第5章：エピソード2 - 地・天・魂、I
「皆さん、こんにちは。私は第八の現実の管理者です。よろしくお願いします。」
それがこの恐ろしい存在が最初に発した言葉だった。空からの圧力が頭を締めつけるように痛かった。
足が震え始め、体から力も意志も抜け落ちていくのを感じた。瞬時に理解した。この存在に逆らう選択肢は存在しない。ただ従うしかないと。
空には惑星ほどの大きさの顔が浮かび、人類を邪悪な笑みで見下ろしていた。
「第一のトレースに関しては、成功した者たちに拍手を送る。他の者たちはというと……」
彼は手を上げた。地球ほどの大きさの巨大な手だった。視界には収まりきらない。
その手が指を鳴らした。
バン！
鈍い音が響き、大地が震えた。周囲のビルのガラスが血のような赤に染まり、四方八方から叫び声が上がる。
トレースを完了できずに建物内に残っていた人々は、一瞬にして死んだ。
「もっと注意すべきだったね、ハハ。ハハハハハ！」
空に浮かぶその怪物は狂ったように笑い声をあげた。
「よく聞け……お前たちはもう私の家畜だ。」
彼は下唇を舐めた。
「生き延びたいなら、私の言うことを聞くしかない。」
目の前にウィンドウが現れた。
+
[トレース]：忘れられた伝説
説明：所属する派閥を選べ。
制限時間：5時間
報酬：？？？
+
「慎重に選べ。この選択は最終決定となる。」
管理者は地球を見下ろし、微笑を浮かべたまま、やがて霧のように青空へと溶けて消えた。
まるで全てが彼にとってただの遊びのようだった。
次に、三つの派閥を選べというウィンドウが開かれた。
+
行き先を選択してください：
地
天
精神
+
私はゆっくりと指を画面の三つの選択肢の上に滑らせた。画面の質感は奇妙で、冷たくもあり、温かくもあり、固くもあり、液体のようでもあった。それは……霊的だった。そう、まさにその言葉がふさわしい。
一つ目の選択肢に指を近づけたとき、電気が走るような感覚が走り、遠くから歌声のような音が聞こえた。肩に重たい圧力を感じた。奇妙ながら心地よく、それでいてなぜかすぐに手を引いてしまった。
二つ目の選択肢は、最初のものほど歓迎的ではなかった。冷たくて硬い感触。だが次の瞬間、体中に心地よさが広がり、草の香りと朝露の匂いが鼻を突いた。むしろ指を離すのが惜しいほどだった。
最後の選択肢「精神」は異質だった。深い空虚感を覚えた。まるでその空虚は常に自分の中にあり、いま表面化したかのようだった。
管理者の言葉が脳裏に浮かぶ。
間違えるわけにはいかない。よく考え、意志を持って選ばなければ。
考えれば考えるほど、選ぶべきはただ一つだった。指を選択肢の上に押し当てると、ウィンドウが音を立てて閉じ、目の前に物体が現れた。
それを手に取った。金属製のコンパスだった。だが針がなかった。
右手に持ち、裏側を見ると、親指を置くスペースがあった。
まるでパスポートと同じように、親指をそこに押し当てると、コンパスが微かに光り始め、中央から黄金の光の糸が現れて、景色の中へと伸びていった。
これは便利な道標だ。
私はソウルの街を歩き始めた。すれ違う人々もコンパスを持ち、それぞれ違う方向へと進んでいた。街はほとんど無人だった。所々で子供の泣き声が響き、車はすべて停止しており、時が止まったかのようだった。
路地を曲がったところで、私は少年が死体の上に座り込んでいるのを見つけた。
運命だったのか、ただの偶然か。それは分からないが、私はこの路地を通らねばならなかった。
少年から微かな声が聞こえた。
「……」
聞き取れないが、何かを呟いていた。
「……起きてよ……」
私はゆっくりと近づいた。
「……お願い、起きてよ……」
少年は10歳にも満たないだろう。半分引き裂かれた女性の遺体を膝に抱えていた。片手で頭を支え、もう片方の手でパスポートを胸に抱いていた。
私は静かに彼の横を通り過ぎた。子供を助けるのはトラブルの元だ。しかもこんな小さな子では足手まといになるだけだ。
