第12話《2日目》その3
昼になり、なんだかんだ言いながら林達は俺に購買パンやジュースを奢ってくれた。本当良いヤツらだよな。
いつもだったら白河達のグループと数人の男達で昼飯を食べていたんだけど、男五人で昼飯を食べるなんて高校に入って初めてなんじゃないか?
話題も当然の如く女子の話や下ネタがメインだ。
俺以外の四人は今は彼女が居ないみたいで、夏休みの予定は海やプール、祭りなどのイベント事で出会いを求めると鼻息を荒くしている。
夏休みか……、そもそも俺も白河に見切りをつけて新たな出会いをなんて思って告白したんだよな。
すると四人の内の一人、ジュースを奢ってくれた長谷川が恨めしそうに言った。
「嶺井はいーよな、どーせ麻倉さんと一緒に夏休み過ごすんだろ? ホント羨ましいぜ!」
「だからさー、昨日友達になったばっかだって言ってんだろ?」
すると話題は未来乃の事で持ちきりになった。
「でもさー、タイプで言うと麻倉さんと白河って真逆じゃん? 白河は背が高くて色白で黒髪ストレートの『ザ・モデル!』って感じだけど麻倉さんは目がクリッとして可愛い系の『ザ・アイドル!』って感じだもんな、しかもウエスト細いのに胸大きいしさ!」
「本当ソレな! 学祭の時バニー姿で出て来た時の歓声凄かったもんな。あれから暫くの間、同学年だけじゃなく先輩からも告られてたって元カノが言ってたぜ」
「なんか気軽に声掛けやすい感じがウケるんだろうな」
「噂じゃ秋の文化祭から年末までで十人以上に告白されてたみたいだしな」
すると四人の内の一人、村田が驚きのカミングアウトをした!
「……実は俺、一年の冬告白してフラれたんだよねー! 『ずっと好きな人が居るんです、ごめんなさい』って何度も何度も頭下げるもんだからさ、逆になんかこっちが悪い事しちゃった気分だったよ」
「マジかー? ウケる! その光景なんか想像つくよなー、でもさー、これだけフリまくってたら逆恨みとかされそうなのにそんな話一切聞かないもんな、ある意味スゲーよ!」
可愛いのは分かっていたが、まさかそこまで人気があるとは思ってなかった。……まぁ最初見た時は涙でぐしょぐしょの変なヤツって印象だったからな。
すると林が俺をマジマジと見て、
「麻倉さんのずっと好きだった人って……もしかしてお前なんじゃないか?」
他の三人も同時に首を縦に振った。すげーな、お前等なんで分かるんだ?
「……んな訳ねーだろ? 俺なんか周りから見たら白河のストーカーみたいなもんだろ? ないない!」
咄嗟に誤魔化したが皆納得はしていない様だ。すると林が俺の肩を叩いて、
「まぁそんな事どっちでもいーけどな! 何も力になってやれないけど頑張れよ!」
「だからそんなんじゃ……」
「いーからいーから! 俺達も応援するぜ! 白河の事なんて早く忘れちゃえよ!」
「それで麻倉さんと付き合ったらさー、友達紹介してくれよなっ、頼むぜ!」
……なんかやけに優しいと思ったらお前等それが目的か?
※
放課後になり皆と別れた後、俺は足早に体育館裏に向かった。
改めて未来乃がモテるヤツだって事実を知って二人っきりで会うのはどうかと思ってしまう。でもまぁ友達だしな、何言われても嘘じゃないからコソコソしてもしょーがないか!
校舎の角を曲がって体育館の裏に回ると既に未来乃は待っていて、俺を見つけるなりパァっと花が咲いた様な笑顔を見せた。まるで飼い主を待つ子犬みたいだな!
「ごめん、遅くなった! 暑かっただろ?」
「ううん、ここ日陰だし風も少し吹いていたので平気です!」
「……んで、用事はなんだ?」
「え、別にないですけど? 用がないと会ってもくれないんですか? 友達だから一緒に話したいだけですけど、……それもダメですか?」
さっきまでの笑顔が一転、この世の終わりみたいに肩を落としてしまった。あーっ、やっちゃった、俺?
「ちがーう! 何か用があるのかなー? なんて思って聞いただけなんだ! あっ、未来乃腹減ってるだろ? 『バーガークイーン』で涼みながら話しよ、なっ!」
「なんか餌付けされてるみたいでイヤです! マイナス二ポイントです」
「それまだやってんのか? 冗談かと思ってたよ」
「あー、今ので好き好きポイントも一ポイント減りましたよ。この先どーやって挽回します?」
なんか面倒くさいな、でもとりあえず機嫌を直してもらわないと!
「実はさ、俺、未来乃と話したくて早く放課後になんないかなーって思ってたんだ」
「……じゃあなんでいつもは休み時間に一度は相沢くんに会いに来るのに来なかったんですか? 別に私目当てに来てくれても良かったのに?」
頬を膨らませてあからさまに拗ねている。
「だって未来乃のクラスの女子達は未来乃が俺の事好きなの知ってんだろ? そんなんで話しかけたら大騒ぎになるじゃんか。今日ウチのクラスは未来乃が顔出してからお前の話で持ちきりだったんだぞ」
「そんな事で恥ずかしがる事ないじゃないですか! 私は周りの目なんか気にせず莉人くんと話がしたいんです!」
「そーだよな、友達なんだから普通にすれば良いんだよな。でも今日は……なんて言うか相沢に会いたくなかったんだよ」
「どーしたんですか? 喧嘩でもしたんですか?」
心配そうに顔を覗き込んで来た。なんかコロコロ表情が変わるな。
「実はさ、……今日相沢の部活が終わったら白河が告白するんだよ。そんな日にどんな顔して相沢と接して良いのか分からなくてさ。
……あっ、誤解すんなよ? 俺は二人がくっついて欲しいと思ってるんだからな」
「そーですか、喧嘩じゃないんですね。私も相沢くんが幸せになってくれるのは嬉しいです。何せ私の恩人かつ援軍ですから」
「アイツの事だから俺に遠慮するんじゃとか色々思ったらさ、余計な事言うのも変だし会わない方が良いかなってさ」
「それじゃ昨日、私達の仲良しっぷりを見せつけられたのは相沢くんにとって良かったんじゃないですかね、えへへ♪」
そう言って俺の腕に纏わりついて来た。良かった、機嫌が直ったみたいだ。
「後はアイツ等の問題だし、俺がどうこう出来る事じゃないからな。夜になったら連絡来るだろ?
それより暑いから行こうぜ、シェイク奢ってやるからさ!」
「やったー! 実はお腹すいてたんです。ポテトも奢ってくれたらマイナスポイントがチャラになりますけどどーしますか?」
腕を組んだまま俺を下から見上げてイタズラっ子の様な顔をしている。これはズルい!
「そんな駆け引きをする未来乃は好きじゃないな、俺の好き好きポイントがマイナスになったぞ?」
「えっ? ウソっ、ダメです! 私、調子に乗りすぎました。ポテトは私が奢りますので好き好きポイントを回復させて下さいっ!!」
「あはははっ、冗談だよっ! そんなに焦らなくてもポテトくらい奢るって!」
慌てる未来乃の仕草が可愛いくて面白すぎて笑いが止まらなくなった。




