フェイバリット企画で語られなかったやかんの話
グラグラ…
「地震だ!…大きいぞ!母さんっ!やかん!やかんに貴重品入れて持ち出せ!!」
「お父さんっ!まかせて!ホラここに!」
「母さんっ!蓋はどうした!」
「あら?ないわ?」
「母さん僕が取りに戻るよ!!」
今にも潰れそうな家に戻る息子のたかし。
「あぶないわ!たかしっ!」
「待て!たかしっ!!」
たかしを呼び戻そうと父が伸ばす手にはやかんの蓋が。
「あら?お父さん。蓋持ってるじゃない」
「おや?本当だ」
「まあまあ、お父さんったら」
ワッハッハー
「たーかーしぃぃいーーーーーっ!!」
こんにちは。
寸劇の父役のコロンです。
少し前フェイバリット企画にて、「ヤカンの話と絨毯の話、どっちが聞きたい?」
https://ncode.syosetu.com/n9498kc/という作品を書きました。
その時は「絨毯」への愛を語り、皆さまからの生暖かい視線と、生温い優しさをひしひし感じました。
そのせつはどうも。←っっ!!
今回はその節で話せなかったヤカンの話をしようと思います。
。。。
コロンは新宿伊勢丹で、爺や(旦那様)を付けずに一人でブラブラしていました。
極度の方向音痴なコロンは、お出掛けの際には必ず爺やを伴うのに、記憶の中のその日はなぜか一人。
あ、今!本当に今、何故一人だったか思い出しました。
これより少し前にそこで気になるモノを見つけてその日は買わずに帰ったが、やっぱり気になると思って見に行ったんだ。
そう。
大嫌いな二度手間の最中だった。
でも買い物では「一回帰ってよく考える」事をよくします。
でないとバカみたいなモノを買ってしまうから。
その二度手間をしてまで見に来たモノ。
それはやかん。
コロンとしたフォルムが可愛い。
叩き出した金槌の跡が可愛い。
持ち手が竹で可愛い。
自然の色が可愛い。
どれをとっても心惹かれるやかん。
しかしそのお値段は全く可愛くない。
やかんごときのその値段、なんと…
48400円
やかんだよ?
王様でもあるまいし、なんでそんなやかん買おうと思う?
自分に問うた。
……たぶん…
それを使っている自分がかっこいいから?
ごめんてば!泣。゜(゜´ω`゜)゜。!!
わかってるよ!!
さて、話を戻そう。
新宿伊勢丹にて、震える手でやかんを手に取るコロン。
「これ…買います…」
と、言った時。何故か店員が「この店舗ではこちらは一点しかございません。こちらで宜しいですか?」と聞いてきた。
「え??なんで?なんでそんな事言うの?」びっくりだ。
「あ、いえ、こちらは職人の手作りの一点モノでございます。なのでそれぞれカタチや色が微妙に違います。この店舗には一点しかございませんので比べる事が出来ません。好きが違うかもしれないと思いまして」
うわあ…なんて素敵な事言うんだろう…
そうだよね、比べないとだよね。と、バカなコロンは思った。
「じゃあ比べる」違いがわかるコロンは比べたい。
そんなで調べた店舗は…一番近くて清澄白河。
ええっっ?遠くね?
新宿から30分もかかるの?めっちゃ遠いよ。
すっごい嫌だけど行きました。
普段連れてる爺やもいません。
コロンにとって冒険に値します。
電車に揺られ、その後マップを見て歩き…なんとか到着。
お店の向かいはめちゃくちゃ素敵な深川図書館。
知ってますか?明治42年に建てられた深川図書館。
異世界トリップした物語の舞台でも充分通用するほど素敵でうっとり…
え〜♡なにここ素敵…周りの大きな木も相まって…
違った。また脱線した。
やかんだ。
で、そこで「比べるため」やかんを見せてもらう。
わからない。違いなんて全然わからない。コロンに違いなんてわかるわけがない。
『あの店員、さも素敵な物言いをしてコロンに無駄足を踏ませやがったな!!くそう、このまま引き下がれるか!』
違いなんて全くわからず、ここまで来たという悔しさから購入。
「バカみたいに高いやかん」を買った言い訳をゲットしほくほく(o^^o)
あれからずいぶん経つ。
某フリマサイトにて、そのやかんは買った当時と変わらない値段で売られている。
名のあるドワーフがエクスカリバーから打ち出した『幻のやかん』らしい。
(一人の職人が作っているので年間に数個しか販売されないやかん。素材は「銅」)
地震の時はこのやかんに大切なものを詰めて持ち出すつもり。
お読みくださりありがとうございました
どんなやかんか気になる方は「ババグーリやかん」で検索すれば見れます。