17 青とナギ、それぞれのバレンタイン
青い海のナギのさよならの章で、青はナギを海に返しますがその後のバレンタインの話です。
① 海の底のバレンタイン(ナギ視点)
二月の海は静かだ。
光が薄く、音も少ない。
深く潜るほど世界は青ではなく、淡い藍に沈んでいく。
人魚の家の窓辺に漂いながら、ナギは海面の方を見上げていた。
あの向こうに陸がある。
青がいる世界。
胸の奥が、少しだけ重くなる。
鏡台の前に座る。
貝殻と流木で作られた古い鏡。
表面が揺らぎ、水面のように歪む。
「オババ」
指先で縁をなぞる。
しばらくして、像が結ぶ。
『聞こえるよ』
懐かしい声。
それだけで少し安心する。
「……今日は人間の世界、何の日?」
『なんだい藪から棒に』
「前に言ってた。想いを渡す日」
オババが小さく笑った。
『バレンタインだね』
ナギは頷いた。
「青、甘いの好きかな」
『渡せるのかい?』
少しの沈黙。
「……渡せない」
鏡の揺らぎだけが返事のように動く。
ナギは材料を集めた。
海底火山の温もりを借り、
漂流してきたカカオの塊、
貝蜜、海塩。
人間のやり方とは違うけれど、
それでも作りたかった。
青に渡すことはできなくても。
溶かして、混ぜて、固めて。
形は少し歪んだ。
「……不格好」
それでも包む。
桜貝色の紙で。
貝殻に文字を書く。
潮で少し滲む。
それでもいい。
夜。
ナギは浅瀬まで泳いだ。
波は穏やかで、月が白い道を作っている。
防波堤は見えない。
青の姿もない。
当然だ。
渡せないのだから。
それでも胸の奥がきゅっと締まる。
「青」
小さくつぶやく。
「元気かな」
返事はない。
海だけが揺れる。
包みは流した。
深い海へ戻る。
光が遠ざかる。
会えなくても、
離れていても、
気持ちは消えないと知っているから。
海は静かに揺れていた。
遠い陸とつながった。
② バレンタインの潮風(青の視点)
二月の朝の教室は、いつもより少し落ち着きがなかった。
女子たちが机の周りでひそひそ話し、男子はそわそわしている。
「今日なんかあるのか?」
青がゴンちゃんに聞いた。
「え? 知らねーの? バレンタインだよ!」
青は首をかしげた。
「バレン……何?」
「チョコもらえる日!」
「へえ……」
青は半分納得しないまま窓の外を見た。冬の海は遠くに青く光っている。
その席に、もうナギはいない。
昨年の10月に、青はナギを海に返した。
青のお母さんが病に倒れ、八百比丘尼の伝説、人魚の肉を食べたら不老長寿だと漁師のじっちゃんから聞いて、青はナギのことで葛藤して苦しくなったからだ。結局、ナギには言い出せずに、海に返すことにした。
別れ際、ナギは笑っていたが、青の胸の中にはぽっかり穴が開いたようだった。
放課後。
青はいつものようにシロと防波堤へ向かった。
冷たい潮風。
冬の海は静かで、どこまでも澄んでいる。
「……ナギさ」
青は水平線に向かって言った。
「今日、チョコの日らしいぞ」
言ってから少し照れくさくなる。
「まあ、お前、知らねーよな」
石をひとつ海へ投げた。
波紋が広がる。
その時だった。
足元に、小さな包みが落ちているのに気づいた。
「……?」
拾い上げる。
桜貝の色をした紙に包まれていた。
開けると、中には不格好だけど丁寧に固められたチョコレートが一つ。
そして、小さな貝殻の欠片。
そこに潮でにじんだ字が書かれていた。
青へ
人間の世界ではこれを渡す日なんでしょ?
海でオババに教わったの。
ありがとうの気持ち。
ナギ
青はしばらく動けなかった。
「……あいつ」
笑ってしまう。
目の奥が少し熱い。
水平線を見る。
すると、遠くの波のきらめきが一瞬だけ強く光った気がした。
「受け取ったぞー!」
青は叫んだ。
カモメが舞い上がり、波が防波堤に優しく当たる。
まるで返事のようだった。
青はチョコを大事にポケットにしまい、シロの頭を撫でた。
「なあシロ。
次に会ったらさ……」
少し考えてから笑う。
「お返し、ちゃんと考えとかなきゃな」
冬の海は静かに光り続けていた。
その向こうにいる友達へ届くように。
読んでいただき、ありがとうございます。
シャーロック・ホームズ未来からの依頼人の麻子と真司のバレンタインの物語(悪魔の足ー自作)を書いたので、もうすぐバレンタインデーということで、今年は、ナギと青のバレンタインの物語を作りたくなりました。
すべてAIが書きました。