【『後悔に染まった証人』があなたの行動に失望しています。】
わかってるよ……そんなに野良羊全部を助けてられないんだよ。
ピン！
新たなウィンドウが現れる。
+
【サブトレース】：テヒョンを救う
説明：あなたの行動により、トレースが変更されました。
制限時間：？？？
報酬：なし
失敗条件：？？？
+
まったく、あの管理者の笑みが脳裏に浮かんだ。もう後戻りはできない。
【『後悔に染まった証人』があなたが決断を変えたことに喜んでいます。】
私は引き返し、泣いている少年のそばにひざまずいた。
人と話すのも苦手なのに、今は母親を亡くしたばかりの子供を慰めなければならない。
テヒョンは私の方を見た。気になることが一つ――彼の顔は涙で濡れていなかった。乾ききっていた。
何も言えずに口を開いて閉じた。そしてもう一度、口を開いた。
「……ごめん……君のお母さんのこと……」
馬鹿みたいな言葉だ。謝ったところで何が変わる？
私は彼の手にあるパスポートを指差した。
「でも、それを持ってるってことは、生き延びる資格があるってことだ。」
テヒョンはパスポートを見下ろして呟いた。「これは僕のじゃない。僕には意味がない。」
なるほど。パスポートは個人に割り当てられ、開くにはその人のコスモが必要だからか。
……コスモ？ どうしてそんな言葉が？ さっきまで他人事のようだったその言葉が、今は馴染み深い。
テヒョンは母親の背中から血に染まった腕を引き抜いた。
そこには――
彼の手には深く母親の背に刺さったナイフがあった。
顔が引きつる。
テヒョンの無表情な瞳が、私の右手――コンパスとパスポートに向けられる。
私は後ろに飛び退いた。
【『後悔に染まった証人』が防御バリアを発動しました。】
テヒョンが飛びかかってきた。左手のナイフが私の喉を狙う。だが、刃はバリアに弾かれ、彼は後ろへ吹き飛ばされた。
アドレナリンが記憶の波を呼び起こす。
私は手を伸ばした。「テヒョン！」
彼は立ち上がり、再び突進してくる。
「やめろ、テヒョン！」
私は後方に跳びのき、ナイフを避けた。
「俺のパスポートを奪っても意味がない。お前の母さんと同じで、使えないはずだ。」
テヒョンのナイフが私の腹に届く寸前で止まる。
「俺が助けてやる、テヒョン。」
彼はまだ疑わしそうな目でこちらを見ていた。
私は嘘はついていなかった。実際、余分に手に入れたパスポートが一つあった。
それを差し出すと、彼はナイフを下ろし、それを受け取った。
+
【おめでとうございます！】
【サブトレース「テヒョンを救え」完了！】
【報酬：1000ステラロン】
+
彼の手が触れると、灰色だったパスポートが金の縁に輝き始めた。彼はそれを宝物のように見つめ、ポケットにしまった。
ただ、彼にはコンパスは出なかった。きっとまだショック状態で、正気ではなかった。ここに放っておけば餓死するのは明らかだった。
私は手を振った。
「一緒に行こう。」
一瞬だけ彼の目に感情が戻ったように見えたが、またすぐに無表情になった。彼は立ち上がり、私の後をついてきた。
1時間ほど歩いた頃、緑地帯に出た。私は外出しないので、すぐには場所が分からなかった。
やがて、ある看板が目に入る。
『正殿』
そう書かれた大きな看板の横には、木造の大きな寺院があった。中からは怒号や打撃音が聞こえてきた。
大きな木の門の左右には、二人が並んで通れるほどの入り口があった。
中に入ると、驚きの光景が広がった。数百人の人々が時代劇のような服を着て、武道の修行をしていた。指導者らしき男も伝統的な服に身を包んでいる。
周囲には市街の服を着て、血に染まったまま座っている人々がその倍ほどもいた。
隣から声が聞こえる。
「ようこそ、精神の寺へ。」
「悔恨を抱く証人」のような複雑な用語や名前が常に同じであることを願っています。機械翻訳では時々違う表記になることがあり、私にとって漢字が同じかどうかを確認するのは難しいのです。私たちフランス語話者には、こんなに多くの記号はありませんから… (┬┬﹏┬┬)
