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第14話《2日目》その5



 「はぁ〜っ、幸せ♡ 放課後まで待った甲斐がありました。さて、そろそろ本題に入りましょう!」

 「なんだ? 連絡先交換以外にまだ何かあるのか?」



 戦々恐々としている俺を見ながら未来乃が満足気にシェイクを飲み干すと、夏休みの予定についての話になった。



 「あと三日で夏休みじゃないですか? 莉人くんは何処かに行く予定なんかありますか? 私はこの日とこの日、あとここからここまでは予定があるんですが……」


 未来乃はカバンから手帳を取り出しカレンダーの所に丸をつけていった。


 「うーん、正直俺予定とか無いんだよな、両親は共働きで忙しいし、お盆って言っても田舎とか無いし、夏休みの短期バイトとかやろうと思ってるんだけど」

 「それなら! えっと……確かこの日は……」



 未来乃がまたもや隣に座って来て、俺にスマホを見せながらこの近辺の祭りや花火大会の日程をチェックしていった。

 しばらくすると未来乃はスマホの手を止め、画面を見ていた顔を俺に向けて言った。



 「やっと友達になれたのに、夏休みのせいで毎日会えなくなってしまうのは残念です。

 でもこの休み中に少しでもいいので私の事を知って欲しいんです。


 出来れば、……その、好きになって欲しいんです!


 だから空いてる日は少しの時間でも会いたいし、お祭りや花火大会にも一緒に行って夏の思い出いっぱい作りたいと思ってるんですけど、……駄目ですか?」


 

 俺を覗き込む様に見て両手を合わせ、お願いポーズを取る未来乃は誰が見ても可愛いし、どんなお願いも聞いてあげたいと思ってしまう。



 「正直、断る理由が見当たらないし、誘ってくれるのは凄く嬉しいよ。……だけどちょっと聞いてくれ」



 俺は少しだけ未来乃から離れ、向き合って話を続けた。



 「ずっと好きでいてくれた事は驚いたけど素直に嬉しかった、ありがとう。

 でも俺はさ、たまたま痴漢から助けただけで、それ以外の俺の事は相沢からの情報以外分からないだろ?


 俺、未来乃にそこまで好きって言ってもらえる程自分に自信がないんだ。相沢みたいにイケメンじゃないし、女の子に告白とかされた事なんて数える位しかないしさ。


 それに今日、クラスで改めて未来乃の人気を目の当たりにして、正直俺なんかと二人で会うのもどうかとも思ったんだ。

 

 今でも何でそんなに好きって言ってくれるんだろうって思ってるし、だからこの夏休みでずっと一緒に居たら俺の事嫌いになるかもとか考えたら……」



 「なりませんっ! 嫌いになんてなる訳無いじゃないですかっ!」



 未来乃はテーブルをバンッと叩いて店中に響き渡る位の大きな声で叫んだ。

 出会ってから今までのなんかフワッとした雰囲気から一転して、強い瞳で真っ直ぐに俺を見て断言された。



 「あっ、……訂正します。私、『俺なんか』とか言って自分を低く見る莉人くんは好きじゃないです!  莉人くんは自分の事、過小評価し過ぎです。言いたくはないですけどウチのクラスでも莉人くんは人気なんですよ! まぁ白河さんが隣に居たから誰も声なんてかけられないですけど……。


 それに自信なんて私にだって無いです! 

 

 そりゃまぁ最近はあれだけ告白とかされたらちょっとは自信つきましたけどね。……えへへ。



 中学の頃、放課後帰り道で莉人くんを見る度、いつも並んで歩いている白河さんを陰から見て『私なんか勝てっこない』って思ってました。

 でも入学式の時に莉人くんがフラれたのを見てから私は変わろうと決意したんです!


