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さぁ! 出すがいいですわ! 貴方のバトルドールを!

 次に目が覚めると私は屋外に立っていた。

 周りは少し騒がしく、小学生達が歩いている。 ここは小学校の通学路だろうか?

 そんな事を考えていると違和感を感じる。 周りを歩いている小学生の顔と目線が合うのだ。

 自分は座っている訳でも無いのに、周りの小学生達と同じ目線に自分は立っている。

 自分の手を見る。小さな手だ。

 自分の足を見る。小さな足だ。

 自分の顔をペタペタと触り、漸く自分が子供になったのだと自覚した。


『よっ! どうやら無事にコッチに来れたみたいだね。 どうだい新しい身体は?』


「その声、イワトか? なんで俺は子供になっているんだ? そもそもここは何処だ? お前は何処から話しかけている? 説明してくれ」


『勿論、僕と君の仲だからね。 教えてやっても良いけどその前に一つ、僕からのありがたーい忠告だ。 今、僕の声は君にしか聞こえてない。 僕と話をしたいなら心の中で想うだけにしときな。 君の考えてる事を僕が読んであげるからサ』


 改めて周りを確認すると通学中の小学生が不思議そうな顔で此方を見ていた。

 これ以上怪しまれるのは不味いと思い、他の小学生と同じ方向へゆっくりと歩き始める。


『さーて、あっちではゆっくりと話せなかったからね。 改めて自己紹介だ。 僕はイワト、この世界に囚われている……まぁ、神様みたいな者だよ。 この世界に君を呼んだのは僕を助けて欲しいから呼んだんだ。ここまでは良いかい?』


 確かに彼イワトは少し前、白い空間でそんな事を言っていたな。

 その時は神々がメチャクチャをしているとか言っていたがアレはどう言う意味なのだろうとスオウは不思議に思った。


『この世界の神々の奴、度々現世に干渉して来るんだ。 神様って自分たちをそう人間に呼ばせてるだけあって力も相応にあってさ、軽くちょっかいをかけるだけで世界や人間に大きな影響が出てきちまう。 んで、その事で揉めた結果僕は何処ともわからない場所に封印されちゃったって訳。 ……でも僕は泣き寝入りはしないタチでね、なんとか君をこの世界に呼んだって訳サ』


 自分を呼んだ理由はなんとなくわかったが、自分を助けさせるならば何故自分を子供の姿にしたのだろうか?

 単純に大人の身体の方が行動範囲も広がるし身体的能力も上だ。

 子供の姿でこの世界に……転生だろうか? 転生させた理由がわからない。


『あー、それは君の死んだ記憶を僕が削り取ったのが原因だね。 君、向こうの世界でかなり酷い死に方してたんだぜ。 もう笑っちゃうくらいにね! アハハ! まぁ、そんな記憶は勿論だけど、向こうの世界の記憶を削る必要があったんだよ。 こっちの世界に来るには君がさっき言った様に転生という形を取る必要がある。 人間は脆いもんさ。 自分の見た目が変わったり、文化の僅かな違いでもおかしくなっちゃうんだから。 さてここからが君の疑問の答えだ。 記憶っての魂だ。 記憶を増やせば増やすほど魂っては成熟して大きくなる。 だが今の君は記憶を削ったせいで魂が子供程度の大きさしか無い。 そんな状態で大人の身体という器に入れちゃうと魂に負荷がかかるのさ。 だから子供の身体にしてあげたってワケ』


 彼、イワトの言ってる事に理解をした訳では無いが納得した。 いや、するしか無いのが正しいだろう。

 自分はイワトの言っていることが正しいかどうかを確認する術を持たないのだから。


『さて、こっからは今のアンタについての説明だ。 アンタの名前は只野スオウ。 アンタは今小学生で今日、転入生としてオドロキ小学校に転入する事になっているよ』


 只野スオウ。 それが自分の名前。 イワトにこの世界に来る前からスオウと呼ばれていたが、過去の自分の名前も思い出せないのに不思議としっくりする。

 しかし、今頃自分が小学生になるだなんてひどく憂鬱だ。

 私の自認している年齢は30代でとてもじゃ無いが小学生と混じって学校生活を送る自信は無かった。


『おいおい、何を不安がって居るんだよ? 小学生なんて文字通りガキなんだから適当に相手してやれば良いじゃ無いか』


 イワトは楽観的にそう答えるが私はそれに同意する事が出来なかった。

 この世界の小学生の流行りなんてまず知らないし、自分の幼少期、どうやって過ごしたかも覚えていない。


『イヤイヤ、別に仲良くする必要ないだろ? 別にクラスの人気者になれとか言ってないぜ? 適当に目立たない様に過ごせば良いじゃない。 目的は僕を解放する事なんだからサ』


 それもそうか。 どうやら私は自分でハードルを上げ過ぎていた様だ。

 勝手に未来のクラスメイト達と仲良くしなくてはいけないと思い込んでいた。

 適当に教室の隅でやり過ごせば良いじゃ無いか。

 ……そういえばイワトを助ける方法ってどうすれば良いんだろうか?


