第11章「花畑に眠る太陽の聖剣」
花畑に眠っていた太陽の聖剣。そして、そこに待ち受けていた試練。リオたち勇者一行は、旅の途中で伝説の武器を探し求め、ついにリオの武器にたどり着きます。ですが、その先には予想もしない強敵との遭遇が待っていました。
昼前、勇者一行は港町に立ち寄り、少し早めの昼食をとることになった。
石畳の大通りには魚を焼く香ばしい匂いや、干物を売る屋台の声が響いている。港町らしく、潮風がほんのりと鼻をくすぐり、空にはカモメが飛び交っていた。
「俺は肉にする!」とタクミが真っ先に注文する。
「せっかく港町なんだから魚料理がいいわね」カレンは迷わず魚を選んだ。
「僕は……スープでいいかな」ソウタは控えめに言う。
リオはというと――。
「大盛りのやつ! 一番大きいのでお願いします!」
結果、リオの前に置かれた皿は、他の三人の倍はある盛り付けだった。
「おいおい、食えるのかそれ……」タクミが呆れ顔で言う。
「余裕だよ!」リオはにこにこと笑い、ものの見事に平らげてしまった。
食後、ふとリオが机に頬をつけてぼやいた。
「みんなは伝説の武器を手に入れていいなぁ……。僕だけ何もない」
「お前……まだ不貞腐れてんのか」タクミが呆れる。
「大丈夫よ、リオの武器もすぐ見つかるわ」カレンが優しく言った。
「そうだそうだ。元気出せよ、ほら俺のエビ食え」タクミが自分の皿からエビをひょいと差し出す。
「エビ! ありがとう!」リオは一瞬で笑顔になった。
そんなやり取りをしているうちに、食堂の窓から大きな船が港に停泊するのが見えた。
「そろそろ船が出る時間じゃない?」カレンが声を上げる。
「あっ! 本当だ! 船来てる!」ソウタが慌てて立ち上がる。
「早く行こう!」リオも勢いよく席を立ち、全員が食事代を払って港へと駆けだした。
――こうして、彼らは港町を後にして船へと乗り込んだ。
◆
船内は木造の甲板がきしむ音と、潮風の匂いで満ちていた。
リオは「うわー! すごい!」と甲板の端から海を眺め、はしゃぎ回っている。
「こいつ……子供かよ」タクミは呆れながらも笑う。
「でも楽しそうだし、いいじゃない」カレンが肩をすくめる。
ソウタは遠くを眺め、「向こうの港に着いたら、何が待ってるんだろうな」とつぶやいた。
船内で耳にしたのは、「港を出て少し進んだ先に、絶景の花畑がある」という噂だった。
「花畑? いいじゃん! 絶対行こう!」リオが目を輝かせる。
「いや……花畑って言っても、どうせまた魔物が出るだろうし」タクミが慎重に答える。
「強い魔物がいるって話だな」ソウタが補足する。
「でもレベル上げにもなるでしょ?」カレンが冷静に言った。
結局、全員一致で花畑に向かうこととなった。
◆
港を降りてしばらく歩くと、分かれ道に出た。
「右に行くと花畑だって聞いたよ」リオが地図を指差す。
「……本当に大丈夫か?」ソウタがため息をつく。
「行くしかないだろ。強い魔物が出るってんなら、レベル上げにはもってこいだ」タクミが頷いた。
道を進むと、やがて視界いっぱいに花畑が広がった。
地平線の彼方まで、赤や黄、青といった花々が風に揺れ、蝶がひらひらと舞っている。まるで絵画の中に迷い込んだような幻想的な光景だった。
「うわぁ……すごい……!」カレンが感嘆の声をあげる。
「きれいだな」ソウタも思わず見とれる。
リオは大はしゃぎで花畑の中を駆け回ろうとしたが、タクミに首根っこを掴まれて止められた。
花畑を進むと、さっそく魔物が現れた。大きな狼のような獣だ。
「これが強い魔物か!?」タクミが剣を構える。
