第1話《1日目》その1
……もう結果なんて分かってる。
前回、前々回と毎年毎年凝りもせずに告白し見事に玉砕。
そんな俺に対して、毎回毎回ちゃんと目を見て真剣に話を聞いてくれ、誤魔化さずにキチンと断りを入れる彼女には、断られたショックより一人の人間として尊敬の念を抱いてしまうほどだ。
白河 美沙希
中三の時初めて告白し見事にフラれ、同じ高校に進学し同じクラスになった事で勝手に運命を感じ、凝りもせず告白してまたも断られ、それからは好きの気持ちを抑えて友達として仲良くやっていた。
彼女曰く『嶺井はいい人過ぎて私には勿体無い』とか言うが、その言葉そっくり白河に返したい。
まぁ俺が傷付かない様に穏便に済ませたいだけなんだろうけど……。
そんな俺からの『放課後、体育館の裏で待ってる』
……って、どー考えても告白だろ? なんてメッセにも彼女は俺を嘲笑うかの様に『了解なのです!』と敬礼のポーズをするウサギのスタンプを送り返してくる。
だが今回の告白は以前とは違う!
自分の白河への想いにちゃんと区切りをつける為、敢えて告白するんだ。じゃないと俺、このままだといつまで経っても新しい恋なんて出来ないから!
多分白河も俺の気持ちを全てお見通しの上での『了解なのです!』なんだろう。
もうすぐ夏休み、高二の夏休みなんて一番遊べる時期だもんな。この恋にちゃんと区切りをつけて新しい一歩を踏み出さないと……。
※
……とは言うものの万が一、奇跡的にOKが貰えたなら……、なんて事も頭の片隅、イヤ髪の毛のほんの先っぽ位期待している自分がいる。
放課後になり皆と別れた後、俺は戦場に向かう兵士の様な心境で体育館へと向かう。今の俺の顔を見たヤツはさぞかしビビるんじゃないか? と言う位鬼気迫った顔をしてるんだろう。
「おーそーいー嶺井! もう待ちくたびれたぞ!」
「うっ……っっ!!」
俺の姿を見つけて頬を膨らます白河に俺は一瞬で撃ち抜かれてしまった。
中一の時に一目惚れしてから早五年、今は良き理解者を演じながら彼女と接しているが未だにちょっとした仕草に心を持っていかれる。
ダメだダメだ! 今日でちゃんとケリをつけなきゃって決めたんだろ?
ここはいつもの様におちゃらけて誤魔化さずに真剣な顔で白河に伝えよう。
「遅くなってごめん、時間作ってくれてありがとう」
「うん。話って、……ナニ?」
俺の真剣モードに即座に反応する辺り、もう返す言葉は決まっている様だ。
「俺の好きな気持ちは中学の時初めて会った時からずっと変わらない。……でもこのまま好きで居続けるのは俺にとっても白河にとっても良く無いってずっと思って来た。
白河、俺と付き合えないのなら今日で俺はこの想いを断ち切る。明日からは少し距離を置くかもだけど勘弁してくれ」
すると白河は大きく息を吸い、目に涙を浮かべながら真っ直ぐに俺を見て言った。
「私、嶺井の事は本当に良い人だと思ってる。いつも私を大切に思ってくれるのが伝わってくるし、私の周りの友達にも優しい。でも、嶺井とは友達以上にはなれないよ。
私、……嶺井が私を思ってくれるのと同じ様にずっと好きな人が居るの。嶺井みたいに勇気が無いから告白なんて出来ないけど……。
でもいつかは言わないといけないと思ってる。この気持ちがある限り嶺井の気持ちには応えられないの。本当にごめんなさい」
涙が溢れてぐしゃぐしゃになりながら深々と頭を下げた。
「分かった。正直に言ってくれてありがとう。これで本当に俺も新しい一歩を踏み出す事が出来そうだよ。だから白河も俺の事とか気にしないでちゃんと相沢に好きって伝えろよ!」
「えっ……っ!? な、……なんで私が相沢くんの事好きって? 誰にも話した事ないのに、……どうして?」
ハンカチで涙を拭いながら驚いた表情で俺を見る。
「バーカ、何年俺がお前の事見てると思ってんだよ? ずっと好きだったんだからお前の好きな人が俺の親友だって事位分かるよ、悔しいけどっ!」
「えっ? えぇ〜っっ!? ……じゃ、じゃあ相沢くんにも私が相沢くんの事好きだってバレてるの?」
「イヤ、多分大丈夫! アイツそーゆートコ鈍いし、俺が白河の事好きなのずっと見て来てるからまさか自分の事好きだなんて微塵も思って無いんじゃないのか?」
すると白河は胸に手を当て安堵の表情を見せた。
「白河、お前俺の親友だから今まで好きだって伝えられなかったんだよな? 分かっては居たけどそれを言ったら本当に俺はお前を諦めないといけなかったから言えなかった。改めてゴメン、もう気にしないでいーから相沢にちゃんと想いを伝えろよ!」
「嶺井、……ありがとう! 私、……私も嶺井みたいに勇気を出して相沢くんに伝えてみるよ」
「俺も今夜にでも相沢に白河の事は完全に諦めたって伝えておくから。そーしないとアイツも俺に気を遣ってお前からの告白断りそうだからな」
「嶺井、……ありがとう。嶺井は本当に良い人だね。ずっと好きって言ってる相手が自分の親友の事好きだなんて、私だったら邪魔しちゃうかも知れないもん」
「イヤイヤ、俺の知ってる白河はそんな事しないよ! それに俺だってやれるのはここまでだし、後は白河、お前が勇気出す番だぞ! 万が一フラれたら俺と付き合えばいーし! ……ってまだ未練たらたらじゃん、俺っ!」
それを聞いてやっと笑ってくれた。やっぱり白河は笑っているのが一番だ。
「あははは、私だってフラれたら嶺井みたいにあと二回は告白するもん! だから嶺井も新しい恋見つけてね!」
「流石にすぐには無理だけど、……そうなれるといーな」
※
「じゃあ私、……行くね!」
「あぁ、……また明日! 相沢にはちゃんと伝えておくから頑張れよ!」
白河のヤツ、俺をフッておいて最高の笑顔で手を振って帰って行きやがった。結局俺は白河の姿が見えなくなるまで良いヤツを演じ切った。
見えなくなった途端、全身の力が全て抜けて膝から崩れ落ちた。そして涙が溢れて止まらなくなった。
「くっ、……くっっ、うぅっっ……っっ!!
ゔっっ、ゔっ、うぉぉぉ〜〜〜っっっ!!!」
泣いた。
今日はもう中学からの五年分、涙が止まるまで泣き続けよう。
泣くだけ泣いて白河の事は本当に諦めよう、暫く立ち直れそうもないけど……。
ん、…………?
んん…………っっ!!??
体育館裏なんて、誰も居ないと思っていたら隅の方で体育座りをしてずっとこっちを見てる女の子が居た。……っていつから居たんだ? しかもめっちゃ泣いてるし!
目が合うとその子はすっと立ち上がり、涙を拭う事なくゆっくりとこっちに向かって歩いて来て、俺の前に立ち止まって信じられない言葉を口走った。
「嶺井莉人くん。
ずっと、…………ずっとあなたの事が好きでした。
わっ、私と付き合ってくださいっっ!!」