 地味だった髪型もゆるふわな感じに変えて少しだけ栗色に染めてみたり、メガネもやめてコンタクトにしたり、スタイルだけは自信あったのでそれをを維持する為に食事制限もしたし、メイクだって必死で覚えました。


 その甲斐あってかクラスからミスコンに推薦されて、ちょっとでも莉人くんの気をひきたくて、……と言うか周りに乗せられて調子に乗ってバニーなんてやっちゃったんですけど、それから自分でもビックリする位凄い勢いで告白されて、ようやく少しだけ自分に自信が持てたんです。

 

 でもまさか莉人くんに認知されてなかったのは予想外でしたけどね! 聞いた時は流石に凹みましたよ、へへ。 


 ……ちょっと喋りすぎました。喉がカラカラです。冷たいお茶買って来ますね!」



 ようやく柔らかい表情になった未来乃は立ち上がりそそくさと階段を降りて行った。

 そうか、未来乃も自分を磨く為に凄い努力をして来たんだな。それを聞いたらますます俺なんかって思っちゃうんだけど……。




 ※




 「はい、これシェイクのお返しのジンジャーエールです♪」


 暫くして未来乃は両手にドリンクを持って戻って来た。


 「あっ、ありがとう」

 「いえいえ、おあいこなので!」


 



 「…………」

 「…………」




 気まずい空気が流れて沈黙が続いていたが、口火を切ったのは未来乃だった。


 

 「さっき莉人くん、『俺はたまたま痴漢から助けただけで、それ以外の俺の事は相沢からの情報以外分からないだろ?』って言いましたよね?


 あの時助けてくれたのはたまたま私だったけど、私じゃなくても勿論助けてましたよね?

 そーゆートコですよ! 関わるのは面倒だし、見て見ぬフリをする人が多い中で、勇気が無ければ出来る事じゃないです! もうそれだけで充分です! 一目惚れなんです!


 まぁそれ以来接点は無いので、中学の時は憧れの王子様の様に思ってましたけど……。


 でもそれから私はずっと莉人くんの事見て来たんです!


 高校に入って近くで見れる様になったら、相沢くんと喋ってる時の物腰の柔らかさや、親身になって相談に乗る所や、えっちな話もするけど人の悪口とかは一切言わない所とか、白河さんと喋ってる時の優しい目や白河さんの友達にも同じ位優しく接してる所とか、そういう所全部見て来た上での『好き』なんです! 


 この先そりゃ嫌な所も目につくかも知れないですけど、仮に私達が付き合う事になって浮気でもされない限り嫌いになんてなったりは絶対しません!」



 未来乃はふぅと息を吐き、全て出し切ったと言わんばかりのドヤ顔で俺を見た。まるで『さぁ次はあなたの番ですよ?』と言ってる様だ。



 「ありがとう。未来乃にそこまで言われたら少しは自分に自信持てそうだよ。でも、だからと言って昨日の今日ですぐ付き合いますとはなれないけど……」


 「いいんです、分かってますよ! だってずっと白河さん一筋で、私なんか視界に入らない位だったんですから。

 一足飛びで好きになってくれるなんて思ってません。だからこの夏休みに少しずつで良いんで私の事も知ってもらって、いつか莉人くんから好きって言ってもらえる日が来るといいなって思ってます」



 こんなにも真っ直ぐ思いを伝えられたら流石に気持ちが揺らいでしまう。

 俺もこれからは未来乃に真剣に向き合って誠意を尽くそう。



 「わかったよ。俺もこれから未来乃の事をもっと知りたいと思ってるし、ちゃんと答えを出さないとここまで言ってくれた未来乃に失礼だからさ、夏休みは一緒に出掛けよう!」

 「はいっ!! これはもう『友達以上恋人未満』クリアって事で良いんですよねっ? ねっ?」

 「うっっ、……まぁこの流れならしょーがないだろ?」


 「ふふふっ、最速クリアです! このまま行けばもしかして夏休み始まる前に私達っ……ねっ♡」

 


 ウインクしながら腕を組んできたので、俺はスマホのメモ機能をタップして、


 「……えっと、未来乃の良くない所は『すぐ調子に乗ってなんでも自分に都合の良い方向に持ってく事』っと、ヨシッ! これで未来乃の事がちょっとは知れたぞ!」


 すると未来乃は慌てて腕を離して拝みながら、


 「あっ、ダメッ、それはダメです! ゴメンなさいっ、今のはナシでお願いしますっ!」

 

 

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