『あぁ、僕を助ける為には……』


「只野君!」


 学校の校門を潜ろうとしたところ、イワトの声を遮り、誰かに声を掛けられる。

 まぁ、相手はイワトの声を聴こえないのだから仕方ないのだろうが。


「今日転校する只野君だよね? 先生は只野君の担任になる果鹿由里(かしかゆり)って言います。 由里先生って呼んでね」


 そう言いながら私の担任である由里先生は声を掛けて来る。

 見た目から20代の女性に見える大人しそうな人だった。


「はい、由里先生。 只野スオウです。 これからよろしくお願いします」


「ご挨拶出来て偉いですね、只野君。これからよろしくね。 今から教室に行って皆んなとご挨拶しようね」


『フフフ。 ご挨拶がしっかり出来て偉いじゃ無いかスオウ君。 僕からもしっかりと褒めてやるよ』


 イワトに揶揄われながら由里先生と自分の教室へと向かう。

 教室は4年2組と書かれた教室の前で止まる。

 どうやら私は小学四年生。 つまりは10才程の年齢らしい。

 精神年齢と肉体年齢のギャップの酷さに少しショックを受けながら由里先生と教室の中に入る。

 教室は騒がしく、何人か席を立っている子供もいる。

 その光景を見て懐かしく感じてしまう。


「はーい、皆さん席に着いてくださーい! 今日はホームルームの前に転校生を紹介しますからねー。 こら! 早く席に着いて!」


 由里先生の転校生という発言と私の存在で教室は騒がしくなるが、なんとか皆んな自分の席に座る。

 そういえば私の小学生時代もこんなふうに落ち着きがなかったなぁ。 などと考えていると由里先生は黒板に大きく私の名前を書く。


「只野スオウ君です。 家庭の事情でこの学校に転校してきました。 皆さん仲良くしてくださいね。 スオウ君皆さんに自己紹介して」


「えーと、只野スオウです。 家庭の事情で来ました。 よろしく」


 家庭の事情と由里先生が言っていたから私もそう言ったが、一体なんの事情があるのか本人である私が知らなかった。

 一体どんな事情があるというのだろうか?


『あぁ、この世界の君は両親を交通事故で失っているんだよ。 両親を事故で失った後は親戚の家に預けられたんだけど、マスコミに嗅ぎつけられて君を疎ましく思った親戚が君一人コッチに飛ばしたっていう設定だよ』


 何それ重い。 私の過去重たくない?


『知らない両親と学校から帰ってからずっと一緒よりマシだろ? 生活面は僕がチョチョイとやってやるし』


 確かに知らない両親とこれから親子をやれと言われるよりかはマシだが、それにしてももう少しマシな過去を用意しても良いのではないだろうか?


「ちょーっと! お待ちになって!」


 教室の中で女の子の声が上がる。

 声のする方向に目を向けるとお嬢様と言いたくなる様な見た目の女の子が立ち上がっていた。


「私の許可なくこのクラスに入るだなんて許せませんわっ! 私の許可を経て入りなさい!」


「あー、先生。 対応をお願いしますよ」


「あら! 先生に頼っても無駄ですわよ。 私、この学校の学園長の娘ですもの。 由里先生は私の言いなりですのよ!」


 チラリと由里先生の方を見るがオロオロとするだけで何か行動に移そうとしない。

 私は由里先生に早々に見切りをつけ、自己解決に努める事とする。

 取り敢えず子供の言う事なのだから適当に付き合う事にしよう。


「あーー、ではその許可を頂きたいんだが」


「ふふん! 勿論いいですわよ。 ただし私のティアラフルーに勝てればですけどね!」


 目の前のお嬢様小学生は15センチ程の小さなプラモデルを出しながらそう言う。


「ハハハ、そいつは凄いな。 でも先生も困ってるよ。 後でそのオモチャで遊んであげるから取り敢えず今は静かにしないか?」


「なっなんですって! 私のティアラフルーをオモチャだなんて、もう許せませんわ! バトルフィールド展開ですわ!」


 お嬢様小学生がそう叫ぶと、周りの空間が溶けた。

 教室にあった椅子や机、窓や扉は泥々と溶けていき、白い蝋の様な姿に変えていく。

 教室内の物質が全て溶け終わった頃には、教室は白い蝋で塗り固めたドーム常の空間が出来上がる。

 その空間の中央に教室の半分程の大きさで出来た真っ白なジオラマが鎮座していた。

 ジオラマは先ほどのロボットが隠れられそうな四角形の障害物が分散して配置されている。

 いつの間にかクラスメイトや由里先生は空間の壁際に追いやられており、ジオラマを挟んで対面する様にお嬢様小学生と自分が立っていた。


「さぁ! 出すがいいですわ! 貴方のバトルドールを!」


 私は軽い眩暈を覚えながら漸く理解した。

 この世界が自分のよく知る世界ではなく、別の世界。 異世界なのだと。

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