戦ってみると、拍子抜けするほどあっさり倒せてしまった。
「……あれ? 案外弱かったわね」カレンが首をかしげる。
「これが強敵ってやつか?」リオがきょとんとする。
◆
さらに奥へ進むと、花畑の中にぽつんと案山子が立っているのが見えた。
「なんだあれ?」タクミが指差す。
「人かと思ったけど……案山子じゃない?」ソウタが近づく。
「なんで花畑に案山子が?」カレンが不思議そうに首を傾げる。
案山子は少し傾いており、その前には古びた剣が突き立てられていた。
錆びて汚れた剣。しかしリオが剣に触れた瞬間、剣は強い光を放ち、みるみるうちに輝きを取り戻す。
「ま、眩しい!」
「な、なにこれ!?」
そしてリオが手にしたのは、太陽のように眩い光を宿した聖剣だった。
「これって……太陽の聖剣……!」カレンが息を呑む。
リオは案山子が倒れないよう、自分の持っていた木の枝を支えに差し替え、太陽の聖剣を手に入れた。
「やったー!」リオは満面の笑みを浮かべた。
◆
しかし――その直後、地面が揺れた。
花畑の奥から、巨大な影が姿を現す。二体のドラゴンだった。
「なっ……ドラゴンだと!?」タクミが叫ぶ。
「しかも二体……!」ソウタが蒼白になる。
「ひぃ……これ、本当に戦うの!?」カレンが杖を構える。
勇者一行は全力で応戦するが、ドラゴンの力は桁違いだった。炎のブレスを避け、必死に立ち向かうが、じりじりと追い詰められていく。
一方その頃、魔王城。
水晶でその様子を見ていたゼファルドは黙って画面を見つめていた。
「これは……勝てませんな」ヴァルターが険しい顔をする。
「このままやられてしまえば、魔王城に来ることはないでしょう」グレンも冷静に言った。
「…………」魔王は目を細めた。
そして、リオたちの攻撃がわずかにドラゴンを後退させた瞬間、ゼファルドは左手の指をパチンと鳴らした。
――ドォン!
爆発音とともに、ドラゴンは轟音をあげて倒れた。
花畑には煙が立ち込め、勇者一行は呆然と立ち尽くした。
「……カレンの魔法が決まったのか?」タクミが振り返る。
「わ、私が……?」カレンが目を丸くする。
「そうだよ! カレンがやったんだ!」リオは無邪気に喜んだ。
魔王城では――。
「なぜ助けるようなことを!?」ヴァルターが声を荒げる。
「このまま倒されていればよかったものを!」ユリアも詰め寄る。
「んー……なんとなく?」ゼファルドは肩をすくめた。
「なんとなくで助けないでください!」側近一同が揃って叫んだ。
◆
戦いの後、勇者一行は倒れたドラゴンの巣を見つけた。そこには二つの卵があったが、一つは割れてしまっていた。
「これって……さっきのドラゴンの卵じゃないか?」タクミが眉をひそめる。
「たぶんな……一つだけ無事なのか」ソウタが卵を見つめる。
「これ、どうする?」カレンが困ったように言った。
「持ってけばいいんじゃない?」リオが軽く言った。
「はぁ!? 持ってってどうするのよ!」カレンが叫ぶ。
「育てる!」リオは満面の笑みを浮かべる。
「誰が?」
「僕が!」
「……何言ってんだお前は」タクミは頭を抱えた。
「だって育って大きくなったら、背中に乗れるじゃん!」
呆れ返る仲間たちをよそに、リオは卵を大事そうに抱えた。
この卵が、後に思わぬ形で魔王へ渡されることになるのだが、それはまだ誰も知らない。
いにリオも太陽の聖剣を手に入れました。しかしその直後に現れたのは、強大なドラゴン。勇者一行の力では到底太刀打ちできなかった敵を、魔王ゼファルドがこっそり助けてしまいます。次回はいよいよドラゴン戦後の余韻と、勇者一行が次なる街を目指す物語をお送りします。




