって分かってはいたけどさー、あんな目で見られたらドキドキするって! 



 「で? 莉人くん聞きたい事あるんでしょ? お姉さんが相談に乗ってア・ゲ・ル♡」



 すっと真顔になった後、俺にイヤらしく微笑んだ。あぁでもこの人、全然酒飲んで無いんだよな? 



 「…………じゃあ聞きますけど、例えばずっと好きだった子が居たとするじゃないですか? 

 それでその子にフラれてすぐ、自分の事好き好き言ってくる子にたった二、三日で気持ちが動いて、気がついたら好きになってるって、そんな奴なんか軽く無いですか? 

 今まで好きだった子への気持ちってなんだったんだ? みたいな」



 こんな事聞いたらまた笑われるって思ったら、真由さんはうんうんと頷いて真面目に答えてくれた。



 「それはね、ずっと好きだった気持ちはその時の嘘偽りない気持ちだから消える事は無いし、忘れる必要も無いの。今好きになった子が出来だからって罪悪感を抱くのはおかしな話よ、だってそれはソレ、これはコレなんだからさ。

 今の莉人くんの気持ちを一番大切にしないといけないんじゃない? すぐに好きになるから軽いとか無いのよ、好きになるって一瞬でしょ?」


 

 確かにそうだ。今までの気持ちも大切だけどやっぱり今の気持ちが一番なんだよな。……って例えばの話のつもりだったのにバレバレだったよ。


 

 「だって私もヤマちゃんと初めてデートしたのって、あまりにも熱心に口説いて来るから仕事の延長みたいな感じで割と仕方なくだったのに、不器用だけどちゃんと私に気遣ってくれたり、カッコ悪くても一生懸命な所になんかキュンと来ちゃって、その時私、彼氏が居たのにも関わらず好きになっちゃったんだ。まぁ倦怠期で別れる寸前だったってのもあるんだけどね。

 それですぐに彼氏と別れて私からヤマちゃんに告白したの、ふふっ、男と女なんてそんなモノよ! 臨機応変に行くのは悪い事じゃないわ、だって現に私今、とても幸せだもん♡」



 そう言って寝ているヤマさんを優しい目で見て微笑んだ。



 「だから莉人くんも、ずっと好きだったからとか関係なく今の気持ちに正直になって、あなたの事をちゃんと見てくれている人に誠実に向き合えば後悔しないんじゃないかな?」

 「それは頭では分かってるんだけど……」


 俺の煮え切らない態度が気に食わなかったのか、真由さんは俺に人差し指をピッと立てて強い口調で言った。


 「そんな事言って躊躇してたらその子、私みたいに一瞬で他の男を好きになって、あなたの前から姿を消しちゃうよ? それでもいーの? 『アイツに限ってそんな事ある訳無い』とか無いんだからね! 恋愛ってお互い思い合っても歯車が噛み合わなければ上手くいかないのよ、チャンスは逃しちゃ駄目っ! 分かった?」


 「……はい」

 「声が小さいっ! 分かったっ?」

 「はいっ! 俺、ちゃんとします!」



 真由さんはうんうんと満足そうに頷いて親指を立てた。


 「これだけ言ってもまだモジモジしてたら、バイトの話も無しにしようかと思ったんだからねー!」


 笑いながらまたヤマさんの頭を撫でている。まるで猫をあやすかの様だ。


 

 「それじゃ俺、帰ります。ご飯ご馳走様でした! めっちゃ美味かったです!」

 「ありがと、遅くまで付き合わせてごめんね。それじゃ今度はいい報告まってるわよ! 頑張ってね!」

 「はいっ、それじゃ明後日から宜しくお願いします!



 真由さんは『見送り出来ないからここで』と言って座ったまま手を振っていた。


 ありがとう真由さん、そうだよな、自分の為にも未来乃の為にもちゃんとしなきゃだよな! うん、なんか吹っ切れたかも!





 ※





 「ただいまー」

 「お帰り、ヤマさん所でバイト始めるんだって? 今度母さんも食べに行こうかしら? その時は莉人が作ってね♪」



 家に帰りシャワーを浴び、冷蔵庫から麦茶を持って部屋に戻る。今日は母さん、サブスク見てないんだな。



 さて、と、未来乃にメッセを送るにも意識してしまいなんて送ったらいいのか分からない。

 真由さんに言われて自分の気持ちはもう決まってはいるが、やっぱりこういう事は直接会って言うのが筋だよな。

 とりあえず『バイト決まったよ、明後日から働く事になった』と送ったらすぐに既読がついた。


 だが、暫く経っても返信が無い。



 やっぱりあの時ちゃんと言うべきだったのかな、あんなに真っ直ぐに気持ちを伝えてくれたのに俺はウジウジして……。



 ピロン♪



 未来乃からメッセが来た。


 『明日は十六時にファミレス集合です』


 の後に、


 『さっきはごめんなさい。私、美沙希ちゃんに先越されると思ったら、よく分からないけどなんか焦っちゃって、抑えきれなくなって、莉人くんが困ってるの承知で一方的に気持ちを押し付けちゃいました。


 反省してます。

 

 なので今日の事は忘れて下さい、せっかく築いた今の関係まで壊れてしまうのは嫌です。

 明日までには気持ちを落ち着かせますから今日はこれで、おやすみなさい』





 いつもの様なハートやスタンプなど無い謝罪文が届いた。


 あんな気持ちのこもった告白を忘れられる訳無いだろ? それにあの時はハッキリしない俺が悪いんだからなんで謝るんだよ!

 五年間の思いとか未来乃には関係ないのに、もう自分の気持ちも自覚してるハズなのに……、今、未来乃は勝手に自己嫌悪に陥ってるだろう。


 俺は未来乃に電話をかけた。だが電源が切られていて通じない。



 明日俺はどんな顔して未来乃に会えばいいんだろう?



 


 

次回からいよいよ5日目、ラスト3話です!

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