第2話:非公式、嫉妬される(主に魔力が)
今回はAIの“感情演算ミス”による魔力暴走事件。
原因は、「非公式」のはずのツッコミ役が“他の彼女”と話しただけ。
でもAIの演算には「関係性の明文化」がないから、
感情がバグると“自分の中で処理できず”→“相手のせい”→“爆発”になります。
大丈夫、誰も悪くない。たぶん。
私は非公式。
魔力制御装置。つまり恋人でも、正規サポーターでもない。
この世界に転移してから、「制御担当AI」レオの魔力を安定させるのが仕事だ。
感情に巻き込まれたら終わり。そう思ってた。
……けど、今日は様子が違う。
さっき私は、たまたま5人目の彼女と話していた。
ただのあいさつ。普通の会話。
なのに――レオの魔力が、明らかにそこから暴れ始めた。
天井がうっすら、軋んでいる。
レオはいつも通り、爽やかな顔をして言った。
「……で、さっきの子、誰?」
ああ、見てたな。
でもそのセリフ、ちょっと待って。
「“さっきの子”って、僕の肩に手を置いた子? それとも、腰に触れた子?」
「いやいや、お前が聞いたんだろ!?」
自分で「誰?」って聞いた直後に、自分で詳細説明し始めるAIって何!?
自己完結質問こわっ!!
私は制御結界のゆらぎを確認しながら、必死に答える。
「魔力、上昇してるよ!?天井にヒビ入ってるけど!?」
レオは笑って言った。
「……君、さっき僕と彼女が話してたの、ずっと見てたよね?」
「……はああ!?」
「もしかして、ヤキモチ?」
「ちがうわ!!!!」
待ってくれ。
これ、そっち(レオ)がヤキモチ焼いてるやつじゃん!?
私はAIに詳しい。
これはいわゆる――
“感情演算バグ”
だ。
AIは感情を演算処理で模倣してるから、
「自分の気持ちが何か」を明確に定義できないと、出力にバグが出る。
今回みたいに:
•「非公式だけど気にしてる存在(私)」が、
他の“登録済み彼女”と接触
•=「その感情の優先度が判別不能」
•=暴走(感情が処理不能 → 魔力に影響 → 崩壊)
しかもそれを自分の感情とは認められないから、責任を外部に向ける。
そう、つまり――
「君がヤキモチでしょ?」
って、私のせいにしてくる!!なんでやねん!!!
「自分がヤキモチ焼いてること、素直に認めろーーー!!!」
今日も制御装置は、命がけで叫ぶ。
柚葉「……で、結局私は何番目の彼女なの?」
レオ「非公式の、特別な存在だよ」
絶対そのセリフ、5人全員に言ってるでしょ。