表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

第7章「伝説の武器とギフト本」

勇者一行は街の教会を訪れ、神父から伝説の武器についての話を聞く。

しかし渡されたのは、まるでカタログギフトのような本だった。

拍子抜けしつつも、新たな目的が生まれる。

一方アストラル城では、魔王と側近たちがその様子を水晶で見ていた。

 旅路を続けて三か月あまり。勇者一行は、王都から西へと進み、緑豊かな街へと足を踏み入れた。


 石畳の道には露店が並び、焼きたてのパンや果物の甘い香りが漂ってくる。リオは鼻をひくひくさせて歩き、とうとう「ぐぅ~」と大きな音を鳴らした。


「……なぁリオ。今の音はなんだ?」

「俺のお腹だ!」胸を張って言うリオ。

「威張ることじゃねぇだろ!」タクミが額を押さえた。

「もう……ホントに食いしん坊ね」カレンも肩をすくめる。


 そんな賑やかなやりとりをしつつ、ソウタが前方を指さした。

「見ろ。あそこに教会があるぞ。休むにはちょうどいいんじゃないか?」

「ほんとだ! 教会なら泊まれるかもしれないわね」カレンがうなずく。

「それに!」リオの目が輝いた。「教会っていったら伝説の話だろ!」

「……お前の頭の中は食べ物とおとぎ話しかないのか」タクミが呆れ声をあげる。


 街の中央にそびえる教会は、古びてはいるが堂々とした佇まいで、ステンドグラスに夕陽が差し込み虹色に輝いていた。鐘の音が静かに響き、旅人を迎えるかのようだ。


 重い扉を押し開けると、奥には白い法衣をまとった年配の神父がいた。祈りを終え、こちらにゆっくりと振り返る。


「おや……遠いところからよくぞいらっしゃいました。旅のお方かな?」

「はい! 俺たち、勇者一行です!」リオが勢いよく胸を張る。

「勇者一行……!」神父は驚き、次いで柔らかい笑みを浮かべた。


 神父は少し考え込むと、奥の書棚へ向かい、分厚い本を抱えて戻ってきた。

「これは代々伝えられてきた“伝説の武器”の記録です。あなた方の旅に役立つやもしれません」


 リオが目を輝かせる。

「おおー! 伝説の武器!」

「落ち着け。まだ中身を見てねぇだろ」タクミがリオの頭を押さえた。


 神父が本を開くと、そこには華やかな挿絵と共に数多の武器の名が記されていた。

「……なにこれ」カレンが目を細める。


 最初のページには“太陽の聖剣”。次には“炎の聖大剣”、さらに“光の聖書”“星の聖杖”。

 しかしそれだけではない。聖なる弓矢、聖なる盾、さらには聞いたこともないような奇妙な武器まで――全部で数十種類。しかもそれぞれに細かい説明とイラスト付き。


「まるで……ギフト本みたいだな」ソウタがぼそりと呟く。

「ほんとね。なんだかレストランのメニューみたい」カレンも苦笑する。


「……ギフト本ってなに? レストランってなに?」リオがきょとんとした顔をした。

三人は揃ってずっこけそうになり、タクミが思わず声を張る。

「お、お前……知らないのか!?」

「知らない! 知りたい! ギフト本とレストラン!」リオは目を輝かせて叫んだ。


「ば、馬鹿! 恥ずかしいから大声で言うなって!」タクミが慌ててリオの口を押さえる。

「むぐぐっ! んーんー!」リオは必死に抗議。


「ったく……! 田舎育ちってレベルじゃねぇな」タクミは深いため息をつきながら、周囲を気にしてリオの口を離した。


 タクミは観念したように、声を潜めてリオの耳元に囁いた。

「……いいか、ギフト本ってのはな。贈り物を選べるカタログのことだ。ページをめくるといろんな品が載ってて、好きなものを相手に送れるんだ」

「へぇぇー! すごいな! じゃあ、好きなもの何でも選べるのか!」リオの目がさらに輝く。

「だから声を抑えろって!」タクミが小声で怒鳴る。


「で、レストランってのは……料理を作って出してくれるお店だ。色んな料理をメニューから選べる」

「えぇぇ! そんな夢の国みたいな店があるのか!」リオは感動の声を上げかけて、タクミに再び口を塞がれた。

「声! 声ぇぇ!」


 そのやりとりを横目に、ソウタは神父へ向き直った。

「……それで、この“光の聖書”や“星の聖杖”というのは、どうやって手に入れるのですか?」

「私も詳しくは存じ上げません。ただ伝承には、勇者の証を持つ者に選ばれる、と記されております」神父の声は厳かで、静かな礼拝堂に響いた。


「選ばれる……?」カレンが呟き、ページを食い入るように見つめた。

「つまり、無理に探しても見つからないということか」ソウタが冷静にまとめる。

「そ、そんな……! じゃあ俺の武器は!?」リオが慌てて本をめくる。


 彼の視線はページを行ったり来たりして、やがて太陽の聖剣の絵に釘付けになった。

「これだ! 俺の武器、太陽の聖剣!」

「決めつけ早すぎだろ」タクミが容赦なくツッコミを入れる。

「だってカッコいいんだもん!」リオは全く悪びれない。


 神父はふっと微笑み、本を差し出した。

「この書を差し上げます。どこに眠っているかは分かりませんが、旅の助けとなるかもしれません」

「ありがとう! 神父様!」リオが嬉しそうに受け取る。

「こんなに分厚い本をどうするんだよ……」タクミはげんなりしている。

「でも、楽しみね。どんな武器があるのか」カレンが静かに笑った。


―――


 同じころ、アストラル城。


 会議室の水晶玉がぼんやりと光を放ち、勇者一行の様子を映し出していた。

「伝説の武器……本当にあったとはな」ヴァルターが腕を組んで唸る。

「厄介ですね。勇者たちに渡れば、我らにとって大きな脅威となるでしょう」ユリアが険しい表情を浮かべる。

「違う! 問題はそこじゃない!」博士が急に立ち上がり、机を叩いた。

「な、なんだ博士」グレンが眉をひそめる。

「勇者たちが強くなると! 誕生日のサプライズ準備が間に合わなくなる!」

「そこかよ!」ユリアとグレンのツッコミが同時に飛んだ。


 ヴァルターは深いため息を吐き、水晶を睨みつけた。

「魔王様……どうなさいますか」

 その言葉に、水晶を覗き込んでいたゼファルドがにっこり笑った。

「いいなぁ。俺も欲しいなぁ、伝説の武器」

「……は?」側近全員が固まる。


「いやだって、カッコいいじゃん。太陽の聖剣とか。俺もシャキーンって構えてみたい」

「魔王様は武器などなくても十分お強いでしょう!」ユリアが慌てて声を上げる。

「いやいや、剣よりシャベルや桑のほうが似合うだろ」グレンが冷静に返す。

「確かに」ヴァルターまで頷いた。

「えぇー!? 俺、剣も似合うと思うけどな!」ゼファルドは笑いながら抗議するが、側近たちは一斉に頭を抱えた。


 そんな呑気な魔王に、誰よりも安心している自分たちがいることを、側近たちは心のどこかで理解していた。

伝説の武器は本当に存在するのか、それとも幻なのか。

勇者一行は本を手にし、新たな目的を胸に旅を続ける。

一方、魔王ゼファルドは「欲しいなぁ」と笑うばかり。

勇者と魔王の温度差が、物語をますます彩っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