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第26話《4日目》その4



 「じゃあね、未来乃ちゃん。放課後にまた!」

 「美沙希ちゃん、先程は本当にありがとうございました。この借りは参謀として必ずや返させていただきます」



 昼休みが終わり未来乃と別れ教室に入ると、案の定皆に囲まれた。



 「美沙希っ、今のはなんなの? まさか麻倉さんと嶺井を取り合ってるの?」

 「嶺井ーっ、何でお前ばっかりモテんだよ〜っ!」

 「泥沼三角関係かっ? それにしては仲良さそうだしなぁ?」


 「白河が未来乃と仲良くなりたいって言ったから間を取り持っただけだ! お前達変な事ばっか想像し過ぎなんだって!」



 あー、面倒くさ。でもこんな冷やかしも今日までだしっ! 既に俺の中で夏休みのカウントダウンが始まっていた。



 「はーい、授業始まるわよ〜♪」




 ※




 「はーい、これで一学期の授業は終わり〜! みんな、楽しむのは良いけどハメを外さないでね! 頼むから絶対私に迷惑かけないで、お願いっ!」


 「「「「「はぁーーい!!」」」」」



 切実な担任の願いに皆笑って応えている。さぁいよいよ夏休みだ! 今年の夏は楽しくなりそうだぞ! 


 すると後ろの扉を開け、飛び跳ねながら未来乃がやって来た。当然みんなが注目している。


 「帰ろ、莉人くん、美沙希ちゃん!」


 俺だけじゃなく白河とも一緒に帰るのを皆、あっけに取られて見ている。俺は林達や白河の友達達に手を振り教室を後にした。

 二人は楽しそうに喋りながら暫く廊下を歩いていたが、急に未来乃が立ち止まり白河にとんでもない事を言いだした。



 「美沙希ちゃん、お願いがあります! 校門を出るまででいいんで莉人くんの左手を繋いで貰えませんか? 私は右手を繋ぎますので!」

 「お前っ、何企んでるんだ? そんな事したら俺、学校中の男子達を敵に回す事になるんだぞ?」


 「学校中の男子より今、私が恐れているのは帰り際莉人くんに告白をしようと狙っている女子達です。私と美沙希ちゃんを連れて帰れば流石に誰も近寄って来る事は無いでしょう♡」

 「流石は参謀を名乗るだけあるわ! そういう事なら私、未来乃ちゃんに協力します♪」



 白河っ、俺達今まで手なんか繋いだ事無かったよな? まんまと未来乃の策略にハマった白河は俺の左手を握った。



 「これで安心して帰れます! さぁファミレスへ行きましょう♪」

 「おいっ、何でお前は腕組んでんだっ!」

 「正妻マウントです! 私、器がちっちゃいので!」

 「えっ、なんか悔しい! じゃあ私も腕組むわ、私だって器がちっちゃいんだから!」

 「もぅ、しょうがないですねぇ、じゃあ美沙希ちゃんは校門までですよ!」

 「何でお前にそんな権利があるんだ? 恥ずかしいからやめてくれ!」



 俺は未来乃と白河の学年ツートップに腕を組まれて校舎を出るという、まるでハーレムマンガの主人公の様だが、全ての男子達を敵に回して夏休みを迎える事になった。




 ※




 ファミレスに着き早速ドリンクバーで飲み物を調達して席に座る。ちょっと歩いただけなのに既に汗だくなのは、結局ファミレスまで未来乃がベッタリ腕を組んでいたからだ。

 そして未来乃は常備している汗拭きシートとフェイスタオルを俺と白河に渡した。



 「とんでもない暑さですね、あと十分歩いたら流石に莉人くんの腕から離れる所でした」 

 「だったら校門出たら白河みたいにすぐ離れれば良かっただろ? おかげでこっちは汗が凄い事になってんだぞ!」


 「でも見ましたか美沙希ちゃん、効果は絶大でしたよ! 下駄箱辺りに一人と校門前に一人、いずれも私達を見て肩を落としてましたから! 私達のおかげで莉人くんは告白を断る手間が省けたんですから、お礼にポテト盛り合わせ位奢って欲しいものです」

 「私は恥ずかしくて下を向いて歩いてたから気付かなかったけど流石ね! まさに『策士』だわ!」



 白河は顔を真っ赤にして歩いていたのに対し、未来乃はまるで私達を見て下さいと言わんばかりのドヤ顔で俺の腕に体を密着させていた。

 告白を断るのが嫌だったからもあるけど、明日から学校に行かなくていーからこんな事許したんだからな! 

 

 そして未来乃は奢るとは一言も言ってないポテト盛り合わせを注文して本題に入った。



 「美沙希ちゃん、いいですかよく聞いて下さい。実は相沢くんはあなたに惚れてます。間違いありません。そして現在男子達のあなたへの告白ラッシュが気になって仕方ない状況です」

 「えっ、嘘でしょ、……本当なの?」


 俺に向かって聞いて来たので首を縦に振ったら向日葵が咲いたかの様な笑顔を見せた。


 「でも、……じゃあなんで『まだ付き合えない』とか言ったんだろう? やっぱり大会が近いから集中したいのかな? それなら大会が終われば告白してくれるって事だよね?」

 「違います。彼は友達思いのイケメンです。そしてもしかしたら美沙希ちゃんよりも目の前に居るこの男に惚れてるまであります」


 「えっ、……気付かなかったよ、二人はそーゆー関係だったの?」



 だから何で俺に聞いて来るんだ? でも満更嘘でも無さそうなんだよな。未来乃には愛情より友情を取るって言ってたし。



 「白河、誤解するなよ、相沢は俺の事親友として好きなだけで、その、……恋愛感情とかじゃ無いからな!」

 「そして莉人くん好き好きイケメンは超がつく程の意地っ張りで義理堅い男です。 ……これでもう分かりましたよね?」

 「えっ、どーゆー事? 嶺井に恋愛感情があるのに意地張って否定してるけど、義理堅いから友達を続けてるって事?」



 未来乃はやれやれと言った表情で外人並みの『Oh、No!』のポーズをした。



 「美沙希ちゃんは天然なのかズレてるのか分からなくなりました。これは援軍の報告には無かったです」

 「私、ズレてもいないし天然でもないから! それで結局何なの?」


 「しょうがない姫ですね、答えは大好きな莉人くんがずっと好きだった女にフラれて、それですぐにその女とは付き合えないよって事ですよ。彼は義理堅いですから! それで莉人くんがもう吹っ切れたから気にせずに付き合ってやれと言っても意地を張っている、今はそんな現状です」

 


 白河は口を開けたまま唖然としている。現状を理解するのに時間がかかるのだろう。

 そしてアイスミルクティーをストローで一口飲み、深い溜め息をついた。



 「私、大会が終わるまでだと勝手に思い込んでて、終わったらまた勇気出して二度目の告白をしようと思っていたのに……、それじゃ私、いつまで待てばいーの? 半年? 一年? 義理堅いって事はまさか卒業まで……っ!!」



 白河はこの世の終わりの様な顔をして項垂れた。慌てて未来乃が隣に座り抱き止めるが、全身の力が抜けている為重さに耐えきれず二人ソファーに倒れ込んだ。

 


 「みっ、美沙希ちゃん重いよ、しっかりして! だからこれから作戦を立てるの! 私の言う通りにすればきっと上手くいくから! ねっ♪」

 


 「さっ、参謀さぁ〜ん!!」



 白河は未来乃に上から覆い被さり抱きしめた。おーい、お前ら昼間っからファミレスのソファーで何やってんだ? …………てか未来乃潰れてるぞ?


 

 

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