第28話《4日目》その6
「……ハァハァ、どーしたっ、白河っ?」
俺は未来乃の指示に従い、わざわざ一旦ファミレスを出た後、息を切らして二人の居るテーブルに戻った。 これってもしかしてオッケー出るまで毎回やるのか?
「キッ、……キノウコクハクシテキタヒトガスゴイイイヨッテクルノォ…………
「白河っ? 俺を走らせる為にワザとやってんのか?」
「酷い! そんな事ないよねっ、未来乃ちゃん?」
未来乃のポテトを摘んでいた手が止まり頭を抱えた。
「これは私の予想以上でしたね……」
「そんなぁ……」
「莉人くんの演技はバッチリですが、もう一度最初からお願いします」
「ちょっと待て! 流石に店員に不審に思われるから走って来た体で始めようぜ」
「んー、そうですね。時間もかかりそうですしこのまま続けましょう」
それから数回、イヤ数十回俺達は愛のあるダメ出しを続けた。
※
「昨日告白して来た人が凄い言い寄って来るの、それでどうしても明日会いたいって言って来るから断れなくて、……どーしよう?」
「ゔっっ……っ!!」
「いーですね! その上目遣いもバッチリです! 莉人くんが撃ち抜かれているのが気に食わないですけど、これなら自然な感じだと思いますよ! 頑張りましたね♪」
「ありがとう、嶺井、未来乃ちゃん!」
ようやくオッケーをもらい白河は安堵の表情を見せアイスミルクティーを一息で飲んだ。
「後は相沢くんがそれを聞いてどう出るか、ですよね。私は告白してくるにジャンボパフェを賭けますが、莉人くんはどー思います?」
「うーん、俺も今の相沢は意地を張ってるだけだと思うから良いキッカケが出来たと思うんじゃ無いかな?」
「二人がそー言うなら私、期待しちゃってもいいの?」
まるでおやつを貰う子犬の様な目で俺達を見ている。そんな目で見られたら頷くしか無いだろ?
「それじゃ私達が付き合う事になったら夏休みは四人で遊びに行こーよ! 大会が終われば相沢くんも予定が空くと思うし」
「気が早いですね、でも楽しそうです! プールとか良いですね!」
するとあんなにキラキラした目をしていた白河の顔がすんと真顔になった。
「プールは嫌よ! 恥ずかしいもん。それに私、未来乃ちゃんみたいに胸が無いから水着似合わないし!」
「何を言ってるんですか、似合わない訳がないでしょ? しかもそんなモデル体型で胸まであったらなんて、どこまで強欲なんですか、全く!」
「強欲じゃないから! 私、遊園地に行きたいの、みんなでネズミの耳のカチューシャしてアトラクション回りたいなぁ」
白河は見た目に反して可愛いの大好きだからな、カチューシャは勘弁して欲しいけど四人で行けば待ち時間も退屈しなさそうだし、楽しいだろうな。
※
「嶺井、未来乃ちゃん、今日は本当にありがとう。それじゃまた明日!」
「こちらこそです! 助けてくれてありがとうございました。明日の時間とかはまた追って連絡します」
「じゃあな白河、明日頑張れよ!」
白河に手を振りファミレスを出たのは七時前だった。結構長居したよな、まぁその大半は明日の予行練習だけど。
「今日は色々あって大変だったな、駅まで送るよ」
「ありがとうございます、嬉しいです!」
二人並んで駅までの道のりをゆっくりと歩く。
「最初はどうなるかと思ったけど、なんとかなりそうだよな! これで流石にあのモテ男も腹を括るだろう」
「あーぁ、美沙希ちゃんに先を越されそうです」
すると未来乃が体を近づけておもむろに俺の腕を組んで来た。
「おいっ、やめろよ! 日が暮れて来たけどまだ暑いだろっ!」
「いいじゃないですか! 放課後もそうしてたんですからっ!」
腕を振り解こうとしたが未来乃は離れない、それどころか更に体を密着させ、まるで鉄棒にぶら下がってる子供の様だった。
「お前だって汗かいてるじゃん! 暑苦しいから離れろって!」
薄暗くなってはいるものの、まだ三十度はあるだろう。未来乃は渋々腕から離れ俺をじっと見て言った。
「……暑く無かったら、いいんですか?」
「えっ?」
「暑いから嫌なんですか? それとも私と腕を組むのが嫌なんですか?」
いつもとは違う強い口調で聞いて来た。俺が言葉に詰まっていると、
「ごめんなさい、困らせてしまいましたね。でも私、欲張りなんです」
そう言って今度は手を握って来た。
「中学の時は助けてくれて、好きって言うよりただの憧れの王子様だったんです。それで同じ高校に入れて、毎日顔が見れて、声が聞けて、最初はそれだけで充分満足でした。でも、だんだん莉人くんの人柄が分かって来ると好きな気持ちが増して来て、振り向いて欲しくて……」
握っていた手に今度は指を絡ませて来た。
「美沙希ちゃんの事諦めてくれないかなってずっと思ってて……、それでこの間の体育館裏であの場面を目撃したらもう止まらなくなってしまいました。
でもボロ泣きの私の第一印象は最悪でしたよね? それでも初めて話せて、友達になれて、まさか行きつけの店でお好み焼きまで食べる事が出来て! 今までは我慢出来ていたのに、たった一日で私の欲求に火がついてしまいました」
「未来乃…………お前」
「次の日から私の生活は一変しました。学校で莉人くんと普通に話が出来て、放課後も二人でハンバーガーを食べながらお喋りして、連絡先も交換して、夜も電話で声が聞けて……、それに高嶺の花だった白河さんとも『美沙希ちゃん』なんて名前で呼び合う仲になって……、それでも私はまだ満足出来て無いんです。もっともっと欲しいんです!」
ヤバい! 顔が熱い! これは夏のせいじゃないのは分かっている。絡ませた指に自然と力が入る。
「あらためて言わせて下さい。私、莉人くんが好きです。大好きです! ずっとお喋りしていたいし、触れ合いたいです。この気持ちはもう抑えきれないんです!!」
一度目のいきなりの告白とは違って、本気の思いが俺の胸に突き刺さった。 彼女からしたら一度目も二度目も本気なのは変わらないだろうけど。
「未来乃……、なんで、……なんでお前はいつも恥ずかし気もなく真っ直ぐに思いを伝えられるんだ?」
「だから言ったじゃないですか! もう好きが溢れ過ぎて歯止めが効かないんです!」
ここまで言われたら俺も自分の気持ちを正直に話そう。俺は未来乃の両手を握りしめ、向かい合った。
「未来乃、俺…………」
その時だった。後ろからガラの悪そうな声で俺達に向かって何か言ってる奴が居る。
……なんだなんだ? 今、大事な所なんだけど!
変な奴に絡まれてる場合じゃないんだけどな?
「ようっ、お盛んだな高校生っ! お前らナニ道の真ん中でイチャイチャしてんだよ!」




