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第7章:エピソード2 - 地・天・魂、III

「これから『tramトラム』という言葉は『糸』と訳されます。」

三週間が過ぎた。毎日の訓練に追われるうちに、時間はあっという間に流れていった。結局、誰も老師のなぞなぞの答えを見つけられなかった。老師はほとんど執務室から出てこず、実際の訓練は先輩たちが指導していた。


私は体力と敏捷性を向上させたが、エーテル値だけは一向に上がらない。ソウルの街並みに大きな変化はなかった――ただし、一つ例外を除いて。雲を貫くほど高い白い石の塔が忽然と現れたのだ。ある朝、まるずっとそこにあったかのように姿を現したその塔は、あまりにも威圧的なオーラを放っていたため、最も勇敢な者ですら長く見つめることができなかった。


二日目、寮の廊下でユン・ジヨンとばったり会った時の驚きといったらなかった。短い会話を交わした彼女は、「最も近かったから」という理由で精神派セクトを選んだらしい。時が経つにつれ、私たちはテヒョンとジヨンの三人で行動するようになった。特に決めたわけではないが、お互い知っているのは相手だけだったから、自然とそうなったのだろう。ある夜、そんな絆が決定的になった。


皆が寝静まった後、私たち三人は寮の屋上に集まっていた。終末前の古き良き日々について語り合った。テヒョンは大財閥の裕福な家庭に育った中学生で、ジヨンは母親がKポップファンだった影響でアイドルグループのメンバーになっていた。ジヨンは毎週日曜の朝、母親にテレビの前で踊らされた話をし、テヒョンは豪華な自室で真夜中までゲームをしていた思い出を語った。私はほとんど話さず、聞き役に回った。語るべき思い出がなかったのか、それとも自分の記憶が場の雰囲気を壊すのを恐れたのか。


やがて会話は自然とあの塔の話題に移った。

「ホンジャさん」テヒョンが訊ねた。「あの塔は何のためにあると思う?」

月明かりに照らされた塔を見上げた。大理石の柱が外観を形作り、昼は鳥が飛び交い、夜は不気味な叫び声が聞こえてくるあの塔。

「わからない」

ジヨンが膝を抱きしめた。

「ねえ、私たちずっと一緒にいようって約束してくれない?」

「え?」

彼女は頬を染めながら慌てて手を振った。

「ち、違うの…ただ…」

深く息を吸い込んでから言った。

「世界がこんな状態だから…頼れる仲間がいたらいいなって」

私は星空を見上げて呟いた。

「そうだな」

これが初めての「グループ」だった。いつかあの不気味な塔で戦う時が来るとわかっていても、二人と過ごす時間は心地よかった。訓練以外にも、システムに関する理論授業が多く行われた。陰派インセクトの学者が最初に教えたのは「システムを真剣に捉えすぎず、ゲームのように扱う方が成長が早い」という考え方だった。学者によれば、システムはアルゴリズムというより一種の人工知能で、現実の事象に敏感に反応する性質がその証拠だという。


剣術の訓練を重ねるうちに、いくつかの新スキルを習得した。エーテル値は体内に蓄えられるエーテルの総量を示す数値で、経験と共に自然に増加するはずだった。しかし私の値だけが全く上がらない。


三週間後、老師は私たちが塔に挑む準備が整ったと宣言し、翌日出発することを告げた。塔に入る恐怖から多くの弟子が抗議したが、老師の発表に続いて現れた新たな「糸(Trame)」の前に沈黙した。


【糸】:世界の断片の塔を登頂せよ

期限:1ヶ月

報酬:???

失敗:糸の消滅


食堂では三週間ぶりに豪華な食事が並んだ。肉まで出てくるごちそうに、テヒョンがジヨンの抗議をよそに最後の鶏もも肉を奪い取る一幕も。そんな和やかな食事中、老師の補佐官が私を呼びに来た。


老師の執務室(というより住居)で、ひげを生やした老人が分厚い書物の山の向こうから言った。

「お前だけは特別だ」

彼の言葉は衝撃的だった。

「塔から生還した者は誰もいない」

「…先輩たちは?」

老師は悲しげに目を細めた。

「彼らが本当に何十年も訓練を積んだなら、なぜあれほど弱い?」

確かに矛盾していた。老師は青く光る目で私を見つめ、突然机を飛び越えて掌を私の胸に打ち込んだ。深い振動と共に、意識が暗転した。


■■■■■

「約束を守れよ、ホンジャ」

「■■■■■もお前を■■■できるさ。誰もが■■■ ■■■■■を持ってるんだから」

「あの扉を開けるな!」

「信じてくれ、ジュンソ!」

「ホンジャを信じたのが間違いだった」

■■■■■


目覚めると、老師が紅茶を差し出していた。エーテル回路を強制的に開かれたらしい。ステータス画面を確認すると、エーテル値が【99999999】と表示されているではないか。老師は平静を装っていたが、私の変化を見逃してはいなかった。


「お前は悪魔と契約した」

「『後悔に満ちた証人』のことですか」

老師の目が再び青く光った。

「流星をつかまえる者を、私は数人しか知らない。悪魔と契約した者のほとんどは正気を失う。だがお前は正常だ」

「あの『存在』が見えるんですか?」

「黒猫の姿をしている」

(…黒猫って本当なのか?)

【『後悔に満ちた証人』は肩をすくめる】


老師は重大な告白を始めた。

「塔は普通の建造物ではない。時空間を超えた迷宮だ。内部では時間が存在しない。お前が『戻り手』なら、私の助けは要らないだろう」

彼は空中に扉の幻影を描いた。

「『世界の断片の塔』には無数の扉があり、それぞれが異なる『糸』へ通じている。お前の悪魔はこの扉と繋がっている」

【『後悔に満ちた証人』が激しく震える】


「もしお前が皆を連れて生還できたら、この上ない感謝をしよう」

部屋の幻影が消え、私は深々と頭を下げた。

「全員を連れて帰ります」


老師が寮まで見送ってくれた。もう遅い時間で、皆は寝静まっていた。

「休むがいい。明日は体力がいるだろう」

寮に入りながら、ふと微笑んだ。あの老人は本当に私たちを子供のように思っているんだな、と。


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